Savior- 60
賑わう甲板、笑いの溢れるその場所は温かくて優しい。
海賊団の垣根を越えて、今ここは沢山の想いに包まれている。
『あ、あたし、ハンコックと皆にお礼して来るっ!!』
そう言ってショーンとラルフや他の船員と呑んでいたルカが立ちあがる。
「俺も行くぞっ!!」
「俺もー!」
それに続いて立ち上がったのはエースとルフィ。そして、
「しょうがねぇ、兄貴として俺も着いて行っぶぼぉっ」
『黙れ、変態くそ親父』
鼻の下の伸ばしに伸ばして立ち上がったラクヨウの顔面に、ルカは容赦なく拳をめりこませた。
「ラクヨウ、無念・・・」
甲板に沈んだラクヨウを見てサッチが手を合わせる。
「おい、挨拶行くなら俺も行くよい」
『マルコっ!』
「お前の事も含めて随分と世話になったからねい」
『うん、じゃぁ行こうか』
ルカがマルコに笑いかけて足を踏み出せば、エースとルフィがその背を追って走り出す。
「なんか、マルコが父ちゃんにしか見えないんだけど・・」
「それ言えてるね」
「まぁ、あの面子じゃぁねぇ・・」
そう言ったのは、サッチとハルタ、そしてイゾウだ。
その周囲では船員がうんうんと頷き、隊長達が苦笑いを溢して4人を見送ったのだった。
彼らの後ろでそれを見ていた白ひげの顔は優しげな父の顔だった。
「ハンコックゥゥゥゥウウウ!!」
ルフィが大きく手を振りながら駆け出す。
それを呆れた顔で見送るのはエースとルカ。
「ルフィ!!またわらわをハンコックと・・・っ!!」
そう悶えるハンコックの前に足を進めたルカがハンコックに声を掛けた。
『ハンコックさん。ご挨拶が遅れてしまってごめんなさい。初めまして、あたしが白ひげ海賊団。異界の堕天使、アマクサルカです。この度は手を貸して頂いた上にあたしの静養の為にアマゾン・リリーに招いてくれた事、本当に感謝しています。ありがとうございました』
ハンコックを真剣な眼差しで見据えて言ったルカの姿を見たマルコとエースが目を見張る。
「「(こいつ、こんな礼儀正しくできたのか!!?)」」
そんな失礼な事を思っている2人に気付いたのか、ルカが一瞬鋭い視線を2人に向ける。
「苦しゅうない。わらわはそなたがルフィの愛する兄上の姉であると聞いたのでな。それにそなたはルフィの大事な仲間・・なのだろう?愛する人の仲間であるなら、わらわはその手助けとなれる事をしたまで・・・。今回国を解放したのも、そのそなたの大事な家族とそなたを離れ離れにさせる事が憚られただけじゃ」
『ハンコックさん・・・』
ハンコックの言葉にルカは目を見開く。
『(ちょっと変わった人なんだなって、元の世界じゃ思ってたけど。それでもやっぱり・・国を預かる人・・なんだな・・・)』
「俺からも、もう1度礼を言わせてくれよい」
後ろから聞こえた声にルカが振り返ればマルコが真面目な顔をしてハンコックを見ていた。
「そんなに礼ばかり聞きとうない。それにさっき白ひげからも直々に礼を言われたばかりじゃ。わらわはルフィの為にしただけじゃ。ルフィの悲しんだ顔は見たくないのでな」
だから礼はいらぬ。そう言ったハンコックを見てマルコは苦笑いを浮かべて頷いた。
「ルカ!!こへ、うへぇんだお!!ふえよ!!」
その声に視線を向けた先ではアマゾン・リリーの料理を口一杯に詰め込んだルフィが笑顔で皿を差し出している。
『あんた・・・・』
そんなルフィの姿を見てルカは溜息をつく。
『(あんなにあからさまにルフィにアタックしてるのに・・気にも留めないって・・・まぢこの子最強すぎる)』
これからの事に思いを馳せながら、ルカはまぁ、ルフィらしいかと苦笑いを浮かべると。
その料理よこしなさいよ!!と言いながらルフィに歩み寄る。
そして、九蛇の船員やアマゾン・リリーの戦士たちとすぐに打ち解けたルカはきゃいきゃいと話し出し、その近くで腰を降ろしたマルコとエースにも戦士達が詰め寄る。
「ねぇ?あの服着てみた?」
『やっぱりか・・・悪いんだけど、まだ着てないの・・ごめん・・・』
着るつもりなど毛頭ないくせにさも残念そうに言ったルカにマルコが噴出すと、マルコに向かってルカが酒瓶を投げる。
そう賑やかに過ごしていると、喧騒に紛れて森の方から足音が聞こえてきた。
それに気付いたルカとマルコ、そしてハンコックが険しい眼差しを向けた。
足音が近づくにつれそれに気付いた者達の視線が集まっていく中で現れた人影が言った。
「やはりここだったか。女の勘とは恐ろしいものだな。なぁ、ルフィくん、ルカ」
嵐の予感
(め、冥王・・・)
(レイリーのおっさん!!)
(レイリーさん!!)
(レイリーではないか!!)
(やぁ、久しぶりだね??と言ってもルフィくんとルカとは数日振りだが)
▼
main