「……それでアンタは、土方さんの所を飛び出して来た…と言う訳か…。」
「…………うん。」
痛む頬を冷たい濡れタオルで冷やしながら、総司はコクンと頷く。
その様子を眺めながら、斎藤は小さく溜め息を吐いた。
(此処は駆け込み寺か…)
土方のマンションを出た総司は、フラフラと斎藤の住むアパートへと向かった。
独り暮らしで、しっかり者の斎藤の部屋に、度々総司は転がり込んでいた。
課題を見せて欲しいとか、他愛無いお喋りをしたりとか、そんな内容ならまだしも。
原因は他人が聞けば笑う程の事だろうが、今回は明らかに総司の様子が違う。
「……タオルをもう一度冷やして来る。少し待っていろ。」
「……うん、有難う…。」
総司からタオルを受け取った斎藤は、流しに行きながらポケットから密かに携帯を取り出して。
総司の死角に移動すると、手早くメールを打って送信する。
(総司は、ウチにいます)
その後何食わぬ顔をして、濡れタオルを再び水で冷やして戻った。
「……待たせたな、よく冷やしておけ。赤く腫れてしまうからな。」
「……冷たくて、気持ちいい…。一君、有難う…。」
漸く僅かに笑った髪をゆっくりと撫でてやると、総司は擽ったそうに眉を下げた。
そのまま静かに撫でていると、やがて聞こえる小さな寝息。
「……眠ったか…。」
斎藤が呟くと同時に、ポケットの中の携帯が揺れた。
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