『総司、愛してる』
懐かしい夢。
温かい夢。
遠い昔の記憶。
確かにこの手で温かな温もりに触れていたのに、いつの間にか手からすり抜けてしまった幸せな記憶。
***踏み出せばそこに貴方が
5月30日
この日は、僕にとって悲しくて、辛くて、悔しい。そんな想いを思い出させる日。
「土方さん…」
大切で、大好きな人。
夢なのか現実だったのかは解らないけど、あの時確かに永遠を誓ったんだ。
なのに、生まれ変わってから一度も土方さんに出会っていない。
もしかしたら、生まれ変わってないかもしれないし、まだ産まれて来ていないのかもしれない。
土方さんが僕より年下の可能性だってあるんだよね。
「土方さんが年下って…」
何となく…それは嫌だな。
それに、もしかしたら…僕の事を覚えていないかもしれない。
会いたいけど、忘れられていたら…
家庭を持って幸せに暮らしていたら…
『もしも』だけど『もし』そうだったら?
僕は、それが怖くて会いたいと思いながらも心のどこかで会いたくなかった。
「土方さんが僕の事を覚えててくれていて、好きなままだったら…今日は、僕のお墓参りにでも行ってくれてるのかなぁ」
土方さんなら、きっと行ってくれてると思う。
でも僕は、自分のお墓は勿論、土方さんのお墓にも行ったことはない。
会ってしまうのが怖いから。
でも、やっぱり会いたい気持ちのが大きくて、土方さんが傍にいないのが寂しくて…
そろそろ覚悟を決めなくちゃね。
たくさん土方さんを待たせちゃってるし、きっと土方さんは僕の事を忘れてなんかいないと思うから。
今日は、昔の僕の命日だから。
きっと土方さんなら僕の所に来てくれる。
「僕のお墓に僕が行くのも可笑しな話だよね」
土方さん。
記憶の中の貴方が僕の中で微笑んだ気がした。
***踏み出せばそこに貴方が
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