宝物 | ナノ


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貴方に依存





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ある日、いつものようにノックもせずに準備室に入ってきて

デスクに向かい座っている自分の後ろに椅子を持ってきてそれに座れば
俺の髪で遊びだした問題児の沖田総司。


「おい、人の髪で遊ぶな」

「だったら構ってくださいよ」

「今は手が離せねぇから無理だ」

「じゃあ髪で遊ばれても仕方ないですね」


今さっきからこの会話の繰り返しで
何回ため息をこぼしたかもわからない


昨日は人の上着で遊び
一昨日は人の携帯で遊び

この前から悪戯ばかりしてくる総司にいい加減呆れるを通り越して怒りたくなる

体育祭が近く
いつもより仕事がある俺は総司の相手をしてやれない

それに拗ねて前々から悪戯をしているんだろうが…


「総司、人の髪で遊ぶんじゃねぇ」

「…………」


少し強く言ってみるものの
総司は髪で遊ぶ手を止める様子はない

その総司の様子に堪忍袋の緒が切れ


「総司、いい加減にしろよ?俺で遊ぶなら邪魔だから出てけ!」

総司に振り返り
思わず叫んで睨みながらそう言ってしまった


「…っ…、」

総司の顔が悲しく歪んだ途端にしまった、と思うがもう遅い


「っ、もういい!土方さんなんて嫌い!」

「っ、総司」

「このわからず屋!そんなに仕事が好きなら仕事と付き合えばいいじゃないですか!!」

そんな訳の解らないことを言いながら荒々しく古典準備室を出ていく

総司の拗ね方が可愛いと思うが
今はそんなことを思っている時ではない

「…はぁ……」

俺は今日何回目か解らないため息をついた。






◇◇◇◇◇






「土方さんの馬鹿!僕より仕事が好きなんだっ」

仕事の邪魔になるのは解ってる
体育祭が近いから仕事がいっぱいあるのも解る

でも、僕は彼処に土方さんに会いに来てるのに
土方さんが僕を見てくれなきゃ
構ってくれなきゃ
意味が無い

僕だって全部解ってる


だけど、土方さんが好きだから
大好きで堪らないから
解ってても勝手に体が動くんだ

だから、仕事にまで嫉妬しちゃう

「もういいっ、帰ってやる!」

僕はそんなことを言いながらまだ休み時間の間に教室から鞄を取り
昇降口に向かおうとする

すると、


『沖田総司、今すぐ古典準備室に来い』


放送で土方さんの声が聞こえた

本当なら行きたくない

でも、土方さんに会いたい

そう思うと体が言うことを訊かない

いつの間にか古典準備室に来てしまう


「…っ……」

僕は息を吐き落ち着き
いつもの自分でいるように頑張る

扉を開け

「なんの用です──…っ?!」


いつものように平然としようとするが

扉を開けた瞬間
目の前に土方さんがいて
思わずぶつかり
僕が古典準備室の中に入れば
土方さんは扉と鍵を閉める

「そんなとこにいたら危ないじゃないですか!」

そう叫び土方さんを見上げれば
強く、優しく抱き締められる

「…っ…な…にっ?」

久しぶりの土方さんの匂いと感触に戸惑い胸が高鳴る
僕達は何度も体を重ねているが
抱き締められるだけでこんなに戸惑い胸が高鳴るのは初めてだ。

思わず、背中に手を回しそうになる

だが、我慢する

「今更、なんなんですかっ?」

「………。」

「僕より仕事が大事なんでしょっ?」

「………。」

「それならっ…仕事と一緒に居れば──…っ…」

土方さんの腕から逃れようと体を捩っていたが
不意に視界に入った土方さんのデスクに吃驚して言葉が続かなくなる


「…な…んで…?」

「なにがだ、」

「なんでっ、あんなことしてるんですかっ?」

「他のことを考えないで総司のことだけ考えたいからだ」

「……っ……、」

嬉しくて堪らない
涙が溢れて、視界が歪む

嬉しくて、頬が熱くなって胸が高鳴って


「土方さんっ…土方さん!」

「ほら、泣くんじゃねぇよ」

「…だって…っ、」

「なんだよ、嬉しくねぇのか?」

「う、嬉しいっ…」

土方さんの言葉に首をぶんぶんと横に振り
涙をぽろぽろと流しながら土方さんを見上げ見つめる

「泣くなって…、」

「無理ですっ…涙が止まらな、っ…」

「総司…、」

「ん…、」

土方さんが僕の名前を呼びゆっくりと唇を重ねる

凄く安心する

「っ…ん、」

土方さんからの角度を変え啄むような口付けに酔いしれ
土方さんの首に腕を回す

もっと、もっと

深く、激しくして欲しい

「んっ…はぁ…っ、」

そう思った途端に唇を離される

嫌だ…もっとして欲しいのにっ

「っんな目すんじゃねぇよ」
「だって、もっと欲しいもん」

「今のはお前を泣き止ます為にしたんだよ、」

「む…、じゃあ今から頑張って泣きます!」

「ぶはっ…くくっ…」

「笑わないでくださいよ!」

「普通にねだればいいだろ?」

「っ…、」

「ほら、言えよ総司」

「っ〜〜……もっと、…キスして?」

「良く出来ました」

土方さんはそう言い満足そうに微笑み
僕の腰を抱き寄せれば
深く口付けた。

僕は土方さんからの口付けを受け入れながら
土方さんの肩越しに見える

デスクの上の真っ暗な画面のパソコンと積み上げられた書類に
勝ち誇った笑みを浮かべ


土方さんに酔いしれた。




end



紫葵様が書いてくださいました〜!

土方さんにちょっかい出す総司くん、可愛すぎです。

髪の毛いじらせてる土方さん、いじっちゃう総司、やっぱり土沖って素敵!

今から頑張って泣きますとか、総司くんお持ち帰りしますわ!

素敵な小説をありがとうございました!




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