※「
fake love」の救済話です。
「総司、一体どうしたってんだよ?」
泣きだしてしまった僕の背中を土方さんはずっと優しく摩ってくれていた。ようやく落ち着き始めたところで尋ねられた。
もうダメなのかもしれない…僕も、土方さんも…。
土方さんの優しい声色に導かれるように僕は口を開いた。
「……僕、見ちゃったんです」
「見たって…何をだ?」
「土方さんの手帳…」
土方さんがどんな顔をしてるのか知るのが怖くて僕はずっとうつむいていた。
勝手に見たこと怒るかな…?
それとも遊びだったんだって笑うかな?
ところが、土方さんは心底不思議そうに聞いてきた。
「俺の手帳を見たからって、どうしたってんだ?」
予想外の言葉を耳にして僕はカッとなって土方さんに言いつのった。
「だから、全部ですよ全部!!全部ウソだったんでしょう!?」
「ぁあ何だよウソって!何言ってんだ?」
「っっ…!? だって土方さん、結婚してるんでしょ!?なのに僕のこと愛してるだなんてウソついて!!遊びだったんなら最初から言ってくださいよ!」
怒りたいのか泣きたいのかよく分からなかった。
この人が本当は優しい人だって僕は知ってるから…
一気に捲し立てて息が荒くなる。呼吸を整えながら土方さんを見ると、訝しげな表情で僕を見つめていた。
「……結婚?俺がか?俺は結婚なんぞしてねぇぞ」
「……まだ誤魔化すつもりですか?手帳に“結婚記念日”ってあったんですよ」
僕がそう言った途端土方さんは驚いた顔になったけれど、すぐさま頬を染め照れ臭そうな表情を浮かべた。
「おまえ、あれ見たのか……。」
「見ました。だから聞いてるんですよ。」
照れながらも幸せそうな土方さんの表情を見て、僕はもう終わりなんだなと悟った。
今は何も聞きたくない…
言い訳も謝罪も要らない…
もういい…帰ろう……
「…僕、帰りま「ありゃあな、総司と俺の結婚記念日だよ。」
・・・・・・は?
…何言ってんだこの人。
土方さんと結婚なんてしてないし。いやいや、まして男同士は結婚できないし。
僕は唖然として土方さんを見つめることしかできなかった。
「なんだか恥ずかしいんだが、おまえ笑うなよ?」
土方さんは盛大に照れながらも話し始めた。
「おまえが思っているよりもずっと前から、俺はおまえのことが気になっていてな。部署も違ぇから滅多に会うこともねぇ。だからおまえの姿を見るだけで嬉しかったんだ。だがあの日…」
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