―そしてクリスマス当日、ここ数年クリスマス前後に揃うことの少なかった兄弟が今年はみんな予定も入らず、夕方から兄弟だけでパーティーをする。
大きなクリスマスツリーの飾ってあるリビングに集まった兄弟が島田の用意した数々の料理を食べ、一頻り盛り上がり・・・普段と大してやっていることは変わらないのだが。
島田特製のクリスマスケーキを切り分けた所で歳三が大きめな紙袋を3つ出してきた。
「一、平助、総司クリスマスプレゼントだ」
流石に左之助と新八にはもう用意していない。
「トシ兄!ありがとう!開けて良い?」
「兄さん有り難う御座います」
「歳兄有り難う」
三人とも嬉しそうに受け取り、早速と言うように平助が袋を開ける。
「おぉ!コートじゃん!」
平助の空けた袋の中には茶色のダッフルコート。
平助に釣られるかのように開けた一の袋の中には紺色の、総司の物は白の同じデザインのコートだった。
「わぁ、凄く肌触りいいね、有り難う歳兄!」
嬉しそうな総司に歳三も嬉しそうだ。
「お揃いの服なんて久しぶりだね!」
子供の頃は三人お揃いの服をよく着ていたが、小学校高学年辺りからは殆どなくなっていた。
大切そうにコートを胸に抱き、にこにこ嬉しそうに笑う総司に歳三も嬉しそうだ。
「俺からはこれだ」
左之助からのプレゼントは寝込んでいることの多い総司の為かお揃いのパジャマと暖かそうな部屋着とルームシューズ。
更に総司の分にだけふんわり素材のネコ耳の付いたケープ付きだ。
「うわ〜、ネコさんだ〜!可愛い!」
子供の頃は兎も角、今は着ぐるみ系の服を着ることのなくなった一と平助とは違い、総司は未だに着ぐるみ系の可愛い部屋着を好んで着ているのだ。
嬉しそうに微笑む総司は実年齢よりもかなり幼く見えてとても可愛い。
「チビ共、オレからはこれだ」
新八からのミディアム丈のレースアップのブーツも三人色違いだ。
一は黒、平助はキャメル、総司はレッドブラウン。
「わぁ〜!ブーツだ!」
あまり外に出ない総司は靴もあまり持っておらず、ブーツも持っていなかったので嬉しそうだ。
「兄さん、総司俺からはこれを」
一からは、歳三には紫色、左之助にはワインレッド、新八には深緑、平助には黄色、総司には若草色のカシミアのマフラー。
「オレはこれ!」
平助からは一と同じ色の手袋。――因みに一には青だ。
この間二人で出かけたのはこれを買いに行っていたらしい。
今回のプレゼントは相談して『お揃いの物』にした兄たちなのだが、総司はそれを知らない。
皆から貰ったプレゼントを両手に抱え、にこにこ笑う総司はとてつもなく可愛い。
「ね、どうかな??」
流石に左之助からのパジャマや部屋着と新八からのブーツは履けないが、歳三からのコート、一からのマフラー、平助からの手袋を身につけてにこにこ笑う総司に兄達もとてつもなく嬉しそうだ。
「あぁ、似合うぞ」
「良く似合ってる」
「おぉ、なかなかじゃねーか」
「総司に白のコートか、流石兄さんピッタリだな」
「てか、オレらのマフラーと手袋の色もいいじゃん!」
「早くこれ着て、新兄のブーツ履いてお出かけしたいな〜。あ!初詣とか行きたい!!それに、今日は左之兄のパジャマ着て寝るね〜!」
「初詣か・・・、正月が暖かかったら連れて行ってやるよ」
くしゃくしゃと歳三に頭を撫でられて益々笑みを深める総司にみんなメロメロだ。
「あのね、僕も用意したんだ・・・皆みたいにいいものじゃないけど、貰ってくれる?」
少し恥ずかしそうにそういう総司に兄達は少し驚きつつ頷く。
「勿論だ、総司何時の間に準備したんだ?」
「総司からのプレゼントか、楽しみだな」
「総司からってだけで嬉しいぜ」
「有り難う総司」
「おぉ〜!総司やるじゃん!」
ずっと体調を崩して寝込んでいた総司がプレゼントを準備していた事に驚きつつ、嬉しい兄達に少し待つように言い総司は島田の待つキッチンへ急ぎ足で向かう。
キッチンには昨日島田と一緒に作ったクッキー。
可愛いレースペーパーに包まれ、兄達の好みのクッキーをそれぞれに入れているのでどれが誰用かわかる様にリボンの色を変えてラッピング済みのそれを持ってみんなの元へ戻る。
「えっとね、これが歳兄、これが左之兄、新兄、一君、平助君」
一人ひとりに手渡すそれを兄達は嬉しそうに受け取ってくれる。
「クッキー?作ったのか??」
こくり、と頷く総司に兄達はビックリしたような表情を浮かべた後、嬉しそうに微笑んだ。
「あまり上手くできなかったけど、昨日島田さんに手伝ってもらって作ったの。僕買い物とか行けなくてプレゼント用意できなかったから・・・」
「こんないいプレゼント貰ったのは初めてだ、総司有り難う」
歳三は総司を抱き締める。
「あぁ、いくら金を出しても買えねぇプレゼントだな」
左之助はくしゃくしゃと髪を撫でる。
「しかもうめぇよ、すげーな総司」
新八は早速クッキーを食べて嬉しそうだ。
「勿体無くて食べられないな」
大切そうにクッキーを眺める一
「総司すげー!!オレこんなの作れねぇよ!」
平助も早速取り出してしげしげとクッキーを眺め、ぱくりと口に入れる。
「えへへ、喜んでもらえて良かった。兄さんいつもありがとう」
にっこりと笑う総司はプレゼントを貰った時よりも嬉しそうだ。
そんなこんなで終始楽しそうにはしゃいでいた総司を宥めて歳三が部屋に連れて帰ったのは普段もうぐっすり眠ってるような時間で、部屋に戻ってからも興奮してるのか中々寝付けないような総司を歳三が何とか寝かしつけたのは深夜、明け方に近いような時間だった。
「ん・・・」
そんなクリスマスの翌日、仕事が休みな事もあり、普段よりもゆっくりと寝ていた歳三の意識がふわりと浮上する。
「けほけほ・・・・ッ、げほ・・・」
意識が浮上した途端に聞こえてきた咳に一気に覚醒し、慌てて隣りで眠っている総司の様子を見る。
咳き込んではいるが、まだ眠っている総司に一瞬ほっとするが、少し苦しそうな呼吸に眉間に皺が寄る。
軽い発作を起してしまっている総司に処置をし、微熱とは言え熱も出している事もあり、点滴も打つ。
こんな時自分が医師免許を取って良かったと心底思う。
「・・・とし・・・にぃ・・・」
「総司、目覚めたか?苦しいだろうけど直に楽になるからな」
「、だ、じょー・・、ぶ・・・・ごめ・・な・・い」
「昨日はしゃぎすぎたな、今日一日寝てたら元気になれる。初詣行ける様に年末はゆっくりしてような?」
こくり、と頷く総司の柔らかな栗毛を撫でてやり、目蓋を覆ってやると直に寝息を立て始めた。
子供の頃に比べると随分強くなった総司だが、やはりちょっとしたことで体調を崩してしまう。
そんな可愛い弟の面倒を見るのは自分の役目だとつくづく思う歳三なのだった。
▲ *mae|top|tsugi#