翌日―――。
朝餉前の局長室に、一人の訪問者が現れる。
「おはようございます、近藤さん」
「おう!おはよう総司。どうした、こんな朝早くから」
総司は何やらもじもじして、言うのを渋っている。
「なんだ、総司らしくないな。言いたいことがあるんだろう?なら、遠慮せずに言ってごらん」
近藤の優しい言葉に、総司はやっと口を割る。
「あのですね、僕、結婚したんです」
総司の口から飛び出た言葉に、近藤の心臓が跳ね上がった。
「け、け、け、けっ、結婚!!!!!!????」
総司は困ったようににこにこ笑っている。少し、照れているのかもしれない。
その様子に、冗談めかしいところは少しもなかった。
「い、い、い、いっ、一体誰と!!!!?????」
近藤は開いた口が塞がらずに、上を下への大騒ぎをしている。
総司が変な女に引っかかったりしたら、お光さんに顔向けができない、という内容のことを、たいそうどもりながら、やっと言葉にした。
「あ、それなら大丈夫です。姉さんも、きっと悪くは思わないはずですから。それより、近藤さんも、僕と一緒に喜んでくださいよ」
近藤は、幸せそうに笑う総司を、幽霊でも見ているかのような顔で眺める。
「…そ、総司?お前、一体、誰を嫁にもらったんだ?」
近藤は、やっとの思いでそれだけ言った。
総司のことは、試衛館時代から、弟のように可愛がってきたのだ。
勿論、その幸せを一番に望んではいたが、人生の一大事であるだけに、相手のことや経緯などを何も知らないうちは、手放しには喜べない。
それに、近藤に一言の相談もなく、見合いをするなどという話も聞いていなかっただけに、益々不安が高まった。
島原かどこかのろくでもない女にたらし込まれていたら、それこそ自分も責任を感じてしまう。
しかし近藤は、総司の次の発言に、更に衝撃を受けることになる。
「えーと、今後の隊務などに影響すると思うので報告しておきますが、僕は今日から土方総司になりました。以後よろしくお願い致します!」
………………………
「トシィィィィィィィィ!!どこにいる!!!!!!出てこォォォォォい!!!!!!」
「ひぇー、近藤さんがおっかない」
「当たり前だぁぁぁぁぁ!大事な総司を、誰がトシになんかやるかぁぁぁぁぁ!!」
この大音声で屯所中の者が飛び起きたのは勿論のこと、この後まもなく、総司は、近藤より更におっかない、起き抜けの土方さんによって散々に叱られたのでした。
終われ。
一週間ていう概念は昔からあったのですか。
ていうか近藤さんそこじゃないよ、トシにやれないとかどうこうの問題じゃなくて、大事な総司が衆道に走ってる方がよっぽど大問題だよ!
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