「土方さん、まだ時間掛かりそう・・・?」
ひょっこりと書斎へ顔を出した一緒に暮らしている可愛い恋人がおずおすと聞いてくる。
首を傾げると高めの位置でポニーテールに纏めて白いシュシュで飾られたふわふわ柔らかな栗毛がさらりと流れる。
今日は土曜日、近藤の計らいで学校の休みの日は出勤せずに家で仕事をさせて貰っているが、やらなくてはいけない仕事は山ほどある。
総司も出勤しないのが自分の為だというのを判っているので、土方が仕事をしている時は基本的には邪魔をして来ない。
最も、放って置き過ぎたら邪魔してくるのだが。
「ん?どうした?」
時計を見ると17時、そろそろ一旦切りをつけないといけない時間ではある。
「うん、そろそろご飯の準備したいなぁって思って」
ひょこひょこと近寄ってきそうなのを制して土方が書斎から出ると、嬉しそうに擦り寄ってくる総司の髪を撫でてやる。
換気しているとは言え、書斎では煙草を吸っているので、喘息持ちで体の弱い総司はあまり入れたくないのだ。
「何作るかは決めたのか?」
細い身体を抱き上げ、リビングのソファーで向かい合う。
「今日はね、ハンバーグ食べたいなぁ〜って思って」
「ハンバーグ、な。後サラダとスープってとこか」
「うんスープはコンソメ」
こくり、と頷いて土方の胸に顔を埋めて総司は小さく笑う。
ハンバーグなら、もう少しゆっくりとこうしていても大丈夫だ。
「ふふ、煙草の臭い」
煙草の臭いは苦手で、臭いだけで咳き込んでいた総司が土方の煙草の臭いだけは平気になったのはもう随分と前の事だ。
甘えてくる総司を抱きしめてやり、ふと気になった。
「総司、お前出掛けたのか?」
何時もの部屋着ではなく、7部丈のパンツにキャミソールと長袖のカーディガンと出かける時によくしているような格好をしている。
「もぅ〜!やっぱり聞いてなかったんだ!昨日千鶴ちゃんとお買物に行くって言ったでしょ」
膨れて言う総司の髪を撫でてやる。
「悪い、疲れてねぇか?昼は暑かっただろ?」
「うん、大丈夫。遠出もしてないし、出掛けたって言ってもお昼からちょっとだけだし」
「そうか」
「千鶴ちゃんね、膝丈の涼しそうな可愛いワンピース着てたんだよ」
「・・・・そう、か・・・」
総司の私服は膝より長いパンツが殆どで、他はショートパンツやミニスカート、マキシ丈のスカートやワンピースも持っているが、膝丈の物は持っていない。
最も総司には、膝丈よりもマキシ丈やミニの方が似合っているとは思うのだが。
今日も7部丈のパンツから覗く白く細い足が眩しい。
「うん・・・可愛かったなぁ」
カーディガンの上から左の二の腕を撫でるように触りながら言う総司を抱きしめてやる。
総司の左二の腕と、左の膝には数年前に事故で負った消えない傷跡がある。
その所為で総司は夏でも傷が見えるような袖のない服や膝の見えるような服を着たがらない。
勿論土方は傷があろうが総司は総司だと思っているので気にしていないが、サバサバしてても、女の子な総司にとっては見せたくない物なんだろう。
流石に土方に隠そうとはしないが、真夏でない限りは部屋着も傷が隠れるような服を着ている。
制服の時も、長袖のブラウスと短いスカートにオーバーニーソックスは定番で、気温によっては袖を少し捲っていたりはしているが、傷が見えないように気を使っているようだ。
「いくらでも好きな服買ってやるし、俺の前で隠さなくてもかまわねぇだろ?」
最も、土方だけでなく、斎藤や藤堂、原田、永倉、山崎、山南と何時ものメンバーも知っているし、隠さなくても良いと総司に言ってはいるが、やはり気にするのは女だからだろう。
「ごめんなさい、大丈夫。ちょっと千鶴ちゃんが羨ましかっただけ」
ぐりぐりと頭を土方の胸に押し付けて甘えてくる総司を抱きしめ、額に一つ口付けて肩をぽんぽん、と叩いてやる。
「さぁ、そろそろ飯の支度するか、出掛けてたなら疲れただろう?」
膝の上からソファーへ下ろし立ち上がろうとする土方の腕を総司が慌てて掴む。
「大丈夫、僕が作るから、土方さんは待ってて?土方さんはお仕事してたんだから」
ね?と首を傾げる総司の髪を撫でてやり、土方も一緒に立ち上がる。
「じゃぁ一緒に作るか」
「え・・・?うん!」
嬉しそうに笑う総司に笑顔を返し一緒にキッチンに立つ。
料理は出来る総司だが、やはり包丁や油は心配だし、何より体も弱く、事故の所為で足も悪いので、調理中に倒れでもしたら大変だからと、誰もいない時にキッチンに立つ事は禁止しているのだ。
始めは不満を言っていた総司だが、料理中に貧血を起して倒れてからは文句を言う事もなくなり、今日のように休日は夕方になれば書斎に土方を呼びに来るように、平日は大人しく土方が帰ってくるのを待つようになったのだ。
二人仲良く夕食を作り、仲良く食べる。
テーブルの上には、予定通りハンバーグとサラダとコンソメスープ。
土方の半分ほどの量の食事を食べながら総司は、嬉しそうに今日あったことを話してくれる。
にこにこと今日行ったカフェのケーキが美味しかったからまた行きたいだとか、千鶴ちゃんの買ったあれが可愛かっただとか、他愛のない話をする総司に相槌を打ち、総司が行きたい、欲しい、可愛いと言った物は忘れないように心に留めておく。
こういう会話ではあれが可愛くっていいなって思った、だとか今度サンダルが欲しい、だとか言うくせにいざ買ってやると買物に連れて行くと遠慮しているのか、直に要らないと言う総司に好きなものを買ってやるには小さな会話で出た事を覚えててやるのが一番の早道なのだ。
「総司、明日出掛けるか?」
3分の2程食べ進めて食べるスピードが落ちてしまっている総司に声を掛ける。
「え??」
「今日出掛けて疲れてんなら今度にしても構わねぇが」
「ううん、行きたい!・・・でも、土方さんお仕事良いの?」
「あぁ、大丈夫だ、行きたい所明日の朝までに考えておけよ」
『何処でもいい』と言うだろう総司の為に土方も考えなければならないだろうが、出来る限り希望を叶えてやりたくて、いつも返事は朝にしか聞かないのを判っているからか、可愛く首を傾げて頷く総司の頭を撫でてやり、早く食っちまえと促す。
土方にしてみれば、それだけで本当に大丈夫なのかと思うような量の食事を何とか食べ切った総司が食器を洗おうとするのを明日出掛けたいのなら休んどけ、と制しソファーに座らせて食器を洗い、コーヒーと総司用の甘いミルクティを持ってソファーに並んで座る。
嬉しそうに瞳を細め、擦り寄ってくる細い身体を膝に乗せ、抱き締めてやり、暫く一緒にテレビを見ながら多和いのない話に花を咲かせる。
再び書斎に篭った土方の元に寝る準備を整えて日付の変わる前に顔を出した総司を、何時ものよう寝室へ連れて行ってやり、寝かせてお休みのキスをしてやる。
余程忙しい時でない限りは習慣になっているそれらは、何でもない小さな事だが、それを幸せと思える事が幸せなんだろう。
子供の頃から体も弱く、入退院を繰り返していた総司が事故に合い、意識不明の重体に陥り、それこそ心肺停止にまで陥り今度こそダメだと思われたのにも拘らず、多少の障害が残った物の今も目の前で元気に過ごせている事は奇跡のようだと思う。
「お休み総司、良い夢見ろよ」
擦り寄って甘えてくる総司の髪を撫でてやり、この小さな幸せがずっと続くように心から願う土方だった。
なななんと、企画主催のお礼にと奏さんからいただいてしまいました!!!!んぎゃああああああわたしがにょた好きだとご存知でこんなに素敵なものを…!!!
ポニテで清楚な総司ちゃんが目に浮かぶようです。ビッチ総司ちゃんも好きですが、こういう土方さんに守られてる感じの、ちょっと重い過去を背負ってる総司ちゃんも大好きです!!!!!!!!!!!!
盛大に転げ回って喜んでしまいました!
わたしはほぼ何もしていないというか、素敵な参加者の皆様のおかげで成り立った企画なのに…
奏さん本当にありがとうございました!!!!!!!!!!!!!!
20130627
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