自分の座席を確認しながら機内の通路を歩く。
向こうについたら、何しよう?
一人きりで、生きていけるのかな。
愛さえあれば後はどうでもいいって、ベタで馬鹿で単純なことしか考えてなかったから、路頭に迷う羽目になりそうだ。
住むところを見つけて、職を探して。
そのうち恋人も………見つかったりするんだろうか。
一から新しい人生を歩み出せる…の?
まあでも、もう搭乗しちゃったんだから後には引き返せない。
一人でも、先に進むしかないんだ。
不安でいっぱいになりながら、自分の座席を探し歩く。
あ、ここだ。
窓際の自分の席を見て、ああ、随分前に、飛行機に乗るなら窓際がいいって言ったのを覚えててくれたんだろうなって思ったら、ちょっぴり寂しくなった。
通路側の席に先客がいたから、声を掛けて退いてもらおうとして。
そして、気付いた。
「あ」
「遅ぇよ」
目頭がじわりと熱くなった。
「っ……土方さん!!!」
そこにいたのは、ちょっぴり不機嫌そうな、いつも通りの土方さん。
「…なんでっ…………なんでいる?」
「あぁ?ったりめぇだろ。約束したじゃねぇかよ」
「ぅっ………でも……」
「でも、何だよ。いつ俺が空港で待つって言ったんだよ。機内の方が確実だろ?」
「でも!大抵のドラマじゃ空港だもん!」
「ったく…おめぇはいつもどんなドラマを見てんだよ」
夢みたいだ………
ほんとに、土方さんがいる…
土方さん、約束を守ってくれたんだ!
「約束、守ってくれたんですね……」
「はぁ?……おめぇ、まさか俺のこと信じてなかったってのか?」
「う…それは」
「ったくおめぇって奴は………いいか?俺はな、一度交わした約束は絶対に違えない男なんだよ」
嬉しくて、目の前の現実が信じられなくて、ぼけーっと突っ立っていたら、キャビンアテンダントさんに、早く席につけと急かされた。
慌てて土方さんを跨いで窓際の席に収まると、こてんと土方さんの肩に頭を預けた。
「もう、ずっと一緒ですよね?」
「ああ、一生離さないぜ」
こうして、僕らは空へと旅立った。
最後までハッピーエンドにするかしないか迷った挙げ句、ページで区切って両方作りました(笑)
にしても二人には何があったんでしょう。
不倫関係?土方さんには家庭があっての駆け落ちとかですかね。
20110602
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