一緒に入浴する事になった二人は、今狭い浴槽に一緒に浸かっている。
小学生と社会人の体格の差は歴然。
向かい合いながら、土方の膝の上に乗っている総司。
別にいかがわしい関係でもない。
ましてや、異性同士でもない。
それでも、土方はある意味理性崩壊と戦う羽目になるわけで、見えないものと戦う羽目になる。
土方は総司の裸をあまり見ないようにしていた。
「土方さん?」
「あ、いや…なんでもない」
「……お父さん…」
ささやかれる呼び名一つで動揺してしまう。
そっと土方の手の上に、自分の手を重ねた。
ぴくりと土方の手が微動した。
「僕……なんだか土方さんの事……昔から知っているような気がするんですよね」
「総司…」
「温かくて…ドキドキして…それで…安心するっていうか…」
その総司は頬が染まっていく。
「まだ出会って間もないのに、どうしてこんな気持ちになるのかなって…ずっと考えてた」
「………」
「…あの、どうかしたんですか?」
「あ、いや。なんでもない」
平常心、平常心…と、心の中で自分に聞かせるように呟く土方。
しかし、総司は無自覚に土方にすり寄ってくるから性質が悪い。
なんて目に毒な肌色だろうか。
触りたくてたまらなくなる。
でもそこは、理性との戦いに打ち勝つほかない。
今の自分と総司は純粋な親子関係なのだから。
理性が崩壊して、総司を傷つけたくはないから、必死で自制心を失わないようにしなければいけない。
「さっぱりしたー」
ある意味地獄のような時間を終えて、鏡の前にいる総司の髪をドライヤーで乾かしてあげる。
サラサラな柔らかい髪が、猫の柔らかい毛のようでさわり心地もいい。
総司も土方に髪を触れられている感触がたまらなく気持ちよくて、気持ち良さそうに浸っている。
「僕、土方さんに髪を触ってもらうの…好きです」
「そうか?」
「はい…。懐かしい気持ちがするんですよ。前にもこんなことがあったよう気がする。きっと思い過ごしなんでしょうけど」
「……総司」
「思い出せないですけど、でも…思い出さないほうがかえっていいのかもしれないって思うんですよね。今が…幸せ。それで十分じゃないですか」
「…そう、だな」
知らぬが仏とも言う。
知ってしまえば、壊れてしまう事だってあるのだから…。
それでも、自分のことを知らないままなのも寂しい。
「今日は一緒に寝て、いいですか?」
「…ああ」
なんだろうとどうだろうと、今のままいた方が幸せなのかもしれない。
総司は土方のベッドに入って目を閉じた。
その夜、悪夢を見た。
身の毛がよだつような、生々しい夢を。
『っ…ぁあ…やめ…て』
視界の向こう側で、自分が何者かに組み敷かれていて、乱れた服装のまま犯されているという光景が広がっている。
卑猥な音と共に結合部分が揺れる。
大きなベッドの上で乱れる自分と、その自分を侵食する男。
緩やかな律動をしながら、嫌がる自分とまぐわう男が絡む。
もう何度貫かれて、何度達したかわからない。
『やめて…くださ…っあぁ』
意思とは反して、カラダは快楽を優先していく。
心は壮絶に拒絶したいのに、体だけが嫌悪感と快楽が同時にむせあがる。
なんて滑稽な姿だろう。
見ていられない。
なんでこんな悪夢を自分は見ているのだろう。
『ははは、最初はあれだけ痛がっていたのに…今じゃこんなにも柔軟に銜えこんで…』
『んやぁ…あぁ…やめて……お父さ…お父さんっ』
え――…お父さん…だって?
▲ *mae|top|tsugi#