貴重な休日。
というのも、土方さんと二人でいちゃいちゃできる唯一の日だから。
つけっぱなしのテレビはせっせとニュースを報道していて、キッチンからは胃が痛くなりそうなコーヒーの香りが漂ってくる。
「総司は?」
「いちごおれ」
ソファに転がったままうとうとしながら答えると、冷蔵庫を開ける音が聞こえた。
「…ない」
「じゃあばななおれ」
「ねぇよ」
「じゃあみるくおれ」
「そりゃただの牛乳じゃねぇか……カフェオレでいいか?」
「やだ」
「"オレ"なら何だっていいだろ」
「じゃあ砂糖は2杯でカフェ対レを3対7にしてください」
「それじゃどっちかっつーと、牛乳味のコーヒーだな」
やれやれ、と土方さんが何やらがちゃがちゃやり始める。
それを遠くに聞きながら、僕は必死に睡魔と格闘した。
昨日は何もいたさず割と早めに寝たはずなんだけど、ものすごく眠い。
でもダメ。土方さんと過ごせる貴重な1日なんだから寝てる場合なんかじゃない。
起きて…
ずっと土方さんを見てなきゃ………
ダメ……なのに…
「ほら」
うっすらと目を開けると、土方さんがカフェオレを差し出して見下ろしていた。
「ん」
受け取ろうと手を伸ばしたら、その手をぐいっと引かれた。
「キスしていいか?」
「へ?」
いつも何も言わずに強引に奪っていくくせに、どうしたっていうんだろ。
拒む理由もないし、頷こうとしたら既に唇は塞がれていた。
なんだ、結局僕の了承なんてどうだっていいんじゃないか。
別に深いわけじゃないのにしつこいほど長いそれは、しっとりと唇を押し包み、甘く溶けるようで……と、とにかく、僕を酸欠にさせるには充分だった。
どんどんと土方さんの胸を叩くと、ちゅく、と音を立てて濡れた唇が離れていく。
「は……どうしたんですか?わざわざキスしていいか?なんて」
「たまにはいいだろ?目覚めのキスも」
「はぁ?……もしかして眠り姫のことが言いたいんですか?」
「だから、たまにはいいだろ?」
そう言って、キスをもう一つ。
「…別に、いつもと変わりませんよ?」
いつも通り、お上手で痺れるようなキスですけど?
「でも目は覚めただろ?」
「覚めましたよ悔しいけど」
抱き締められたまま土方さんを見ると、爽やかな笑みを湛えていた。
嫌みな雰囲気はどこにもない。
……きもちわる。
「土方さん、本当に土方さんですか?」
「は?」
「実は双子の片割れの土方歳二ですみたいな」
「ぶっ……何だよそりゃあ」
土方さんは可笑しそうに目を細めて笑った。
「うーん…違うのか…………」
「何がそんなに腑に落ちねえんだ?」
「土方さんが優しすぎる」
「はぁ?……優しい俺は嫌いか?」
「いや……そんなことも…なくなくない…かな」
うん。そんなこともない。
ソファに深く腰掛けて、僕はバレないようにそっと笑みを零した。
「今日は何しますか?」
「そうだな……昼間は総司のしたいこと」
「……夜は?」
「俺のしたいこと」
「…僕がしたいことだって、土方さんがしたいことと対して変わりませんよ」
「それ本気か?」
土方さんが勢いよく此方を向く。
「………多分」
「お前の腰が保たねえよ。夜だけにしとけ」
「強がっちゃって。ほんとは今すぐ抱きたいくせに」
「じゃあヤるか?」
「……だからなんでいちいち了解を得ようとするんですか!」
「俺だって強姦はしたくないからな」
「そうなんですか!…へぇびっくりだな。土方さんにも良心があるなんて」
こんな挑発的ないい方をしても、土方さんは怒らなかった。
「…で、どうなんだ。ヤるのか?」
「そうですね…僕のことがちゃんと好きなら、どうぞご自由に?」
土方さんは僕を一瞥する。
それから深々とため息を吐いて、手にしていたコーヒーのマグカップをテーブルに置いた。
「…好きに決まってんだろうが」
バカ総司、と動いた唇を見つめる。
ゆっくりとソファに押し倒され、ちゅっちゅっと顔中に降ってくるキスに応えながら、なんて幸せな休日だろうと僕は思った。
江戸さまお誕生日おめでとうございます!ということで勝手に書きました。
本日05/23はキス&ブラの日なので、ブラは無理だしキスの話にしてみました。
粗品で申し訳ないのですが、江戸さま良かったら受け取ってください^^
よい一年になりますように!
20130523
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