宝物 | ナノ


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幕末の動乱から約150年近くの時を経て、生まれ変わった。
転生したときから、昔の記憶をもって生まれてやり場のない思いに苛まれていた俺は大層かわいげのないガキだったろう。そんな俺を大事に育て慈しんでくれた両親や、無愛想な態度だったのにも関わらず離れず側にいてくれた友人に恵まれながら、何とか今まで生きてきた。

昔の仲間は生まれ変わっているんじゃねえかと自分の出来る範囲で探してみたが、その痕跡さえ見つからなかった。昔の仲間の中でも総司に・・・1番会いたかった。
前世ではついに総司に思いを伝えられず、病で帰らぬ人となり永遠の別離になってしまった。自分の気持ちに蓋をして、総司との別れの挨拶をしたとき後悔をした。あの時、こうしていればもっと違った未来があったんじゃないかって・・・。

今年で俺も28歳で周りからは早く身を固めろと見合い話しが沢山くるが、全部断っていた。俺の心を締めているのは、総司のことだけだった。仕事に打ち込むことでその苦しみを誤魔化してきた。金曜日になりやっと土日の休み目前だ。

ようやく仕事が終わり、自宅へ帰るため歩いていると、いきなりコートを引っ張られた。
「なっ!なにしやが・・・」
疲れていたのもあり、失礼なことをした相手の顔をみてやろうと怒鳴りながら振り向くと、見知った顔があり、固まってしまった。

「・・・僕のこと・・・覚えています・・・か?」
捨てられた子犬のような眼差しをしながら俺のコートを引っ張っていたのは、探してやまない総司だった。

「・・・っ!総司、勿論だっ!」
人の目を気にせず総司を抱きしめ、その首筋に顔を埋めた。泣きそうだった。

「ちょ、ここ道ばた!・・・いい加減離してください!」
感動の再会に総司も俺にしがみついていたが、正気に返ったらしく身じろぎをし始めたから、名残惜しいとは思いつつ離してやった。

「ふふ。本当に土方さんだ・・・。人混みのなかから貴方の後ろ姿をみて、絶対貴方だと思ったんだ。ずっと探していたんですよ?」と泣きそうになりながら笑う。

「俺だって、お前のことを・・・ずっと探していたんだ」
俺も同じように泣きそうに笑った。こんなに感情が動いたのは今生で初めてだった。

総司も俺と同じように記憶を持って生まれ変わっていて、ずっと新撰組の仲間と・・・俺のことを探していた。総司も出張でたまたまこの駅を使ったときに俺を見つけたらしい。
お互い休みだったし、折角出会えた総司を帰したくなかった。総司も同じ気持ちだったらしく、俺の家にいき食事をしながら語り明かそうと誘ったら、嬉しそうに頷いた。

総司は酒には弱くねえが、飲み過ぎると、普段と違った意味で可愛くなる。
俺の家に泊まっていってほしくて、つい酒を沢山すすめてしまった。

総司は酔いがまわったようで、言葉使いが変わってきた。普段は、悪戯をしたり、可愛くねえことばかり言うが、そんな天の邪鬼なところが・・・たまらなく愛おしい。前世からこいつを愛していたんだ。動乱の世で色恋に現を抜かしている場合じゃあなく、あいつに気持ちを伝えることが出来ず・・・恋仲になることは叶わなかった。労咳で苦しみ寂しがるあいつの側についてやることも出来なかった。だから、俺は誓った。もし、もし生まれ変わってまたあいつと巡り会えれば、今度こそ俺はあいつに・・・。

誰よりも愛おしい総司とまた同じ時を過ごせる幸せをかみしめながら邂逅に浸っていると総司が突然立ち上がった。
「僕・・・ねむ・・くなったので・・・部屋にかえりましゅ・・」と陽気に敬礼して玄関へ向かい立ち上がる。

ま、待て!!俺はもうお前と手放す気はないんだ!俺の半身をもがれてたまるかよ!!例え総司自身であっても、引き裂くもんは許さねえ!

ふらつきながら、玄関へ歩く総司の腰を後ろから強く引き寄せる。「誰が帰すかよ・・・」と耳元で囁き、総司の顎を掴みあげ口づけをした。

「ん…っ!?あ、ひ…じかた・・・しゃん、なんで…??」と酔いのせいで潤んだ瞳と妖艶な表情で見つめてくる総司に俺の理性は限界だった。抱き上げ寝室のベッドへ押し倒した。

「俺は前世からお前が好きだった…!今生でお前と会えたとき運命だと思った!俺はまたお前と巡り会えたら今度こそお前の側にいると誓ったんだ。俺の全てでお前を大事にすると誓う…だから、俺のものになれ。」と、総司を熱く見つめながら囁きシャツのボタンを外していく。

自分の置かれた状況に焦り、俺の手を力の入らない手で押さえながら「ひじかた…しゃん、まって…僕・・・ぁっ」と弱々しく抵抗する。そんなとき、胸の飾りに唇を落とすと甘い声があがった。

「俺のものになれよっ・・・頼むから」と何かを訴えようとする総司の口から拒絶の言葉を聞きたくなくて、口づけでふさぐ。
俺は総司の性感帯をみつけるべく愛撫をしていき、何度も愛していると囁いた。最初は抵抗していた総司も徐々に俺の愛撫に応えるようになってきた。

激しく抱き合い、何度も何度も総司を求めた。
−情交に耐えきれず気を失った総司を抱きしめながら、俺も眠りについた。生まれ変わってから、こんなにも満たされ凪いだ気持ちで眠りにつけるのは初めてだった。

深い眠りに落ちているとき、突如総司が俺の顔面に枕をたたきつけられた。
「土方さんの馬鹿―!!!!なんで、なんで・・・っ」と今にも泣きそうに顔を歪めながら怒鳴りつけてくる。

寝起きにこの一発はきくなぁ・・・。しかも手加減しちゃいねぇ・・。

「俺は謝らねえぞ。自分の気持ちにもう嘘はつかない・・・そう決めたんだ。例えお前が俺を嫌いでも俺はもうお前を離さ・・・」と素面の総司に改めて告白をしている途中で、総司が近くにあったクッションを勢いよく投げつけてきた。

「ぼ、僕だってずっと土方さん・・・のこと好きだったのに!!僕が酔ってるときに・・ひどいよ!!ぼく、酔っていて記憶がな・・いのに・・・っ!ひじかたさんとのはじめての・・・だった・・・のに」と綺麗な翡翠の瞳から涙をこぼす。

「っ!!お前も俺のことを・・・っ」
思いがけぬ総司の告白に柄にもなく頬を赤らめて呆然としてしまった。

そんな俺の様子に総司は更に怒ったようで、眉をつり上げる。
「僕、シャワーあびてきます・・・っ!しばらく僕に近寄らないで・・・ぁっ!」
立ち上がった総司の太股を昨日の残滓が流れ落ち、その感覚に身をすくめ身体を震わして、また泣きそうになっている。

「総司すまなかった・・・俺はお前の気持ちに気付いてやれねぇで・・・。今度は俺という存在をお前に刻み込む・・・もう、忘れさせてやらねえよ。」
総司を抱き寄せ、昨日のように押し倒した。

「え・・・?や・・・今日は無理・・・僕もう腰・・・」
顔を赤らめた後、真っ青になった瞬間、もの凄い勢いで俺から逃れようとする。

・・・面白くねえ。

「大丈夫だ。俺も、お前も明日仕事休みだろ・・・?お前が足腰たたなくなっても、風呂だって、飯だって全部やってやる。だからいい加減観念しやがれ。」
腰にくる低く甘い声で囁いて言いくるめようと躍起になると、総司が観念したようにおずおずと背中に腕を回してきた。

そこから、お互い出すもんが出なくなるくらい何回も抱き合った。

目が覚めた総司は、結果・・・足腰立たなくなるくらいか身じろぎさえ辛いくらいになっていた。

「・・・・・・土方さんの馬鹿!!!もうしばらく僕に触れないでください!!」
涙目で怒っても可愛いだけだ、総司。こんな何気ない会話でも嬉しい。当たり前のようにいた存在を失ったあの虚無感からようやく解放されたような気がした。

今生でお前と出会えて今度こそ共に歩めることの僥倖に俺は改めて感謝をした。

そんな俺に1ヶ月間の禁欲を強いた総司を抱き潰してしまったのは言うまでもない。

★幕★




いつもツイッターで仲良くしていただいている万葉さんがくださいました!

特に話したわけでもないのに、わたしの大好きな転生ネタで書いてくださった万葉さん!素敵すぎます……!!ずっと探してたとか、ツボすぎて辛いです(笑)

しかも、酔っ払った総司の件は、桜の宴で出た三木さんと森久保さんが飲んでいた時のエピソードから入れてくださったそうです。

『お前、いきなり「僕眠いので部屋に帰ります」って言いながら敬礼して戻っていったの覚えているか?』っていう会話があったらしく。

萌え要素たくさんの素敵なお話を、本当にどうもありがとうございました…!




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