短編倉庫 | ナノ


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その頃。

「まったくもう。今日の土方さんはやりすぎですよ。おかげで腰が砕けちゃいました」

けろりとした顔で文句を言う総司に、土方は不適な笑みを浮かべて見せた。

「う……なんですその顔は。土方さんがその顔をしたら、次には絶対よくないことが……」


やや沈黙があって、始終不安そうな顔で土方を見上げていた総司は、土方が放った言葉に愕然とする。


「聞かれたぞ、総司」

「なっ……!?」

「だから、聞かれた」

「だから、じゃなくて!!何黙って平気な顔をしてるんですか!しかもいつもより激しく攻め立てて!本当にあなた馬鹿ですか!!!」

ものすごい剣幕である。

「大体、新撰組の副長がそんな醜態をさらしてもいいんですか!!」

しかし土方は屁でもないという風に軽くいなして、わざとだよ、と言い放った。

「どうせなら、俺の可愛い総司の鳴き声を、みんなにも聞かせてやろうと思ってな?俺の隊士への労いだよ」

「労い…………」

「ま、本当は俺だけのもんだから、誰にも聞かせたくなかったんだが……斎藤もいたしな、ちょっとした余興さ」

「な!一くんもいたんですか???本当に信じられない!明日から合わせる顔がないじゃないですか!」

「ああ?普通にしてりゃいいだろうが」

「…ああ、あなたを好きになった僕が馬鹿だった」

「たかが声聞かれたぐれぇで、そんなにぎゃあぎゃあ喚くなよ」

「たかが声って言いますけどね、あれは一番恥ずかしい声なんですよ!!!?土方さん以外になんか、絶対聞かれたくなかったのに!」

「…随分可愛いこと言ってくれるじゃねえか」

「どうして教えてくれなかったんですか!!」

「おめぇ、もし俺が教えてたら、声を我慢できたのかよ」

「なっ…それとこれとは話が違いますよっ!……ああもういいです!好きにしてください!」

「おう、好きにするとも」

「……やっぱり嫌だ。ろくなことにならない気がする」

「よくわかってるじゃねぇか」

そして土方は、もう一度総司を組み敷いたのだった。















翌日。

「あ、はじめくんおはよう」

副長室に向かって廊下を歩いていると、偶然総司に出くわしてしまった。

どこかよそよそしい気がしてしまうのは、こちらに疚しさがあるからだろう。

「おはよう。朝稽古か?」

当たり障りのない会話を選ぶ。

「違うよ、僕朝稽古は嫌いだから。厠に行くだけ。今日は夜の当番まで暇だから、朝寝坊するつもり」

それに腰が砕け散りそうだし
と、総司は心の中で付け足した。

はじめくん相手なら、別にあくせくすることもないか、と開き直ることにした。


一方の斎藤は一人考える。

夜の当番……

ということは、今日は昨日のようなことは起こらないだろう。

「ふぁーあ。何だかすごく眠いや…」

総司の間の抜けた声に、思わずびくっとする。

普通なら、こういう時何と応えるのだろう…

「よ、よく眠れなかったのか?」

多分、こう言うはずだ。
しかし、答えは言わずとも分かっている。

「え……あ、うん。まあね。それに、今日もまた眠れないかもしれないし」

何?また??

余程変な顔をしていたのだろう。
総司が怪訝そうに言った。

「なに?なんか僕変なこと言った?」

「また眠れないのか?」

「…巡察の日に寝不足になるのは当たり前でしょ?」

「あ、ああ…そうか…」

「……」

気まずい沈黙が流れる。

「それはそうと、はじめくんはどこに行くところ?」

総司が沈黙を破る。

「俺は…副長のところへ…」

「土方さん?……土方さんなら、まだ寝てると思うよ…」

さすがに総司も、自分が今、寝ている土方の腕の中から抜け出してきたところだ、とは言わなかった。

「でも、どうして?」

「…昨日の巡察の報告が、まだ済んでいない」

「ふーん。はじめくんが、ね。珍しいね」

理由は、火を見るよりも明らかである。

しかし、総司はわざとどうかしたの?と聞いた。

「いや……疲れて、眠ってしまった…それに、体調も優れなかったのだ」

へぇ、と総司が口元を歪める。

何故か、斎藤相手だと、総司の加虐心が擽られるのだ。

多少、斎藤に対する嫉妬があるのかもしれない。

「はじめくんて、本当に嘘が下手くそだよね」

「な……………………」

「まあ、僕としても不覚だったけどね。まさかはじめくんにまで、ね」

総司は、オブラートに包んだ言い方をした。

「総司………知っていたのか」

「ん?何を?何を知ってたの?」

総司がにこにこと笑う。


頑張って虚勢を張っていた斎藤が狼狽したのは、言うまでもない。






はじめくん可哀想に。
きゃっきゃっ

そろそろ沖斎とかも書いてみようか。
でもまだ勇気が出ない今日この頃。




*maetop|―




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