「は!やめた?もう?」
「うん。なんかね、朝練に遅刻ばっかしてたら怒られたんだって」
「ハァ……」



学校を終え真っ直ぐ家に帰れば、夕飯の匂いとその準備をする名前の姿、ルフィは部活かー…なんて思ってリビングに入ったんだが。
目に入ったのはソファで寛ぐ弟の姿で、おれを見るなりおかえりエース!!と満面の笑みで言った。



「お、おぅ、ただいま…」
「ポテチ食うか?」
「おぅ、その前に弁当箱出してくる」
「おー!」



テーブルに置いたお菓子に手を伸ばすルフィを横目に名前のいるキッチンへ入った。トントンと規則的な音を鳴らしながら野菜を切る名前の側に行って聞いてみれば、名前は手を止め、呆れた様に笑って言ったのだ。



「部活やめたんだって」



ため息をつくおれに名前もふふと笑う。



「今度は何部だっけ?」
「サッカー部だよ、一度助っ人で入って頼まれて正式に入部したらしいんだけどね」
「まだ一週間しか経ってねェのに…」



名前の話によれば朝練に間に合ったのは一度だけらしい…。確かにあの日以外、朝にルフィを見てねぇ…。


サッカー部の前にも色々入ってはやめを繰り返している我が弟。ルフィのやつ、いったいいつになったら一つの部に落ち着くんだ…


確か前に入ってたバスケ部はルールが覚えられなくて…。その前の美術部は五分もじっと集中することが出来ず…。その前の剣道部では自分は剣術に向いてないと悟ったらしく自らやめてきた。



「ハァ……」
「道具とか揃える前でよかったね」
「まぁな、この先部活入っても道具揃えんのは一ヶ月続いてからにしろよ」
「はいはい」



初めて入った野球部では道具一式揃えたってのに一ヶ月ももたなかった、金がもったいねぇじゃねェか…

うちの生活はジジイが送ってくる金を名前が管理してくれていて、特別貧乏ってわけじゃねェけど基本おれとルフィの食費に消えてくからあんま贅沢もできねェ。



「ハァ……」
「まぁまぁ、ほら」



そう言って今日の夕飯らしい肉じゃがの具をおれの口に放り込んで来た。突然のことに驚いたが、噛めばほろっと崩れて柔らかい、味の染みたジャガイモにおれの顔も緩んだ。



「おいし?」
「うまい」
「よかった」


安心したように笑った名前に今度はおれが具を一つ摘まんで名前の口に入れてやった。

少し驚いたようにおれを見たけど、すぐに笑った名前に可愛いと思いつつも、どうだ?と聞けばおいしいね!と笑う


手を伸ばして名前の口の端に付いた汁を取ってやると、名前は照れ臭そうに笑った。



「ありがとう」
「いや……」



可愛い。
もう、一生この時間が続けばいいのに……。



「名前〜!飯まだかぁー?」



おれの願いも虚しくリビングから弟の声が響いた。
その声に慌てて反応した名前は慌てて具材を鍋に入れ始め、近くに置いてあった布巾を絞りおれに差し出した。



「後はお味噌汁だけだから、エース、テーブル拭いてきてくれる?」
「おう!」


おれが受け取るとニッコリ微笑んだ名前はまたすぐに鍋の前に戻った。おれもそれを見届けてリビングに入って行った。が……



「なんだこれ!おいルフィ!片付けろ!」
「おれ腹減って動けねぇ…」
「さっきポテチ食ってたろ!こら!またお菓子開けようとすんな!」
「名前〜〜!まだかぁぁー!!」
「うるせぇ!名前は今作ってんだから!」




リビングから聞こえて来る弟達の声にふふと笑いが溢れた。



「名前ーー!!」
「はーい!ちょっと待ってね〜!」











〜3日後〜



「おれ、料理部入った!!」



おれと名前の口があんぐりと開いているのも気にせず弟は続ける。



「エプロンいるんだ!貸してくれ!」
「う、うん、それくらいなら良いけど…」













後日、ルフィが部の食材を食べ尽くすため、退部させられたそうな…。


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