travel-25




ルカが白ひげに入って随分船は騒がしくなった。

当初警戒をしていた船員達も、ルカの親父バカぶりに警戒を解き、時たま甲板で親父談義を繰り広げている。

まぁ、書類を済ませ一息いれようと甲板にきた俺の目の前でまさに今それが開かれている。

「そこで親父は言ったんだよ!!俺の息子に手を掛けようもんなら、その命で償ってもらおうか!!ってなぁ!!」

「『親父さん、いかすーー!!』」

うん…なんだろう…
取り合えず、平和だ。

この船に乗ったばかりの時はあんなに無邪気な笑顔を見せるあいつは想像できなかった。

まるで、世界においてけぼりにされたみてーに冷めた目をして。

それでも、信念を秘めた瞳で俺を…俺たちを見てた。

今じゃバカ面さらけだして笑ってる。

あいつの寂しそうな目なんてもう見たくねぇ。
そんなあいつの目を顔を見て感じた気持ちは、恋でもなくて、それでもそれは恋によく似た愛情。

あいつを守ってやりたい。

あいつの笑顔を見ていたい。

恋によく似た愛。

こいつに芽生えた思いはそれだった。

人目をひく容姿に、程よく鍛えられたしなやかな体。

普段の俺なら間違いなく口説くタイプの女で間違いない。
でも、あいつの口から出る言葉は寂しさを隠した強気な言葉ばかり。

信頼をおける仲間がほしい。
愛しあえ、思いあえる仲間がほしい。

それを叶えられるのは親父を筆頭に俺らであるのは間違いなかった。

仲間を家族と呼ぶ。
船員を息子と呼ぶ親父の乗るこの船。

案の定、わだかまりの解れ始めた頃からあいつは本当によく笑う。

ハルタやショーンと連れ立ってイタズラしたり。

宴の時には、我先に大騒ぎ。

笑う様になってからのあいつは、その場にいるやつ皆を惹き付けた。


妹…いいじゃねぇの?
戦闘もこなし、ちょっとおてんばな妹。

つい少し前まではいなかった。
でも、今となってはいなくてはならない大事な家族だ。

海軍が何を企んであいつを捕まえようとしてるかわかんねぇが。

俺を筆頭にこの船にいる兄貴達は誰一人としてあいつを手放すつもりもない。

やりあいてーならどっからでもかかってこいってんだよ。

そう海へ目を向けると。
先日から半月おきに現れる5隻の海軍の監視船。

やはり今日も、砲弾の射程外でぷかぷか浮いてやがる。

と、後ろから声をかけられた。

「サッチ。相変わらずの様だな、やつらは。」

「全く、監視船を増やしたところで何をするわけでもないなんてねぇ。機会でも狙ってるのかね」

「ナミュールが今数人連れて、監視船の下から探ってるよい。報告を待てばいいよい」

「まぁ、いつも通りに過ごしちゃいるが、全員いつでも戦闘態勢に入れる。ドンと構えてようぜ!!」

「ところであいつらはなにしてんだよい?」

「あぁ、最近よく集まって何やら話しているな」

「ありゃぁ…随分な盛り上がりだねぇ」

「親父談義してんだよ…いいおっさんとわけぇ娘が…見てて笑えるよな!!」

「だから、さっきからいかすだのさすが親父だのと…まぁ、その通りだがない」

「お前混ざってくれば?」

「俺はこれからまた書類整理だよい」

「マルコ、少し休憩したらどうだ?旨い茶を入れて…」


ドォーーーーーン

砲弾の着水と共に水柱が上がり…水しぶきが甲板へ雨のように降り注ぐ。

「動き出したか!?」

そのとき海から数人の影が甲板へ飛び上がってきた。

「マルコっ!!」

「ナミュール!!何があった!?」

「どうやら、黄猿の到着を待っていたらしい!!黄猿の軍艦が到着してすぐ砲弾の準備がされた。報告に動き出したと同時に砲弾が撃たれた」

「随分騒がしいじゃねぇか?」

甲板へ現れた親父の元へ隊長を始めとした船員が集まる。

「やり合おうってんなら迎え撃ってやれ」

その声の後にあがる咆哮。
武器を取り海軍船へ目を向けるとその船首には大将黄猿の姿があった。


「やぁ〜、白ひげ海賊団〜。今日は1つ取引をしようと思ってねぇ」

「取引だと?」

「白ひげぇ〜、船員や傘下の海賊を息子と呼ぶならこれは応じる以外ないと思うよ〜。先日捉えたモーリス海賊団。白ひげの傘下だよねぇ〜?」

「あいつら、通信がとれないと思ったら捕まってやがったのかよい!!」

「そのモーリス海賊団と堕天使一人。交換しようじゃねぇ〜の?悪い話じゃないだろ〜?堕天使を差し出せば、堕天使の賞金も払おう。金も入るし、息子達も戻る」

「ほぉ。海軍も多少考えたか。だが、息子達の姿が見えねぇな?」

「船の牢にいるよ〜。堕天使を差し出したら引き換えにそっちに渡そう。」

それまで黙って話を聞いていたルカが口を開いた。

『親父さんっ!!あたしはいいから、モーリス達を助けようっ!!』

「あぁ、わかってらぁ」

「なっ!?親父っ!!」

『良かった…。ジョズさん皆が乗り込めるサイズの船降ろして。いくから。』

「ルカ!!待てよいっ!!」

『大丈夫

そう笑顔を浮かべたルカは船を引きながら、海軍へ近づいていった。

「親父っ!!ルカを見捨てるのかよい!?」

「んなわけねぇだろ。あいつを海軍に渡さねぇ。モーリス達が戻り次第、今度はルカの奪還だ…」

「よい」

海軍船へ近付くあいつを見つめながら俺らは今か今かと戦闘開始の合図をまつ。

遠目に見える海軍船では、モーリス海賊団のやつらがルカの引いた船へ乗り込む。

ルカは海兵に海楼石の手錠をはめられている。

それを全員歯を食い縛りながら見守る。

そしてモーリス達がモビーに近付き上がると、武器を渡した。

その間に砲弾部隊が集中砲火を開始。

戦闘の火蓋が切って落とされた。


交渉決裂、予想の範疇


(白ひげより集中砲火!!)
(まぁ、そう簡単にいかないよね〜)
(君、意外と愛されてるね〜)
(自慢の家族ですんで)
(へ〜まぁ、見納めになるだろうけどね〜)


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