前夜
『こんな真夜中に叩き起したんだもん。それなりの理由よね?マルコ』
怒りを如実に現したルカが据わった目をしてマルコと隊長達を見回して睨みつける。
「そうカッカッすんじゃねぇ。大事な用があるから起こしたんだ」
そんなルカを宥める様に言ったのは白ひげだ。
『まぁ。オヤジさんがそう言うなら?』
ツンとそっぽを向いたルカに隊長達は思った。
「(こいつのオヤジ好きは留まる事を知らねぇっ!!)」
と、そこでルカがある事に気付いた。
『ん?てゆーか、隊長でもないあたしを叩き起した癖にサッチがいないじゃん。あたしが絞め殺して来てあげるよ』
そう言って扉に向かって歩き出したルカをエースが止める。
「待て、待て、待てぇーい!!」
『何?エース。一隊員であるあたしは理不尽にもそこの不死鳥さまにド突かれたのに、可哀想なあたしの上司さまは幸せに寝てるなんて許さないってのよ!』
まぁまぁ、と止めるビスタとジョズの顔には苦笑いが浮かぶ。
「そのサッチの事で呼んだんだよ」
『何?とうとう隊長解任とか?』
相当機嫌が悪いのか、かなりの極悪面をして鼻で笑ったルカにこいつ!?っと隊長達は顔を青くさせた。
「グララララ、ちげぇよ。明日が何の日か知ってるか?」
『明日?……3月24日…………あ』
「わかったか?明日はサッチの誕生日なんだよい」
白ひげの問い掛けに閃いた顔を見せたルカにマルコがニヤリと笑って見せた。
『わかったけど、何で又それであたしが呼ばれたのよ?』
「あいつは仮にも隊長でこのモビーの料理長だからなぁ?あいつがいたら宴の準備もできねぇ」
『………今まではどうしてたの?』
「自分の誕生日の宴の準備を自分でしてた!」
ラクヨウの言葉にルカは、そういえば去年はそうしていたなと遠くを眺める。
考えてみれば、確かにそれではいくら料理が大好きなサッチでも気の毒だと感じるルカ。
そんなルカを見てイゾウが言った。
「そこでだ、宴の準備やらは俺たちに任せてお前さんにはあいつを連れまわしてきてほしいんだよ」
『それは構わないけど・・連れまわすも船の中を?』
そう聞いたルカににやりと笑ったマルコが言った。
「そこは問題ないよい。明日船が島につくよい」
『あれ?到着予定はもう少し先じゃなかった?』
「ちょっとな、これを船底に取り付けたんだ」
そう言ってナミュールが取り出したのは、ジェットダイアル。
『はっはぁ〜ん。それで早く海を進んでたってわけね?わかったよ、明日はサッチと島でデートでもしてくるよ。誕生日ってのは言って平気?』
「あぁ、いいよい」
『なら、誘うのも簡単だね!じゃぁ、あたしは明日に備えて寝るけど・・・話はお終いでいい?』
ルカが大きな欠伸をしながら言うとそこに入ってきたのはエリザ達。
「ルカ、あなたは明日の為にあたし達と服選びとメイクとヘアの最終チェックよ」
『・・・・・・・・・・はっ!!?まぢで言ってんの??相手はあのサッチだよ!?』
心底面倒くさそうに言ったルカに鉄拳を落としたエリザ。
痛みに悶えながら、ルカは涙目でエリザ達ナースを見上げる。
「バカ言うんじゃないわ!!ルカ、あのサッチ隊長だからこそ気を入れないといけないのよ!!」
力説する彼女たちは何やら楽しげに笑っている。
そして嫌がるルカを引きずりながら、部屋を後にしたのだった。
「ありゃ、あいつらもルカを弄繰り回せるもんだから楽しんでやがるな」
そんなルカを気の毒に見送ると、ラルフを呼び出し明日の宴の会議を始めたのだった。
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