「ひぁ、ぁ……っん」
総司の嬌声が部屋に響き渡る。
「っあ…土方さ、んっ…」
土方の指は、先ほどから総司の中を掻き回していた。
土方は総司をその腕にしっかりと抱き留めて、総司は総司で土方の背中に縋りつくように腕を回し、必死で快感に耐えている。
「ふっ…あっ……」
狂おしいほどに身体を愛撫し蠢く手に、ぞくぞくとした快感が背筋を走る。
総司の目はとろとろに溶け、いつもより荒々しい土方の手つきに、理性などはとっくに消え去っていた。
的確に弱いところだけを掠めてくる土方の指から、総司は身を捩って逃げようとする。
「あっ、ん…も、っ」
「総司、」
「もうむり、…っむりぃ、っ!」
激しくよがり、茶色い髪をぱさつかせながら必死で強請ってくる総司の頭に、土方は小さく口付けた。
「ひ、かたさ、んっ…お、ねがい、ぃっ…」
「何だ?」
土方がずくずくに溶けた総司自身に触れてやると、総司は涙を散らして泣き叫んだ。
「ひゃぁっ、あっ…そこじゃな…い、っ」
「ん?」
「おねがい、だからあぁ…っ!」
「だから、それだけじゃわかんねぇよ」
痛々しく張り詰めた総司自身の先端に爪を食い込ませ、抉るように引っ掻きながら、もう片方の手で後ろを掻き回してやる。
すると総司は、土方の胸に頭をぐりぐりと押し付けて、すぎた快感に悶絶した。
「も、やだぁ、ぁっ!…でちゃう、ぅ」
とぷん、と先走りを溢れさせる総司自身をやわらかく包み込みながら、土方は震える総司の身体をしっかりと抱き留めた。
「…総司」
確かめるようにその名を呼んで、首筋に自分のものだという証の花を点々と咲かせていく。
唇を寄せる度にびくりと身体を強ばらせ、甘い吐息を吐く総司を、土方は酷く愛おしいと思った。
「っはぁ、あ…ひじ…か、たさん…」
ともすると暴走してしまいそうになる自分を必死に抑えて、傷つけないように自分の証を植え付ける。
「ひじかたさん、の…早く、ちょーだい、っ」
「ったく…耐え性のねぇやつだな」
土方はそう言うと、とろんとした目で見上げてくる総司の中から指を引き抜き、自らの昂りを埋め込んだ。
「総司……俺だけを感じろよ」
「ひぁ、ぁあっ…ん!」
総司の腰を支えながら、その身体をゆっくりと下へ落としていく。
「やあ、ぁっ…ひじかた、さんっ…待って」
「何だよ」
総司は余りにも強すぎる快感に涙を散らし、それ以上進まないように必死で足を踏ん張っていたが、力の入らない身体では大した抵抗にもならず、やがてすとんと土方の上に落ちてきた。
「ひあ、ぁっ、お、っきい、」
「動くぞ」
土方は、総司の返事も待たずに腰を突き上げた。
「や、ちょ…と、待って、っ!」
「悪い、待てねぇ」
「ひど……あっ、ぁ」
いつになく余裕のない土方に、否応なく総司も追い上げられる。
苦しいまでの快感に、総司は頭を目の前の胸に押し付けた。
「っん、ひ、か…たさん……っ!」
「…総司、お前は一体誰のもんだ」
「そん、なの…決まって、る」
「ちゃんと、言え」
ずん、と下から突き上げられて、総司は悲鳴にも似た嬌声を上げた。
「っひ…ぁ、…は、…ひじかた、さ、ん…の」
律動の合間、途切れ途切れにやっと紡ぐと、その名前の主は微かに頬を緩めた。
「ぼく、は…ひっ、じかたさん、だけ…っ」
総司は土方の背中に回した腕に、ぎゅっと力を込めた。
土方が荒れている理由も、今はもう分かっている。
芹沢に媚びを売ることに嫉妬してくれたのだ。
それが嬉しくて、総司はきゅっと中を収縮させた。
「っ…何やってんだよ」
土方が小さく呻く。
「な、にが」
「お前、今のわざとだろ」
「わかんな……あぁっ、」
途端に激しくなる突き上げに、接合部がぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てた。
「も、だめっ、だめぇっ…」
「イイか?総司」
「いっちゃ…、ぁっ、も、いく…っ」
「前も触ってねぇのにイくのか?」
「っいじわる、言わない…で…」
その時、不意に土方が総司自身をぎゅっと握り締めた。
「あっ………なんで…」
総司は内側に籠もるばかりの熱に身体を悶えさせた。
「お前は、俺のもんだからな」
「っそんなこと…」
熱を解放できないもどかしさに顔を歪める総司の頬を、土方は片手でそっと撫でた。
「分かったか?」
「分かって、る……僕は、あなたの、です…っ」
土方はその答えに満足すると、戒めていた手を解き、突き上げを強くした。
「ほら、イっていいぞ」
「ひぁっ…ひじか、っさん…」
「好きなだけイけ」
総司はそのまま身体をびくびくと痙攣させると、ぎゅっと目を瞑ったまま白濁を吐き出した。
それが総司と土方の腹部を汚し、卑猥な眺めを作る。
その直後に、土方も総司の中に欲望を吐き出した。
「ひじかたさん…」
荒い息のままで、総司は土方を呼んだ。
「ずっと傍に置いてください…」
繋がったまま離れようともせず、掠れた声で総司が言う。
「僕だって、芹沢さんの傍にはいたくないんです、」
「総司…」
「こんなことしてたら、土方さんに嫌われちゃうんじゃないかとか、嫌な思いばかりさせてるんじゃないかとか、すっごく不安なんです…」
「すまねぇ…総司……」
「でも、近藤さんの為だから…やるべきことはやらないと……そうじゃないと、僕たちの関係が、破綻しちゃう……でしょ?」
面白くないことばかり四の五の言い続ける総司の唇を、土方は噛みつくように塞いだ。
「っん――っ」
「お前のことは、ぜってぇ離してやらねぇからな」
口付けの間に囁かれたそれは、甘い拘束の言葉で。
「総司、愛してる――」
言いながらようやく総司から離れた土方は、懐紙を取り出すと、乱れた総司の身体を清めてやった。
「悪いな。なるべく…抑えたつもりだったんだが」
まるで何かにかぶれたかのように真っ赤な痕が点々と付いた総司の首筋を眺めながら、土方は呟いた。
「…抑えなくてもよかったのに」
総司は手早く着物を直すと、土方の着物にも手をかけて、元通りに正した。
「じゃあ、また明日」
そう言って律儀に正座している総司を、土方は不思議そうに眺めた。
「何だ?」
「はい?」
「何が、また明日なんだ?」
「へ?…だって僕、謹慎中ですよ?副長さんは早くお仕事に戻ってください」
当然のように言う総司に、土方はやれやれと溜め息を吐いた。
「仕方のねぇ奴だな」
そして、そのままきょとんとしている総司を抱きかかえる。
「ち、ちょっと!何してるんですか?」
「謹慎中のお前に付き合って、俺もここにいてやるよ」
「は?訳がわかりません!」
「だから、お前だけが罰を受けるのは不公平だって言ってんだよ」
「で、でも!土方さんは何も…」
「んなこと言ったら、お前だって何も悪いことしてねぇだろうが」
「しました!僕が騒ぎを起こして…」
「あー分かった分かった。じゃあその謹慎中のお前を襲った俺も同罪ってことだ」
聞く耳を一切持たず、何でもないように拷問部屋に居座る土方を、総司は困惑して見つめた。
しかし、困惑しながらも、頬が緩むのを抑えられない。
総司は土方の、こういうさり気ない優しさが好きだった。
きっと、いくら体裁上と分かっているとは言え、丸々一晩も一人でこんな薄暗いところにいなければならない総司の寂しさを分かっていて、傍にいてくれようとしているのだろう。
総司は恐る恐る、土方の肩に頭を預けた。
「…総司?」
「……ありがとうございます」
「…………いいんだよ」
「久しぶりに…二人で静かに過ごせますね」
「あぁ…」
総司は顔を上げると、鉄格子越しに見える月の光をぼんやりと眺めた。
「京の月も、綺麗ですね」
「月なんざどっから見ても同じだろうが」
「……僕も、」
「あ?」
「僕も、どこに居ても同じ」
「……?」
「土方さんが、ずっと好き」
「お前…」
土方は、総司の頭をぐいっと引き寄せた。
「ありがとな」
「ううん」
「だがな、月はやめとけ」
「え?」
「……月は、欠けるからな」
「ふふ……風流ですね。流石豊玉師匠」
「お前なぁ…折角いい雰囲気だったのに、ぶち壊すんじゃねぇよ」
「じゃあ、どうしようかな」
「は?」
「何に誓おう」
「誓う?」
「何か、変わらないものがいいです」
総司は暫く考えていたが、やがて顔を上げると、意志の強い翡翠の瞳で土方を射抜いた。
「僕は、…刀に…貴方への愛を誓いますよ」
「刀、か…」
「僕の命は…刀と共にあるから。土方さんへの愛も、それと同じです。僕を守り、強くしてくれる」
「総司…」
「だから、命の限り、愛します」
総司は言ってのけてから真っ赤になって顔を背けた。
「馬鹿。嬉しいこと言ってんじゃねぇ」
土方は優しく総司を引き寄せると、そっと口付けを落とした。
土方さんに(正当な理由で)閉じ込められる総司が書きたかっただけでした。
20110921
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