savior-4




着ていた看守の制服の袖をジャケットごと捲るライ。

『暑いな…』

呟いた言葉にルフィとボン・クレーが頷く。
三人が見下ろすのは煮えたぎるlevel4の釜の中。
ミノタウロスを倒した後、彼らは真っ直ぐ進みボン・クレーの言う階段を使わずに降りれる場所へと辿り着いた。

『ここから熱気が上階のlevel3に送り込まれてこの暑さの出来上がりってぇわけね…えげつねぇなぁ…』

言葉とは裏腹に冷笑を浮かべるライに背筋が冷えるのを感じたボン・クレーと様子の変化に戸惑うルフィ。

『ほら、行くんだろ?早く行こうぜ。ルフィ』

掛けられた声に頷いていざ、行こうとした時悲鳴が響いた。

「なっ!!何なんだっ!!こいつはぁあぁぁあ!!?」

「ご、獄卒獣ミノタウロスだがねぇ〜!!こんな奴相手にしてたらっ!」

三人が何事かと見れば、血を流しながらバギーとMr.3追いたてるミノタウロス。

『へぇ…ちょっと手加減したけど。もうあんな動けるのかあいつ…』

「おい!そんなのんびりしてらんねぇよ!!あいつ、こっち来てるぞ!?」

「ちょ〜とぉ〜ぅ!!Mr.3!なぁ〜にやってんのよぉ〜ぅ!!」

暗にこっちにくんじゃねぇと発しているボン・クレーに気付いたバギーとMr.3が声に前方を向いて声をあげた。

「お、お前らっ!!バカ野郎!後ろに看守がいんぞっ!!」

「私たちに文句を言う前にお前らが何してるんだがねぇ〜!!」

「は?後ろ?」

振り向くと、そこには看守服を来たライ。
合点がいったのかルフィが笑う。

「アッハハハ…こいつは大丈夫だぞー!」

そう言いながらルフィ達も走り出す。
並んだバギーとMr.3が、騒ぎながら顔を見て叫んだ。

「あぁっ!?てめぇわぁっ!嫌みな看守じゃねぇかっ!!」

「紛らわしいがねぇ〜!服を着替えないかね!!」

『うるせぇなぁ。黙って走らねぇと蹴り落とすぞ、お前ら』

被った帽子の奥でギラリと鈍く光る紅い瞳に怯えた二人は瞬時に口を紡ぐ。

『おい!ルフィ。あいつどうする!?俺がやっていいなら、俺が行くぜ?』

ギラギラと光だした瞳に気付いたルフィが首を振る。

「いや、お前はまだ手出すな!!俺がいく!!」

そう言うとルフィは一気に足を止めてミノタウロスへと向き直ると。

「ギア…3。ゴムゴムの…巨人の銃!!」

殴られたミノタウロスは吹っ飛んで壁に辺り落下。
それを見るとバギーとMr.3がほっとため息をつく。



そして、場所は移りインペルダウン1階通路。
歩いていたハンコックがモモンガへと聞いた。

「彼の処刑まであとどの位じゃ?」

「残り……29時間。明日の午後3時に全てが終わる。万にひとつ………何も起こらなければの話だがな」

その言葉の後ハンコック達はインペルダウンの外へと出ると、ハンコックがインペルダウンを見上げる。

そこへ海兵がモモンガへと声をかけた。

「モモンガ中将!!大変です!!新世界で赤髪が少々小競り合いを起こしたようで…」

「赤髪が?何かの間違いじゃないのか?何故こんな時期に!?相手は誰だ!?」

「はっ!!それが……同じ四皇であるカイドウでして…この機に白ひげを討ち取ろうとしたカイドウを赤髪が止めたのではないかとの、本部の見解なのですが…」

「そういう事態が平然と起こるか…何と言う不安定な海…四皇同士の小競り合いなど現状手に余るただならぬ事件!白ひげとの戦いを避けて通る道など…万に一つもないのかもしれんな。世界がそれを感じ取っている。マリンフォードへ急ぐぞ!!」


…………………

一方吹き抜けの塔内側では、バギーとMr.3、そしてルフィがちっさな小競り合いをしていた。

「下は焦熱地獄だぞ!?行かねぇよ!俺達はlevel4へはっ!!」

「なんでぇ?」

「何でぇ?…じゃねぇよっ!?」

「脱・獄したいんだがね、脱・獄!!」

「そうだ!俺達が行きてぇのは上!上だがね!!」

「うわ!でけぇ鼻血の塊とれた!」

「てめぇ、聞いてんのかよ!!」

騒ぐルフィ達を視界の端へととどめたライは下を除きこむ。
背後ではボン・クレーが話し出した。

「ちょっと、麦ちゃん!放っておきなさいよーぅ!そんな丸っきり根性ナッスィンガー供なんて!」

「誰が丸っ鼻コントみたいダーだぁっ!!」

「ナニソレ!?どぅー聞いたらそうなんの!?もう決めた!!あちし、回る!!」

立ち上がるとライが振り返る。

『もう面倒くせぇな。ぐちゃぐちゃと。俺は早く暴れてぇんだよ!!』

そう言ったライはどこからか、いつも腰に差していた剣を取り出すと一気に跳躍すると勢いそのままに床を切り落とした。

「てっめぇえぇー!?何やっちゃってくれてんだぁー!!!」

『うるせぇなぁ?こりゃ、あれだ。ちょっと、こづいただけで大半はお前らの攻撃で崩れたんだ』

明らかに無理のある事をめんどくさそうな顔を隠しもせず告げるライ。

「あぁ、そうか…俺のマギー弾が強力すぎたせいで…」

「ちげぇぞ!!俺のパンチが」

「いえ、あちしの蹴りが」

「いや、いや。私のドルドルの…あ…私のはあれか…別に」

「ねぇのかょっ!?ってそんなわけあるかぁ!!バカやろう!!やっぱあれだな!あけぇ髪の奴にはろくな奴がいやしねぇじゃねぇか!!」

「んだよ、心外だ!!」

「「「「ギャアァァア!焼かれるー!!」」」」



そして、こちら看守達サイド。

level3へとあがる階段付近にて、マゼラン、ハンニャバルを始めとする看守達が集まっていた。
と、そこへかなり慌てた様子の看守が走ったきた。

「署長!!報告致します!!level4監視室が何者かの襲撃を受けたらしく!!監視室にて任務をおっていた者達全員が、何やらうわ言を呟きながら泡を吹いておりまして!!医療班を治療に当たらせたのですが…ろくに会話も出来ず!!」

「何だと!?どういう事だっ!侵入者は麦わらだけではないというのか!?それとも…内部に協力者が!?」

「署長!!大変です!!」

「なんだ!?どうした!」

「侵入者麦わらのルフィは看守を引き連れ、既にこのフロアに入ってきております!この先で戦闘が開始されています!至急応援をっ!!」

「どういう事だ!?穴の下は煮えたぎる血の池の筈だぞ!!」

「共に落ちてきた瓦礫で回避できたようで…」

「そんなバカな…更に看守まで人質に!!」

「いや、それが……」

「何だ!?」

「その看守、麦わらと共に我々に剣向けてきまして!!暴れまわっているんです!!」

「どういう事だ!?」



ライという存在が紛れ込んだ事で、更に監獄内は混乱の渦へと巻き込まれていく。

そして、ルフィ達は。

「うわっ!!一杯きやがったな!!この階!上よりあちぃけど…腹ごしらえすれば元気100倍になるぞ!!ゴムゴムの花火ー!!」

『わらわらと…虫けらが束になっても俺の前じゃ意味ねぇぞ!!』

ルフィの攻撃から何とか免れた看守達をライが切り捨てていく。

「貴様!看守の身でありながら、侵入者に手を貸すつもりか!!」

『生憎、俺ぁ看守じゃねぇんだよ』

被っていた帽子を血の池へと投げ捨てると、ジャケットも投げ捨てる。

「なっ!?こいつは!!麦わらのクルー!!紅の騎士!!」

『気付くのが、遅かったな?早く気付けばあいつらがいかれちまう事もなかったのになぁ?だが、手遅れだ。お前らには本物の地獄を見せてやるよ!!』

地を蹴りライが走り出す。
看守の間を縫い走り抜けた直後、看守達は血を吹き出して倒れる。

『ククク…、看守には荷が重いんじゃないか?』

剣を震い次々と看守達は血を流し倒れていくが、ライは一滴も返り血を浴びることなく縦横無尽に駆け回る。

「おい!!ライ!やりすぎだ!!止まれ!!」

ルフィの言葉に足を止めた時には、ライから発せられる殺気に足がすくみ怖じ気づいた者達だけが残っていた。

と、そこへ

「随分と、好き勝手にやってくれた様だな?」

声振り向けばそこには怒りを露にしたマゼランがたっていた。



戦闘狂

(エースをあんな目にあわせたのは…お前か?)

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