Giselleパロ
(ギャグだと思って読んでください…)
昔々あるところに、沖田総司という男の子がおりました。
総司くんは、生まれてすぐにお父さんもお母さんも亡くなってしまい、ずっと近所の近藤さんという人と一緒に暮らしていました。
裕福ではありませんでしたが、二人きり、とても幸せな毎日でした。
総司くんは身体が弱く、あまり外には出られませんでしたが、徐々に明るく天真爛漫な青年に成長していきました。
そんなある日、村はずれの近藤さんの家の近くを、隣国の王子様が通りかかりました。
王子様はお忍びで狩りをしている最中で、おつきの者と二人きりでした。
ちょうど近藤さんに言われてお使いに出ていた総司くんは、その時偶然にも王子様と出会ってしまったのです。
若い二人は、すぐに惹かれあっていきました。
王子様は村人の格好に扮していたため、総司くんには王子様だということが分かりません。
二人を隔てるものは、その時は何もありませんでした。
「総司、また会いに来るからな」
「僕も、待ってます」
それから王子様は、しょっちゅうお忍びで総司くんの元を訪れるようになりました。
総司くんも王子様の来る日が楽しみで、束の間の逢瀬を心待ちにしていました。
「ねぇ、あなたはどこの生まれの方なんですか?」
しかし、王子様が何を聞いても答えてくれないことに、総司くんの不安は段々と募っていきます。
「せめて、お名前だけでも教えてください。僕は、あなたを何と呼んだらいいのか分かりません」
「悪い………それだけは言えねえんだ…」
「……………」
王子様は、身分を隠して会いに来ているだけに、自分の身の上は何一つ明かせないのでした。
そしてそのことを、大変心苦しく思っていました。
「なら、……僕は、あなたの何ですか?恋人ですか?遊び相手ですか?」
「俺が………ただ一人、愛してる人だ」
「本当に?」
「本当だ」
王子様に言えるのは、ただそれだけでした。
しかし、毎回王子様に付き添って総司の元までやってくるお付きの者も、いい加減にこの関係に業を煮やしはじめていました。
所詮結婚などできる身分ではないのだから、相手のためにも、もう会いに行くのはやめてくれと毎回進言するのですが、王子様は頑として聞き入れません。
王子様もそうそう暇ではないので、会いに行けるのもごく稀なことなのですが、お付きの者をあの手この手で言いくるめて、暇さえあれば総司くんに会いに行ってしまいます。
とはいえ、たまにしか会いにきてくれない王子様に、総司も拗ねきっていました。
ある時、王子様が訪ねて行くと、総司くんはふてくされて一言も口をききませんでした。
「総司、ごめんな」
「……………」
「総司、せっかく会えたんだから、いい加減に機嫌を直してくれよ」
「……………」
何とか総司くんのご機嫌を取ろうとする王子様の前で、総司くんは徐に一輪花を摘みます。
そして、花占いを始めました。
「僕のことが好き、嫌い、好き……」
総司くんは花びらの枚数を数えて急に口を噤むと、突然花をポイッと投げ捨ててしまいました。
王子様は慌ててそれを拾い、枚数を数えます。
そして花びらを一枚こっそりむしると、総司くんの前で続きをしてみせました。
「総司のことが、好き、嫌い、……好き」
「ほんと?」
「あぁ、好きだ」
それで機嫌を直した総司くんは、王子様を連れて村の広場へと出かけました。
そこでは小さなお祭りが開かれていて、辺りは村人たちで賑わっています。
総司くんは、王子様を友達に紹介して、みんなでお祭りを楽しみました。
そこへ、突然隣国の貴族の集団がやってきました。
何でも、村のお祭りに招待されたらしいのです。
貴賓席に座り、優雅におしゃべりする貴族の姫君たちを、総司くんは羨ましそうに見つめました。
ずっと村にいる総司くんにとって、煌びやかな世界は珍しいものだったのです。
すると突然姫君の一人が立ち上がり、総司くんと王子様がいる方へと近付いてきました。
「お姫様………」
総司くんは恭しくお辞儀をします。
「あら、可愛いのね」
姫君は総司くんに微笑みかけ、次いで王子様の方を見ました。
「まぁ…………どうしてあなたがこんなところに。その格好はなんですの?」
「えっ?」
姫君の言葉に、総司くんは戸惑います。
「もしかして、この方のお知り合いなんですか?」
何も言わない王子様にしびれを切らして、総司くんは姫君に問いました。
すると。
「知り合いも何も、この方は私の国の王子様で、そして、私の許婚です」
姫君は、そう言いました。
「王子、様………」
総司くんはショックを隠せません。
「王子様、だなんて………」
縋るように王子様を見ましたが、王子様は困ったように眉尻を下げるだけでした。
「ねぇ、本当なの?……本当に、王子様、なんですか…?」
「あぁ…本当だ。今まで隠していて悪かった」
王子様の言葉に、総司くんの心は打ち砕かれました。
「何で……何で僕のことを好きだなんて言ったんだ!!この大嘘吐きっ!!」
「総司、違う!お前のことは、本気で愛してるんだ!!」
「まぁ、何ですって!?」
「嫌だっ!聞きたくない!!何も知らない僕で遊んでただけのくせに!!!どうしてこんな残酷なことをするんだぁぁ!!」
「総司っ」
髪を振り乱して泣き叫ぶ総司くんに、王子様はすかさず駆け寄ろうとします。
が、姫君に阻まれてしまいました。
「ちっ……放しやがれ!」
「あなたの許婚は私です。いくら政略結婚だからって、あの人のところに行くのは許さないわ」
それを聞いて、総司くんはますます傷つきました。
「なんで許婚がいるのに、僕のところになんか来たんだ!!王子様だって知ってたなら、こんなに好きにならなかったのに!!!」
「総司っ!」
その時、騒ぎを聞いた近藤さんが駆けつけました。
「総司!一体どうしたんだね!」
「近藤、さ………」
近藤さんの姿を目に留めると、総司は力なくその場に崩れ落ちました。
その身体を、近藤さんが慌てて抱き留めます。
「総司!どうした!あの男の所為なのか?!」
「違、……僕、は…ただ、…好き、で……」
総司くんの目は、もはや現実を映してはいません。
身体の弱い総司くんには、ショックが大きすぎたのでした。
総司くんは震える身体を無理やり立たせると、ふらふらと王子様の元へ歩いていきました。
その姿を、誰もが固唾を飲んで見守ります。
「おう、じ……さま…………好き、でした…」
それきり、総司くんは王子様の腕の中に倒れて、もう二度と目を覚ましませんでした。
「総司っ!総司ーっ!」
総司くんを失った王子様は、深い悲しみの淵に沈みました。
来る日も来る日も自分を責め続け、二度と帰ってはこない総司くんの面影を追いかけては、周りの者を心配させました。
ある晩、王子様は総司くんのお墓へと出かけました。
真っ白な百合をたくさん持って行って、お墓の前に飾ります。
すると、目の前に亡霊となった総司くんが現れました。
「総司………?」
この村には、恋をしたまま死ぬと、亡霊となって相手が死ぬまで取り憑くという言い伝えがありました。
王子様が思わず怯むと、総司くんは泣きそうな顔をして離れていきます。
「総司!待ってくれ!俺は、許しをこいにきたんだ!」
その言葉に、総司くんは首を振りました。
「……最初から……怒ってなんかないです。ただ、………愛しただけです」
「総司……」
総司くんの言葉に、王子様は思わず涙を流しました。
そのうちに、二人の周りに他の亡霊たちが集まってきます。
そして、王子様に取り憑いて殺そうとしました。
が、総司くんには王子様を殺すことができません。
王子様を殺せという亡霊の女王様に、王子様を助けようと一晩中懇願し続けました。
やがて夜が明けて、亡霊たちが消えていきます。
総司くんも、もう王子様とはいられません。
「総司、総司……行かないでくれ…!」
総司くんの手を握り締めて離そうとしない王子様に、総司くんは百合の花を一輪渡してあげました。
「好きでしたよ、あなたのこと」
そう言って、総司くんはお墓の中に消えていきました。
朝日に照らされるお墓の前で、王子様はいつまでも泣いていました。
―――
いろいろ補足。
・王子様はほんとは公爵
でも公爵様って書くとビミョーだから王子様
・王子様が誰かはご想像にお任せします^^
・亡霊たちはほんとはウィリーっていう女子オンリーの幽霊
結婚できないで死んじゃった子たちが、悲しみのあまりお墓に来た若い男性を死ぬまで踊らせて、湖に沈めちゃう。こわーい
・なんでこんなの書いたんだか
今になって我に返りました
いろいろすいません…
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