第七訓



「で?お前ら屯所に何しに来たんだよ?」


土方が訝しげに尋ねる。


「何だ!トシ!!俺の話聞いてなかったのか?」

「は?」

「僕達、近藤さんが屯所見学に来ないか?って言われて来たんですよ」

「・・・見学?」

『はい。そしたら、マルコが・・・』


チラっとルカは隣に座るマルコを見やるとそれに気付いたマルコが口を開いた。


「いや、この・・・真選組ってぇ組織は俺らの世界でいう海軍と同じような組織だってルカから聞いてよい。それなら、この組織の事を知れば多少は海軍への対抗策なんかも調べられるかと思ってな」


真面目な顔で告げられた内容に土方は呆然とする。


「おいおい、それってあんまよくねぇんじゃねぇのかよ?」


土方が汗を一筋垂らし言葉を紡いだが、当のマルコ達は首を傾げた。


「何でだ?」


エースが心底不思議そうに聞いた。


「だってそうだろうがよ!!?何、この子!?頭大丈夫!?」


土方が狼狽えながら聞く。


「駄目なのかよい?」


「だって、お前ら。この世界じゃ一般人だけど自分達の世界じゃあれだろ!?お尋ね者だよねっ!?そんな奴らに組織の何たるか教えちゃ俺が海軍に狙われちまうだろうがっ!」

「いや。それは大丈夫じゃぁねぇか?」

「うん、世界ちげぇんだから問題ないだろ?」


うんうん、と頷きながらサッチとエースが土方を宥める様に言った。


「こんなクソ集団の内部事情知られた位でどうにかなるわけでもないアル。出し惜しみしてんじゃねぇヨ。ニコチン野郎」

「ほんとだよなぁ?マヨラーの癖にケチくせぇ野郎だな」

「そうですぜぃ、土方さん、ケチな男は嫌われますぜぇ?」


神楽、銀時、沖田がじとりとした視線を向けて土方に言うと、当たり前に土方が声を荒げる。


「てめぇ、総悟!!てめぇまでそっち側で俺をケチ呼ばわりしてんじゃねぇぞ!!?んだよ、俺がわりぃみてぇじゃねぇかっ!!」

「みたいとかじゃなくて、完璧に土方のせいでさぁ」

「てめ!今俺の事呼び捨てにしただろっ!!」


ギャアギャアと喧嘩を始めてしまった土方と沖田を見てルカが笑っていると、少し残念そうにマルコが呟いた。


「悪かったよい。少しでも何か知識として持って帰れるかと思ったんだが・・・こんな得体の知れねぇ野郎になんか見せられないよない・・・。悪かったよい・・・」


シュンとしてしまったマルコを見て、土方は少し良心が痛む。
そして、少し考えてから口を開いた。


「わぁーったよ。どうなるかわかんねぇが・・・色々見て、調べて行けよ。どうせ世界がちげぇんだ。構わねぇよ・・・」


頭をガシガシと頭を掻きながら土方が言って顔をマルコに向けた。
刹那、彼は見てしまった。


「悪いな、ありがとうよい」


爽やかに笑ったかれの笑顔が一瞬にやりと悪い笑みを見せた瞬間を。


『(マルコ、あんた悪どいわ・・・)』

「(なんだよい。頭のかてぇうえに、こういうお堅い仕事してる奴ぁちょーっと良心を揺さぶりゃ一発なんだよい。覚えとけ)」


そう小声で言ったマルコにルカは心底ドン引きしたのだった。


「それはそうと・・・」


土方が気を取り直してエースに視線を向けると、はぁとため息を溢した。


「何だ??」


出された茶菓子を貪りながらエースが聞いた。


「今日やけに公然猥褻だのと通報が入ってたんだが・・・どうやらお前のことみてぇだな」

「何だ?公然猥褻って」

『あっ・・・忘れてた。あんた上半身素っ裸だから・・・』

「何だ?これ駄目なのか??」

「駄目に決まってんだろうが!!おい!万事屋!!なんでこいつに服着させなかった!!?」

「はぁ?だってよ、会ってそのまんま観光始めちまったからよ。貸せる服なんざあるわけねぇだろうが」

「だったら、てめぇの着流しでも貸してやらぁもう少しましだったんじゃねぇのかぁ!?」


喧嘩を始めた2人を一蹴してから、ルカは近藤に話しかけた。


『ねぇ、近藤さん。』

「なんだい?」

『エースになんか服貸して貰えません??ワイシャツとかでいいんで』

「あぁ!!そうだな!俺のならサイズも合うだろう!!エースくん、おいで」


近藤がエースを呼んで2人が部屋を後にするのを見送るとルカはキョロキョロと視線を彷徨わせる。


「どうかしたんですかぃ?」

『あ、ねぇ。総悟くん、ザキはいないの??』

「へぇ、ザキの事も知ってんですかぃ」

『まぁね、で?いないの??』


首を傾げて聞いてきたルカを見て沖田は立ち上がった。
呼んで来てくれるのだと察したルカが一緒に行こうと立ち上がろうとした瞬間。

沖田は腰に提げていた刀を抜き放ち、天井へと突き刺した。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」


そして大きな物音をたてて、天井から人が落ちてきた。


「た、隊長!!?何するんですかっ!?」

「呼んでやったんだろうが、礼を言って欲しい位でさぁ」

「いや、それなら普通に呼んでくださいよ!!」


突如現れた山崎にマルコとサッチは目を丸くする。


『ありゃ、いくら平和とは言え気抜きすぎてたね?あたし達』


頬を掻きながらルカが言う。


「いいんじゃねぇですか?たまには気ぃ抜かねぇと参っちまいまさぁ」

『それもそっか!」

「そうでさぁ、ってわけでマヨ方さん。俺はルカ達を案内しなきゃならねぇんで、今日は非番にしてくだせぇ」


銀時と言い合っていた土方が沖田の言葉に只でさえ開いている瞳孔を更に開かせた。


「馬鹿か!!てめぇはいっつも気抜かせすぎなんだよ!!ふざけんじゃねぇ!!」


今度は沖田と喧嘩を始めた土方を見てルカは笑う。


『ほんといつもこんなんなんだね!!モビーみたぁい』


ケラケラと笑い出すルカにそれまで空気とかしていた、神楽と新八が話しかけた。


「ルカさん達の船もいつも賑やかそうですよね」

「いつも何してるアルカ?」

『そうだなぁ、大体その日その日で振り分けられた隊務があってね。それを終えたら隊訓練とか、隊訓練のない日はそれぞれ好きに過ごしたりかな?なんせ本船と子モビーを合わせたら1600人もいるから、日々大騒ぎだからねぇ。ここのが静かなんじゃないかって位には煩いかもねぇ』

「へぇ〜、隊務って何をするアル?」

『掃除とか洗濯とか、家事全般かな?でも、あたしとサッチのいる4番隊はコックで構成されてるから、1600人分の毎日の食事作りが殆どだよ?』

「1600・・・大変ですね・・・。じゃぁ、サッチさんは当たり前にルカさんも料理得意なんですね」


新八が告げた言葉にマルコとサッチが固まった。


「あれ?どうしたんですか?」


新八が不思議そうに2人に聞くとルカが口を開いた。


『あたし料理とかてんで駄目なんだよ。だから、あたしキッチンには入らないの。代わりに他の隊に混ざって雑用したり、マルコの手伝いしたりかな』

「「え・・・・・」」


ルカの言葉に新八と神楽が固まる。
苦手なんですか??と新八が聞くと苦笑いをしながらルカが答えた。


『うん、あたし。カレーを失敗してからもう2度と料理はしないって誓った』


遠くを見つめたルカにこれ以上は触れまいと新八が話を変えた。


「まぁ、それはさておき。屯所案内してもらいましょうよ!!ねっ!!」

『ちょっと、必死さがあたしのガラスのハートにナイフみたいに突き刺さるんだけど?』


気のせいですよ!!と新八に言われたルカは渋々納得すると未だ喧嘩をしている銀時と土方を放置して、沖田と山崎に声をかけると、マルコ達も引き連れて部屋を後にしたのだった。





人には向き不向きってもんがある

(ルカさんの料理ってそんなにひどいんですか??)
(あぁ、お妙ちゃんとためをはるんじゃねぇかな・・・)
(まぁ、作らないだけお前の姉ちゃんよかマシだよい)
(そうですね)
(まぁ、船にいる分には俺らがいるからな。作る必要ねぇし)
(それをそっくりそのまま姉御にいってヨ)
(わりぃな、神楽。それは断るぜ)
(何よ、海賊の癖にへたれアル!!)

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