Savior-47
「おいっ!?ルカはどこだよっ!!?」
焦ったエースとルフィが船縁へと駆け寄って、身を乗り出しルカをキョロキョロと視線を彷徨わせて探す。
その間にも、少しずつ少しずつ船はマリンフォードから離れていく。
「動けるものは堕天使を探せ!!まだ近くにいる筈だっ!!なんとしても、捕えろ!!」
センゴクの声がマリンフォードに響く。
そして、大将である青雉や赤犬、黄猿も視線を彷徨わせてルカの姿を探していた。
「マルコっ!!ルカは!!?」
サッチが大声でマルコへ尋ねるも、遠くで不死鳥へと姿を変えたマルコはその長い首を左右に振る。
マルコは落下しただろう位置の上空を確認のために旋回してルカの姿を探すもルカは見当たらず・・・焦りながらもモビーへと向かいながら地上を見回してルカの姿を探していた。
そして、ほかの場所にも見当たらずにモビー上空へと戻ったマルコは。
その巨大なモビー・ディックの背後に今まではなかった筈の船を見つけた。
その船の甲板には数人の人影が見え、マルコは凝視しながらその人影を目を凝らして見た。
「っ!!?いたぞっっ!!」
マルコの上げた声に全員が反応して上空のマルコを見上げると、彼はすでに前方へ向けて飛び始めていた。
安堵しながら、他の船員達が出航の為甲板を走り回る中。
白ひげをはじめとした隊長達は反対側の船縁に駆け寄りその船を視界に捕えた時。
後から駆けてきたルフィが言った。
「・・・・・あれぇ〜?なんであいついんだ??」
全員が一斉にルフィに向き直る。
「ルフィの友達か!!?」
エースがルフィの肩を掴み揺さぶりながら問いただす。
「いや、友達とはちげぇかな?あ、でもルカは仲いいみたいだったぞ?」
「はぁっ!!?誰だよ!!あいつは!!」
「あいつ、俺と同じルーキーって奴なんだと!!えーっと、たしか・・・」
ルフィが名前を出そうとした時。
ビスタが思い出したように声を発した。
「あの海賊旗・・・・確かにエースの弟と同じルーキーの様だ・・・」
「なんだっ!!?ビスタ知ってんのかっ!?」
誰だ、あいつはっ!!とエースとサッチが詰め寄る。
2人の勢いに苦笑いを見せながらビスタが紡いだ名は・・・・
「あれは、死の外科医・・・トラファルガー・ローだ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「あっ!!そうそう!!そいつだ!!」
ルフィの言葉の後。サッチとエースの雄叫びが響いたのだった。
「何故ここにルーキーが・・」
センゴクが海を見ながら呟く。と、海兵が現れた。
「元帥!!大変です!!マリンフォードの沖数キロの位置に麦わらと同じくこの度のルーキー達の乗る船が更に7隻停泊しております!!!!」
「なんだとっ!?」
慌てたセンゴクは海兵から双眼鏡を奪い取ると沖を見る。
その先には、キッド率いるキッド海賊団、ボニー率いるボニー海賊団、ドレーク率いるドレーク海賊団、ホーキンス率いるホーキンス海賊団、アプー率いるオンエア海賊団、カポネ率いるファイアタンク海賊団、ウルージ率いる破戒僧海賊団の船がいた。
「何をしに来たというんだ!!?」
「センゴクさぁん。こりゃ、一旦引いたほうがいいんじゃねぇんですか?」
振り返ればそこにいたのは青雉とガープ。
「堕天使も今はもうこのマリンフォードから離れとる。白ひげ達も今が好機と船を進めとる。今深追いしたところで、あのルーキー達も相手にすることになるかもわからん。これだけ兵が疲弊してる今。深追いはわしらに痛手しか残さんわい・・・」
ガ−プの言葉にセンゴクは苦虫を噛み潰したように顔を険しく歪めると、今一度離れ始めたモビー・ディックを見据えた。
「これで、しまいだと思うんじゃぁないぞ!!白ひげ!!必ず、いつか貴様らを捕えてやるからなっ!!!!」
センゴクの叫びに白ひげが笑う。
「いつでもきやがれってんだ。俺らは新世界で待っててやらぁ!!グララララララ!!」
白ひげの笑い声が、空気を海を地面を揺らす。
「海兵諸君!!戦争は終わりだ!!!負傷している者の救護を開始しろ!!!」
マリンフォードに戦争の終結の声が響く。
「深追いは無駄に兵を減らすだけ。今はいい。」
そう言ったセンゴクの顔は少しだけ悔しげに歪んでいた。
その頃。ハートの海賊団の船甲板では不死鳥から元に戻ったマルコとルカを抱えたローが睨み合っていた。
「ありがとよい。ルカを返してくれるか?」
「まさかあのライが、白ひげの堕天使だったとはなぁ・・・」
「あぁ、姿を変えてる時に会ったのかよい」
「まぁな・・・これで色々な謎が解けた。」
「じゃぁ、もういいだろい。ルカを助けてくれた事。礼を言わせてもらう。とりあえず、ルカを返してくれるかい?」
「そりゃぁ、できねぇ相談だなぁ?」
「なんだと?」
「別にあんたらからこいつを奪う気はねぇさ。だが、こいつの怪我はかなり重傷だ。あんたらの今の船でまともな治療が出来るとは思えねぇ。こいつとは知らねぇ間柄じゃねぇからな。治療くれぇはしてやる。死なれても困るからな!!」
背を向けて船内へと繋がる扉へ歩みを進めていたローがチラリとマルコを振り返りそう言った。
それを聞いたマルコは目を見開いた後、近くにいたペンギンに事情を説明してくると言って船を後にした。
それを気配で察知したローは飛び上がったマルコに声をかけた。
「あと麦わら屋と他にも重症の奴がいたら連れて来い。ついでにみてやる」
「感謝するよい」
そうして、マルコはモビーへと急ぎ飛んだのだった。
その間にも船は進み、マリンフォードからは大分離れていた。
マルコがモビーに降り立ち白ひげの元に行くと、エース達も集まってくる。
「ルカは?」
「ルカはあいつが見てくれてるよい。傷がかなり深いからない。今のこの船よりは満足な治療をしてくれるだろうよい。あと、エースの弟。お前も、あいつの船で治療うけてこいよい。他にも、こっちで厳しい重症な奴は手あげろい!!あっちの船に運ぶ!!いいだろい・・親父」
「あぁ、ここだけじゃ機材も治療用品も人手も足りねぇ。必ず全員が元気な状態じゃねぇとあいつが悲しむからなぁ。」
にぃと白ひげが笑みを見せる。
一段楽したら、あの小僧を連れてこい。そうマルコに伝えるとマルコは頷いて、怪我人を運ぶ為の準備を開始した。
と、
「おいっ!!!麦わらっ!!」
何処からかルフィを呼ぶ声が響き、ルフィが船縁から顔を覗かせる。
「おぉ、いたいた!!おい、あいつ、大丈夫か!!?」
そこにいたのは、キッド海賊団船長ユースタス・キッドとキラー。
モビーを下から見上げながらルフィに声をかけてきたのだ。
「あいつぃ〜?」
不思議そうに聞き返すルフィの隣からエースとサッチが顔を覗かせる。
「どうした?」
「あいつ?あいつって?・・・・・あっ!!ルカの事かっ!!?」
「そうだよ!!当たり前だろうが馬鹿やろう!!」
「それがよぉ、今隈の奴んとこにいてどうしてるかわかんねぇんだよ!!」
「隈・・・トラファルガーのやろうかっ!!っち・・」
「先手を取られたな。キッド」
「うるせぇよっ!!」
下で何やら揉めてる2人に三人は顔を見合わせて首を傾げる。
「何言ってんだ?あいつら・・」
「さぁ・・・・」
「あれじゃねぇ?ルカ心配してきたんじゃね?」
サッチがそう言った瞬間。エースがなにっ!!?と身を乗り出した。
「ルカはやらねぇからな!!こんのチューリップ野郎!!」
はぁっ!!?っと下で素っ頓狂な声をあげるキッドになぜかエースがドヤ顔を見せる。
「ちげぇっつーの!!んだよ、ちょっと心配して様子見に来たってのによ!!」
何やらぷりぷりと怒りながら、かれは船内へと入っていってしまったが、残っていたキラーが再度声をかけた。
「キッドが済まないな。柄にもないことをしたもんで照れているみたいだ。これを渡しに来たんだ。受け取ってくれ!!」
そう言ってキラーが投げた巨大な荷物を受け取ったサッチが中を確認すればそこに入っていたのは大量の医療物資。
「こりゃぁ・・・・、わりぃな!!恩にきる!!」
サッチがキラーに礼を伝えると、キラーは片手をあげるとルカに言伝を頼めるかと聞いてきた。
「あぁ、あいつの友達なら大歓迎だぜ!!」
「なら、こう伝えてくれ。無事で何よりだ。これから俺らも新世界に入る。必ず今よりお前より強くなってみせる。だから、そこで待っててくれ。俺たちの再会の場所は新世界だ、忘れるな・・・・そう伝えてくれ」
そういって、キラーも踵を返して船内へと消えていった。
「おい!!エースの弟!!あっちの船に行くぞい!!早く来い!!」
マルコの言葉にエースとサッチも走り出す。
「あ、待って!!俺も行く!!」
「俺も!!ルカ心配だからよっ!!」
「お前らがきたら、目覚めるもんも目覚めなくなっちまうよい」
「どういうこった!!?このパイナップル!!]
「黙れよい、このフランスパン」
言い合う2人にエースとルフィが顔を見合わせると笑い出す。
そんな2人に視線をむけた2人はふっと笑いを溢す。
「そういや、ルフィ。」
「何だ?エース」
「シャンクス、いいのか?」
シャンクスの事を聞かれたルフィが目を丸くする。
「いいんだ!まだ俺はシャンクスに胸張って会えるような立派な海賊じゃねぇからなっ!!」
そう言ったルフィにサッチとマルコが聞いた。
「そういえば・・・あいつの腕は」
「お前を助けた時のだったかい?」
「あぁ、シャンクスがいなかったら。俺はあんとき死んでた!!だから、この帽子をシャンクスに返す時は今よりももっともっと強くなって、すっげー海賊になった時って決めてんだ!!」
シャンクスの並走しているレッドフォースを背にしてそう笑ったルフィを見てエース達が微笑む。
「じゃぁ、まずは俺より強くなんねぇとなっ!!」
「すぐに追いつくさ!!いつか、エースもルカもシャンクスも越えて見せるさ!!」
「じゃぁ、いつか来るその日まで俺らは首洗って待ってねぇとなぁ」
笑いあう4人が、ローの船へと向かおうと足を踏み出した時。
白ひげの傍らに置かれていた電伝虫が鳴り出した。
1つの存在が紡いだ未来
(何だ?こんな時に誰からだよ??)
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