宝物 | ナノ


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ある日の昼下がり。

総司が自室を出ると、お茶の入った湯飲みをお盆に乗せた千鶴と出くわした。



「…あ、千鶴ちゃん。そのお茶、何処に持って行くのかな?」


「…沖田さん!これは、近藤さんのお部屋でお話されている、土方さん達に…と思いまして。」



総司が尋ねると、千鶴がにこにこと穏やかな笑顔で答える。



(近藤さんと土方さん…)



大好きな二人の名前が出た事に反応した総司も、にこにこと笑いながら局長室へと同行を申し出る。


当然千鶴には断る理由も無く、何より機嫌が良さそうな総司の様子に、再び笑顔で頷く。



「それじゃ、行こうか。」


「はい!」



局長室の前に辿り着くまで、巡察中に見付けた甘味処の話や、幹部隊士の話で二人は盛り上がる。


そしてやって来た局長室。

土方の部屋に入る時は、ろくに入室許可を尋ね無い総司も、流石に相手が近藤だとそんな事はしない。


千鶴が廊下に膝を着いて屈みながらお盆を置き、名乗ろうとした、その時。



「総司は、最近大人になったなぁ…。そう思わないか、歳?」


「…あぁ、そうだな。剣技にキレが増したみてぇだし…、漸く安定して来て、悪かねぇと思うぜ。」



(…え?…僕…?)


(今、沖田さんの名が…)



不意に聞こえた自分の名前に、総司はピタリと動きを止め、千鶴も驚いて瞬きを繰り返す。


やがて入室するか否かを問う千鶴の視線に気付いて、身振りで暫くこのまま、と伝える。


それを了承した千鶴も小さく頷くと、室内の二人に悪いと思いつつ静かに廊下に正座した。



廊下で気配を消す二人に構わず、近藤と土方の会話は続いて行く。




―|toptsugi#




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