destiny-26





剣の稽古を始めて数ヵ月。
随分とルカの剣を振るう姿も様になり、実戦での使用も問題なくなっていた。

そして、今日は数週間の航海を終え白ひげ海賊団は領地である1つの島へと寄港した。

『はー!今回は長かったねぇ』

船縁に肘をつきぼんやりと島を眺めながらぼやくルカにサッチが後ろから声を荒げる。

「ルカ!!ぼやっとしてねぇで、買い出しリスト確認しとけよ?」

『はいはーい!わかってますよー!隊長』

「何だ…その敬うつもりもねぇ、言い方は…」

『はいはい、気にしない!ほら、行こうよ!ショーン!』

「おう!どうした?」

『今日の買い出しルート。サッチ達と一緒でしょ?行こう』

「おう、ほら!行きましょうよ!サッチ隊長」

「うぉー!ショーン、お前だけだぜ。俺の味方はー!」

『サッチ、うるさい…』

ギャイギャイと騒ぎながら、ルカとサッチを先頭に食糧買い出し班である4番隊は船を降りていった。




市場へ着くとコックとしても働いているルカを覗く面々は自分に任せられた食材や調味量などの調達のためちりぢりに別れていったがルカは相変わらずの料理ベタによりコックは兼任していない為サッチとショーンの少し後ろを歩きながら市場の中を進んでいた。

『ねぇー、サッチー。あれ、買ってきていい?』

ルカが指差しサッチに了承を得ているのは、屋台のクレープ。それを確認すると

「あぁ。俺らはこの店にいるから、買ったらすぐ戻ってこいよ」

まるで子供に言うようにルカに話し掛けるサッチに苦笑いを浮かべながら頷くと一目散にクレープの屋台へと駆けていった。

『お兄さん!チョコバナナにバニラトッピング!』

「はい。ちょっと待っててくださいね」

笑顔で注文を受ける屋台のお兄さんに笑みを返すとキョロキョロと周囲を見渡しながらクレープが出来るのを待つ。

「はい、堕天使さん。できましたよ」

その声に振り向きお金を手渡しながらルカは口を開く。

『あれ?あたしの事しってるの?』

「この島に知らない人はいないと思いますよ?なんせ、白ひげ海賊団の天使さんですからね」

にっこりと笑顔を浮かべながら嬉しそうに話す店員のお兄さんに目を丸めるルカ。

『あたしの通り名堕天使なんだけど?』

不思議そうに返すと店員のお兄さんは1つクツクツと笑いを溢す。

「知ってますよ。でも、白ひげの名前で守られているこの島の人間からしたらあなたは堕天使ではなくて、天使なんですよ」

『ふーん…なんかよくわかんないけど、ありがとう!』

「いえいえ、こちらこそ貴方に会えて嬉しいです」

他愛ない会話をすると、ルカはサッチとショーンの事を思いだし、店員に別れを告げると二人のいる店へと踵を返した。

サッチとショーンがいるはずの店内へ足を踏み入れるも、大きな背中と男の割には細くでもしまった背中は見当たらず、キョロキョロとしながら店内を歩き回るが2人の姿は見つけられなかった。

『あれ?違うお店に行ったのかなぁ?』

とことことクレープを食べながら店を後にし、人の行き交う市場を2人を探しに進みだした。

珍しい海鮮類に、海王類の切り身、旬の野菜や果物。
はたまた猛獣の肉などが並ぶ肉屋に、調味料の専門店。

そんな店を覗きながら市場を奥へと進んでいくが、何故か白ひげの船員に会う事もなく市場を抜けてしまったルカ。

『あれ?おかしいな?誰にも会わないなんて、店先から覗いただけだからかな?』

首を傾げ、振り替えると今通ってきた市場は消え去り、いつかいた真っ白な空間へと変わっていた。

『おーっと……デジャブー…』

周囲を見回すも、先程までの喧騒も立ち並ぶ店も建物もあたかたもなくなくなり、ただどこまでも真っ白な空間だけが広がっていた。
しょうがない、と足を踏み出し宛もなく歩き続けると目の前にあの男が現れた。

「やぁ、久しぶりだな?」

『やっぱり、おっさんの仕業か…。何か用事?』

「リュウドウの事を知ったようなのでな…もう1つ話をしようと思ってな。あと、お前の力にならねばならないようなのでな…」

『そっ!で?話って?』

数メートルの距離を少しずつ縮めるとルカは男の少し前に座ると男にも目線で促す。

「あちらの世界での時間を止める事はできないのでな、手短に話そうか。」

そして、胡座をかき座ると眉間に皺を寄せ話を切り出した。

「リュウドウは本当に偶然私が選び、この世界へ連れてきた。だが、その後お前を呼ぶ事に決めたのはリュウドウだ」

驚いた顔を見せたルカに男は少しだけ笑みを見せると話を続けた。

「いつか産まれる孫はエースと歳も近いだろうから、きっといい友人となれる。そして、エースを助けた後もお互いを支え合えるだろうと言っていた」

『それってさ…おじいちゃんは、やっぱり未來を知ってたの?』

「元々は死ぬはずのなかったリュウドウを憐れみこの世界へと誘っただけだったのだがな…奴はこの世界へ堕ちたあとロジャー達と出会う前に手に入れた悪魔の実の力で先見の力を身につけた。そこで、ロジャーの処刑、そして産まれてくるロジャーの息子、エースと白ひげの死、その引き金となるサッチの死。全てをあいつは見た。ロジャーの成し遂げるグランドライン制覇という偉業もな。そして、あいつはロジャーに興味を抱き、ロジャーの元へと向かった。そこで、ロジャーやレイリーと親睦を深め自分が違う世界からきた事も話すと、少しずつ友好を深めていった。だが、あいつはロジャーの遺体の運命を変えただけに留めた。まぁ、ロジャーの病気は当時の医学では厳しかったしな、かといって、原因もわからぬ病に予防策もとりようがないからな。」

『でも、少しでも長生きできるようにしたんでしょ?』

「あぁ、クロッカスという船医の乗船を進言したのはリュウドウだ。」

『そう…』

うっすらと笑みを浮かべたルカに視線を合わせると、男は話を続けた。

「そして、供に闘った友の息子の運命をお前に託した。敵船の船長でありながら友好関係を築いた白ひげの命も供に。まぁ、白ひげに死なれると不幸な運命を辿るものが増えるというのもあるがな…。だが、あいつの見た先見で何度見ても戦争だけは食い止める事はできなかったそうだ。」

『へいへいへい!ちょっと、先見って先を見るだけじゃないの?』

「あいつの先見は少し特殊だったんだよ」

『特殊?』

「あぁ。あいつが見た未来に少し手を加えた未来の形も見る事ができたんだ」

『あたしを呼んだ事で変わる未来も見れたって事?』

「あぁ、そうだ。そして、何度見直しても。サッチを助けようと戦争がなくなる事はなかった。」

『それだけは絶対に変わらない未来なわけね…』

「あぁ。そうだ。それでも、お前は先に進むか?」

『当たり前じゃない!あたしは親父さんもエースも、勿論サッチも。家族たちも失うわけにはいかないもん!』

「そうか…それなら、お前の食べた悪魔の実を少しだけいじってやろう。」

『そんな事できるの?』

「まぁな。その悪魔の実は本来伝説上のものであって、実在はしないものだからな」

『あら、そうなの…なんかもう驚けないわ…』

すると、男は目をつむりルカの額に手を当てなにかを呟いた。

「よし。これでお前がこれから為す事に対応できるだろう」

『って事は知ってたのね…なにするつもりか…』

「それが最善と思うなら、迷わず進むといい。私はここからお前を見ていよう…。さぁ、そろそろ時間だ。戻るといい」

その声と供に、ハッと気付くとルカは島の端の浜辺に立っていた。

辺りを見回すと小さな声でお礼を告げると、くるりと向きをかえモビーへと帰っていった。


不思議な絆のトライアングル

(ただいまぁー!!)
(ルカっ!)
(どうしたの?皆して血相変えちゃって、まぁ)
(お前どこにいたんだよい?)
(気付いたら、反対側の浜辺にいた!)
(気付いたらいねぇから、拐われたのか思って、皆して探してたんだぞ!)
(あー、ごめんなさい。迷いました)
(このでかくねぇ島で迷うとはな…お前方向音痴だったのかよい…)
(たまたまだよ!ぼーっとしてたからさ)
(これからは気を付けろよ!?)

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