切っ掛けは、思い出せない程の本当に些細な事。
それが積もり積もって、お互いに大爆発。
「もう、頭きた!何で、そんな言い方しか出来ないんですか、土方さんは!」
「煩ぇ!俺をこんな口調にさせてんのはテメェだろうが、総司!」
所謂此れが倦怠期、此れが内輪揉めなんだろう。
互いに強情な二人は、生憎一度火が点くと止められないのは、昔も今も変わらない。
「ばかばか!土方さんの、ばかぁー!分からず屋!」
「黙れ、ガキ!相変わらず、口だけは一人前だな!」
土方のマンションの広いリビングで、二人は互いを睨み付けながら罵り合う。
かれこれ数十分こんな様子を続けている為に、息も上がっているがお構い無し。
「土方さんの鬼!タラシ!俳句下手くそ!土方さんなんて、大っ嫌いだぁー!」
拳を握り締めて叫んだ総司の言葉にピクリと反応した土方は、ついに堪忍袋の緒が切れたのか。
「…っ、こっ…の野郎!」
眼にも止まらぬ速さで右手を振り上げ、そのまま総司の頬に平手打ちをした。
……パシン…!
すると一気に部屋は静まり返り、二人の身体も硬直する。
総司は、何が起きたのか理解するまで暫くボンヤリ土方を見詰めていた。
相手の手が平手打ちの形で停止していて、頬がジンジン痛みだして、漸く我に返る。
「……っ、ぶった…!土方さんが…っ、僕の…ほっぺ…っ!」
「……っ、総司…」
総司の瞳からは、ぶわっと涙が溢れて、痛む頬に手を添えて立ち尽くす。
その様子に思わず土方が声を掛けると、再び身体を強張らせる総司。
一瞬かち合った視線は直ぐに外されて、足早に総司は部屋から走り去った。
静かなリビングには、平手打ちをした己の手を無言で見詰める土方だけが、残された。
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