宝物 | ナノ


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「それより、風呂でもわかすか」

しゅっとネクタイを外し、脱衣所へ向かう。

「お風呂ならわかしました」

「お、気が利くな」

「当然でしょう。僕は…ただのお荷物ですから。これくらいはしないと」

総司は苦笑いを浮かべた。

「お前はお荷物じゃねぇよ。あえて言うなら、息子みたいだな」

「息子…ふふ、それでも年が近すぎますよ」

土方はまだ23歳で、総司は12歳。
親子にしてはどうも釣り合いが取れないし、兄弟とも違う。
友人ともまた違うだろう。
どれもしっくりこない。

「いいんだよ、年くらい。お前を引き取ったって思えば、親子でも通じるだろ」

「じゃあ…お父さんて…呼んでもいいですか?」

お父さん…?
一瞬目を見開いたが、すぐに土方はふっと笑い、頷いた。

「じゃあ…お、お父さん」

総司が一言気恥ずかしそうに呼んだ。

「………」

「………」

思ったより恥ずかしかった。

「…まあ、いいんじゃないか…それで。お、俺は風呂に入ってくる」

ますます照れた顔で、顔を隠すように背中を向けた。



「お父さん、一緒に…お風呂入っていいですか?」



その一言に、土方はぴしっとかたまった。

別に固まる必要なんてない。
同性同士で、別にやましい事なんてないはずだ。
総司から見れば、の話だが。
土方からすれば、ある意味生殺しのような一言。


「いや…お前は料理してるだろ。だから…」

「…だめ…なんですか?」

総司は上目遣いで悲しそうな顔をする。
その表情は、土方の目のピンポイントを狙うアングルで、思わず尻込み。
焦る土方の心情を知らず、総司はあくまで純粋だ。
自覚がない分性質が悪い。

「わ、わーったよ!何もそんな泣きそうな顔しなくてもいいだろ」

ぽんぽんと、優しく総司の頭を叩く。

「別に泣きそうじゃないですよ。だって、土方さんの背中流したいですし、お父さんとお風呂って…僕…憧れますから」

「そう、なのか?」

「…はい。記憶がないのに変ですけど、親子ってこういう事だって思うから。仲良く、なりたいんです」

「…そうか」

総司は親子関係に嬉しそうであった。




*maetoptsugi#




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