仲良く買い物に出てみた
春うらら。
優しいそよ風の吹くここは春島ーブロサム島ー
『桜っ!!桜が満開だぜ!エース君やっ!』
「いや、お前キャラおかしいから…」
エースの声をまるっと無視したルカは着岸作業を進める家族をまたもや見てみぬふりをして興奮のままに入り江に咲き乱れる桜へと飛んでいった。
「あ!?あんの野郎!!こらぁー!!ルカっ!ずりぃぞぉ!!」
エースが船から両手をあげて声をあげるのを桜の枝へと腰かけたルカが見る。
『おぉー…随分とかわいー怒り方…ありゃ、正に激おこぷんぷ…って!?』
その時、何かにルカは枝から落とされた。
「…おめぇは、仕事さぼって何やってんだよい…」
辛うじて地面への落下を避けたルカは桜を見上げれば、今まで自分が腰かけていた場所にマルコが立っている。
『おいっこら!!マルコ君。今のであたしのプリチーフェイスがごっちゃごちゃになったらどうしてくれんだ!!』
「はんっ。もう十分ぐちゃぐちゃのでろんでろんだよい…」
『はっ!!鼻で笑った上に更にひどくされただとっ!!?』
今度はルカがムキーと両手をあげてマルコへと抗議を始めたのを、船上から家族が見て笑う。
「ルカー!でろんでろん治してやるから梯子かけんの手伝えぇー!!」
ぎゃははははと笑いながら掛けられた声に不機嫌そうに返事をしてルカは停泊準備を手伝うために船へと戻った。
そして、停泊も終えて街へと出ようとした時。
「ルカっ!一緒に行こうぜっ!!」
走り寄ったエースに笑顔を向ける。
『うん!行こっか!!今回はちょっと服買い足したいから、エースは荷物持ちけってー!』
「げぇ〜!!つぅか、服買うならナースと行かなくていいのか?」
『ん?ミシェル達は今回街降りないんだってぇー』
「そうなのか?珍しいな?」
『医療研修だって!だから、付き合ってね』
その言葉にエースはたまにはいいかと笑いながら頷いた。
二人が並んで船を降りて行こうとすると呼び止められた。
「おーい!ルカ!?」
声に振り向けば、追いかけてくるサッチに足を止める。
『……?どしたの?』
追いかけてきたサッチにルカは不思議そうに首を傾げる。
「どうしたって!!お前次の上陸は一緒に街行こうって言ってたの忘れたのかよ!!」
『………………………あ』
「………忘れてたのか…」
ジトっとルカをみるサッチに、あははと笑うルカ。
『まぁまぁ、今思い出したからいーじゃん!!行こう!』
取り繕うルカにサッチは苦笑いを溢しながらエースと顔を見合わして前を歩きだしたルカの後を追った。
そして、桜の森を抜ければ大きな街へと出た。
「どこ行くんだ?」
『ん〜…まずは…あそこっ!!』
ルカの指差した先は、靴屋。
「靴、買うのか?」
『うん、底が随分摩り減ったから。新しいの欲しい…』
三人で店内へと入ると…そこにいたのは、3つのグラディエーターを前に真剣な顔をしているマルコだった。
『………あれ?マルコ。何してんの』
気付かないマルコを並んで見てるのも…とルカが声をかけるとマルコが振り返る。
「お前らも買い物かい?」
『うん。あたしのブーツ、駄目になってきたから…新調しようかと思って。マルコも?』
「……一緒に買ってやるからよい。ルカ、選んでくれねぇかい?」
『まじ?やったねぇ!』
ニッと笑いながらルカはマルコの隣に小走りで駆け寄るとマルコの悩んでいたグラディエーターへと目を向けてあーでもない、こーでもないとマルコと話し出す。
『あ、サッチとエースはさ!あたしのこのブーツに似たようなの!適当に選んで来てくれるー?』
「別に構わねぇけど、文句言うなよな?」
『たかがブーツに文句なんか言わないよ…お願いね!エース!サッチが変なの選ばない様に見ててよ!』
ビシっとサッチを指差したルカに返事をして二人はその場を後にした。
「どれも動きやすそうなんだけどよい…」
『色と形で悩んでたわけか…』
目の前には、キャメルブラウン、焦げ茶、クリーム色のグラディエーター。
それぞれが多少丈が違い、ベルトの形も違う。
『んー…今のがキャメルブラウンか…』
顎に手を添えてマルコの足元と並ぶグラディエーターを見比べてから…ルカが手に取ったのは
『はい、これ!!』
焦げ茶のグラディエーター。
ベルトも今の形に近く動きやすさは今と変わらなそうである。
『これならマルコの美脚をより引き立たせると思うよ』
それを聞いたマルコは内心、海賊でおっさんが足を引き立たせてもと思いつつ、礼を伝えたところでサッチとエースも戻ってきた。
「あいよー!!」
『ちょっと、あんたら何よ。これ』
渡されたブーツに唖然とするルカ……とマルコ。
「ん?かっけぇーだろ!!」
笑顔で誇らしげなエースと
「ぶっ、くくく…。女王様にはぴったりじゃねぇか!!ぎゃはははは」
悪気たっぷりなサッチにため息をつくと、ルカはサッチの頭に思いきり拳を振り落とす。
『こんな、ピンヒールのブーツで闘えるかっての…全く』
ぷりぷりと怒りながら、レディースのブーツが並ぶ一角へと歩いていくルカの後を追う三人。
そして、ルカはヒールが太めであまり高くないウエスタンブーツをマルコに買って貰いうきうきと店を出る。
『まだあたしら買い物するけど…マルコは?』
「じゃぁ、たまには俺も行くかねい」
マルコの言葉ににこにこと笑い返すと四人で街を進む。
次に入った店は、レディースとメンズ両方を取り扱うらしく四人で買い物を始めた。
『あ!ねぇ、せっかくだしさ!たまには全然違う格好の服選んでそれで街出ようよ!』
ルカの言葉にエースとサッチはのりのりで、マルコはしょうがねぇと苦笑いで了承すると、それぞれの服を四人で選び出した。
「ありがとうございましたぁー!!」
カランカランと音をたて、店員のいくらかご機嫌な声に送り出された四人はお互いの服を見て笑い合う。
マルコは、Yシャツにループタイにベストを羽織り、パンツは細身のブラックジーンズ。
『…安定のマルコね…』
マルコを見たルカがにやにやとする。
「どういう意味だよい…」
そして、エースはTシャツにジャケットを羽織り、ダメージジーンズ。
『エースは、ちょっとやんちゃさを隠しつつってとこね』
「なんか落ち着かねぇ……」
「そりゃ、いつも半裸だからだろぃ…」
最後にサッチへと視線を移すルカ。
サッチは、黒のロンTに白のパンツを合わせた大人スタイルだ。
『予想外に決まりすぎてて恐ろしいわ…』
「……くそ…俺のポリシー」
服を着替えた際にルカに襲われ、リーゼントを台無しにされたサッチが前髪を後ろへと流す。
クスクスと笑うルカに、三人が視線を向ければ。
キャミソールに長袖の薄手ボレロを羽織り、ミニスカートをはいたルカ。
「これもこれで、エロチックだよな…」
「いつもは、パンツだからな!」
「……エース。発音間違ってるよい」
『本当だよ!!端から聞いたらあたし只の変態じゃないの!!』
顔を見合わせると四人でぷっと吹き出し、笑いだすと。
「んじゃぁ、行きますか?」
そう言ってサッチが手をルカへと差し出す。
『ふふっ…行こうか?』
ふわりと笑って、サッチの手に手を添えるルカ。
「俺、腹減ったー!!」
もう片方のルカの腕を掴んだエースに笑いかけるルカ。
「じゃぁ、まずはいつもと違って酒場じゃなくて…カフェにでも行くかい?」
にっと口角をあげて笑うマルコが、サッチとルカの間に滑り込みルカの肩を抱く。
「あぁっ!!おめぇ、俺のポジションをっ!」
ギャーギャーと結局いつもの様に騒ぎだした四人は笑いながら街を歩く。
それを見かけた家族達は微笑ましく、笑いながら四人を見ていた。
『たまには、こんなのもいーねぇ!』
笑うルカに三人は頬を緩ませる。
そして、夕暮れ迫る街をもう少しだけ穏やかに散策をしようと歩みを進めるのだった。
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