十万打フリリク | ナノ


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目が覚めた。

ぼーっと目の前の景色を見回すと、いつもと何も変わらない寝室がそこにはあった。

しばらくぼーっとしてから、ハッとして自分の身体を確かめる。


「にゃ………」


いつも通り、毛むくじゃらの僕の身体。

喉を震わせても、出るのは猫の鳴き声ばかり。


「にゃお………」


どうやらさっきのは夢だったらしい。

夢は深層心理を反映するとか言うけど、僕って人間になりたかったのかな。

でもあんな中途半端な半獣は嫌だな。


僕は前足で軽く毛繕いをしてから、横で眠る土方さんに擦り寄った。

投げ出された腕に顔を擦り付けると、土方さんが小さく唸る。

寝返りを打って仰向けになった土方さんのお腹に乗り上げると、僕はその上で丸くなった。


「そうじ…………」


名前を呼ばれて、びくりと耳を動かす。

足の間からちらりと土方さんを見やれば、彼は眠たそうに瞬きを繰り返しながら、居場所を確かめるように、僕の背中に手を置いた。


「もう少し…寝かせてくれ……」


僕知ってるよ。

ここのところ、土方さんは毎日帰宅するのも寝るのも遅くて、猫から見ても疲れ切っていた。

いいよ、僕今日は構ってもらえなくても、土方さんの横で眠っていられればそれでいいよ。


「そこが気に入ったのかよ………」


掠れた声で、土方さんが言う。


「みゃ」


尻尾でタシタシと腹部を叩けば、分かった分かったと土方さんは目を閉じた。

そのまま再び寝入ってしまった土方さんを、僕はじっと見つめる。

背中に置かれた手は暖かくて、身体に伝う鼓動は力強くて、どこまでも穏やかな気分になった。

もしこの世界に人間の総司がいたら、僕は用済みになってしまうかもしれない。

だけど、土方さんが幸せになれるなら、それでもいいと思えてくる。

それに今は、こうして土方さんのお腹を占領することだってできるから、やっぱり僕は幸せものだ。

許されてる存在なんだろうな。

結局土方さんには"大好き"って伝えられなかったわけだけど、いつか伝えられる日がくればいいと僕は思った。



2012.11.07


拍手お礼文の子猫パロ続編、ということで書かせていただきました。

最近では左之さんや新八さんに出演してもらったりしてましたので、今回は総司に子供になってもらいました。

まさかの夢オチですが(笑)
キャラ崩壊ごめんなさい…。

受けとってくださると嬉しいです。
この度はリクエストどうもありがとうございました!




*maetop|―




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