「っ………!」
「くっ…………」
勝負は一太刀で決まった。
「総司ぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!」
斎藤の悲痛な声が、辺りにこだまする。
総司が崩れ落ちて、光の消えかけている目で斎藤を見上げる。
斎藤は慌てて駆け寄って、総司を抱きかかえた。
「は…じめ…くん、」
「何故…何故だ…」
斎藤はひどく取り乱して、赤く染まった総司を、抱きしめたり、揺さぶってみたりしている。
「何故避けなかったのだ……」
総司は、抜刀こそしていたものの、斎藤の初太刀を受けることなく、刀を放り出したのだった。
結果、斎藤の渾身の力を込めた一刀は、容赦なく、深々と総司を切り裂いた。
「ほんとは…ね、武士らしく……腹…、斬りたかった…でも、僕、もう…力が…ないんだ…」
「総司……嫌だ…総司!しっかりしろ!!」
「っは…はじ、めくん…の、そういう実直なところ……好き、だった…」
「総司っ!!!!!」
喋る度に傷口から溢れ出す血が、斎藤の服をも染めていく。
「……あ、の…1つ…お願いして…も…いい、かな」
息も絶え絶えに、総司は言った。
「何だ…総司っ、何が望みだ」
「土方さんに……幸せ…に…なって…って」
それきり、総司はもう何も言わなかった。
「そ、じ………?」
斎藤は狂ったように、魂の籠もらない身体を揺さぶる。
「総司っ!総司ぃ!!嫌だぁぁぁぁぁぁ……!!!!」
光の消えた目が、虚ろに斎藤を見上げていた。
「総司っ…っう……すまない……」
斎藤は静かに瞼を閉じてやる。
総司は、凄惨な死に様にも関わらず、ひどく安らかな顔をしていた。
どのくらい時間が経過しただろうか。
ずっとその場で冷たい総司を抱えていた斎藤は、やがて立ち上がると、総司をおぶって歩き出した。
「総司、星が綺麗だ」
語りかけても、返事が返ってくることは、もう二度となかった。
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