「好きなだけ食え」
「うっほー!!お前良いやつだな!トラ男!」
「トラファルガーさんだよルフィ」
「……」


目の前に広がるたくさんの料理、それを前に腹の虫がグゥと鳴いた。だが、なんだこの目つきの悪い男は。

名前から電話がかかってきたのは学校の帰り道、偶然ルフィと会ってじゃれながら家を目指していた時だった。名前がスマホを拾ったやつがお礼に飯を奢ってくれるというらしく、おれたちも来いということだった。ルフィは話を聞いて大喜びだが、おれはなんだか喜べなかった、なんか心ん中に突っかかりがあるような気がして。そんで来てみればこれだ。この男、絶対名前に気がある。じゃないと名前は断ったらしいのに、おれたちを呼んでまで名前に飯を奢る意味がわからない。
それになんだこのレストラン、大学生が来るような店じゃねぇ。

ジッとトラファルガーとかいうのを睨みつけるが、目が合うとニヤリと笑われた。それにピクリと血管が動く気がした。


「随分と目つきが悪い高校生だな」
「お前に言われたかねぇよ」
「ハッ、姉貴のこと相当好きみたいだな」
「はぁっ!」


おれが立ち上がってやつを見下ろすがこいつはなんともないようにおれに笑みを送った。

なんでわかった…。
おれたちが睨み合っていると、名前がエース!?と驚いたように声を上げた。


「ごちそうしてもらってるんだから失礼なことしないの!」


名前から怒ったような視線を向けられておれはさっと視線を外した。名前のそういう視線は苦手だ。


「姉貴には素直じゃねぇか」
「うるせ」
「弟だもんな」
「てめぇ…、言っとくがおれらは3人とも血繋がってねぇからな」
「へぇ?」


片眉を上げると、トラファルガーはおれたち3人を順番に見ていった。


「だから、てめぇに名前は絶対渡さねぇ」


おれのこの言葉にやつは何も言わず、口の端を上げただけだった。いちいちムカつく野郎だ…。


「エース!すっげぇうまいぞ!食わねぇのか?」
「あ、あぁ、食う」


ルフィがほら!と肉を山盛りにした皿をおれに差し出してくれそれを受け取る。
こいつの奢りってのは癪だが空腹には耐えられそうにない。それにここでおれたちが腹一杯食えばこいつは金が足りないことに焦りだすかもしれねぇ、そうなりゃ恥をかかせられる……。

頭の中で浮かんだシナリオにニヤリと微笑んでおれはテーブルに広がる飯を口の中へ放り込んでいった。ルフィも負けじと対抗してくる。


「2人とも…!お願いだから遠慮してっ…!」
「構わねぇよ」


余裕こいてられるのも今のうちだ、おれらの胃袋を舐めんなよ。





「お会計…ぇっ、…じゅっ、12万ベリー…でございます」
「じゅっ!12万!!?」


店員も驚くほどの値段を聞き名前は頭に手を乗せてふらりと体をふらつかせた。
ざまぁみろトラファルガー、さすがにこんなにいくとは思ってなかっただろ。


「これで頼む」
「あっ、はい、一括のみとなっておりますが」
「構わねぇ」
「ではお預かりします」


表情を全く崩さずカードを出したトラファルガーにおれと名前の開いた口は塞がらなかった。その時おれを見たトラファルガーは勝ち誇った笑みを浮かべ、口が開いてるぞ?と言った。



大きな扉を開け店の外へ出るともうすっかり夜は更けていて、風が少し冷たかった。隣では大きくなった腹を摩ったルフィがふーっと大きく息を吐き出した。


「うまかったぁー!また連れてってくれよな!トラ男!」
「こらルフィ!すみませんトラファルガーさん…、今度何かお礼を…」
「おれの礼だ。気にするな、また飯に付き合ってくれりゃそれでいい」
「今度はわたしがご馳走しますので!」
「女に奢ってもらうほど金に困ってねぇよ」


名前の頭にトラファルガーの手が伸びたのでおれはとっさに名前の腕を引いて引き寄せた。
エース?と名前が不思議そうに首を傾げるけどおれはトラファルガーを睨みつける。だがトラファルガーはおれの反応をわかっててやったようで、おもしろそうに口を歪めた。


「エース、今日変だよ?すみませんトラファルガーさん…いつもはもっといい子なんです」
「ハッ、良い"弟"じゃねぇか」
「……てめっ…!」


弟を強調された。くっそ。おれはあくまで弟で相手にされてねぇって言いてぇのか!?くっそムカつく…!!

言い返そうとしたところで突然名前の手が伸びてきておれの口を塞ぐ。名前を見れば少し背伸びをしていて、この近い距離に少し顔が熱くなった。


「じゃ、じゃあトラファルガーさん!今日はありがとうございました!」
「いや、またな名前」
「またな〜トラ男〜!!」


名前はおれたちを一緒にするのは危険だと判断したのか強引に解散の流れにもっていった。
トラファルガーがタクシーに乗り込み、出発したところでようやくおれの口は解放された。


「もう、どうしたのエース?」
「……別に」
「変なの…」


これからあんなやつが名前を狙ってくると考えるだけで頭が爆発しそうになる。絶対名前は渡さねぇ。おれの気持ちってのは必死でおれらの姉になろうとしてくれてる名前を裏切るようなことなのかもしれない。だけど名前が別の誰かのものになるなんて絶対に嫌だ。


「エース?エース!」
「……んっ?」


下からの呼びかけに顔を向ければ、名前が帰ろう?と笑っていた。それにおれも笑顔を返してそうだな。と3人で駅へ向かった。


「うまかったなー!」
「ルフィいっぱい食べてたもんね」
「おぉ!もう腹パンパンだ!」


だけど、この姉弟の関係も悪いものじゃない、先へ進むのはもう少し時間が必要だ。


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