この文はあるある企画様の花言葉企画に提出させていただいたものです!
お礼文にするため名前変換部をなくしています。原文を読みたいと思って下さった方はあるある企画にてご覧下さい!



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うぅっ…、息苦しい…。

この時間ってこんなに混んでるだぁ…。


「ハァッ…」


今朝、寝坊してしまった自分を叱咤したい。

いつもは満員電車が嫌で、今のより何本か前の電車に乗って通学している。
でも、今朝は何時もより気温の低い朝で、なかなか布団から出られず、気付いた頃には時すでに遅し。
遅刻ではないんだけど、この超満員電車に遭遇してしまう時間になってしまっていた。


って、うわっ…!また乗って来た!


すでに満員だというのに、更に乗り込んでくる人の波に揉まれ、どんどん奥へ奥へと流されてしまう私の体。ついには誰かの胸に顔面をぶつけてしまった。
申し訳ないと思いつつ、離れようとするけれど人の多さでそれも敵わない。

どうすることも出来ないなと諦めた時、その人の服が目に入った。


あ、ウチの制服だっ…!


もしかすると知り合いかもしれないなぁ。そう思って顔を上げ、その人物を確認してみた。


とても綺麗に整ったお顔に、頬に散らばるそばかす、それに黒色の癖っ毛。
…どう見ても初対面だ。

ウチの制服だけど、わたしは見たことない人だなぁ。こんなイケメン一度見て忘れるはずないし…。もしかすると先輩かなぁ…。

ジィッとその彼を凝視するわたしに当の彼は全く気付かない。なぜなら、この混雑の中カクンカクンと頭を揺らしながら睡眠中だから。


とっても器用な人だなぁ。なんて、ぼんやり思っていたため、その彼の顔が近付いていることに全く気が付かなかった。


ゴツンッ!
「「いっつ…!!」」


途端にじんじんと痛む額を手で抑えたと同時、目の前の彼も同じように自身の額を抑えていた。
どうやら、彼の額がわたしの額に見事、クリーンヒットしたらしい。


い、痛いー…!!何これ、じんじんする!!


超満員だし、人の目も気になるしで、無言で痛みに悶えるわたし。
それとは正反対に、彼は、いってェ!!と割と大きめな声を上げていた。


「わりィ!大丈夫か?」
「は、はいっ…」
「大丈夫じゃねェな、ここか?」


伸びてきた彼の手は、額を抑えるわたしの手を掴みそっと退かせると、わたしの額を確認して申し訳なさそうに眉を寄せた。


「赤くなっちまった…」
「えっ…」


その後、指で軽く触れられた。その瞬間ピリッと痛みを感じて、わたしは思わず、いたっ。と発してしまっていた。


「痛むか!?冷やした方がいいかもしれねェ、次降りるぞ!」
「えっ、えぇっ…!?」


有無を言わさないといった感じで、手を引かれ、ちょうど到着したばかりの駅のホームへ引き降ろされてしまった。

すぐにホームの椅子に座らされると、ちょっと待ってろ!と彼はその場を急ぎ足で去って行ってしまった。


その後ろ姿を呆然と見送ると、途端に申し訳なく思ってきた。彼の胸に激突して、顔を凝視してたわたしが悪いのに…!!














「待たせたっ!」
「い、いえっ!」


暫くして、彼は手にコンビニ袋を提げて戻って来た。
わたしの隣に座ると、ガサガサと袋を漁り、その中からヒエヒエシートの箱を取り出した。


「えっ…」


たぶん…、いや確実に。彼は間違えている。だって、ヒエヒエシートって熱が出た時に貼るものだもん!

戸惑うわたしに全く気付く様子のない彼は、急ぎめにシートを1枚取り出すと、片手でわたしの前髪を上げた。


「ここだな、よし」
「ひゃっ…」


突然の冷たい感覚に変な声が出てしまった。
そして、額全体を覆ってしまったヒエヒエシートに手を触れながら思う。
これで治るのかなぁ…。


「もう大丈夫だな!」


ニッて、歯を見せて笑う彼に、ありがとうございます。って少し遅れて言った。


「いや!おれが悪いんだ、すまねぇ!」
「あぁ、いやいや!大丈夫です!顔上げて!」


椅子に座ったままガッと頭を下げた彼に戸惑いながらそう言い、手を振るわたし。
朝のホームでこんなことしてるなんて、機から見ればすっごくおかしい光景なんだろうなぁ。


「あ、そうだ。これ食え」
「うごっ…!」


突然口に突っ込まれたのはグレープ味のアイスキャンディ。彼は、うまいだろー。なんて言いながら自分も食べ始めた。

こんな…肌寒くなってきている時季にアイスなんて…、常識に囚われない人なんだなぁ…。


「おいしい…」
「な!これ安くてうまいんだよ!パッケージが胡散臭ェんだけど、買ってみりゃ大当たりだろ!」


大きな声で話す彼によれば、昔弟君が間違って買ってきたものだそうで、それから家族全員でハマッているらしい。
確かに、この商品があることは知っていたけど、買おうとは思わなかったなぁ。だって、彼の言う通りパッケージが胡散臭いんだもん。

彼の弟は鼻が利くっていう話から弟自慢に発展して、その必死さが子どもっぽくて、声を出して笑ってしまった。


「ふははっ、子どもみたい…!」
「なんだよ子どもって、お前のが年下だろ」
「え、わたしのこと知ってるんですか?」
「あっ、いや、お、おぅ…」


途端に慌てだした彼を不思議に思いつつも、こんなイケメンがわたしのことを知っていたなんて…!とわたしも驚く。


「前にな、学校帰りに電車で見かけたんだ」


彼の言葉にそうなんだ。と納得。今日も同じ電車で会ったんだもん今までも乗り合わせていてもおかしくない。


「乗って来たばぁちゃんに席譲ってんの見て、いい奴だなって思ったんだよ。そしたら学校でも何度か見かけるようになって、名前呼ばれてるのも聞いて…」


そういうこと!!なんて照れたように言った彼にわたしの顔も赤くなった。

見られてたんだ…!!

でも、嬉しいな…。
そんな風に評価してくれるなんて。
これまでのわたしにしてくれたことからもわかることだけど、彼もきっと良い人なんだ。


「あの、わたしも、お名前聞いて良いですか?」


わたしの言葉を聞いてパッとこちらを見ると、彼は嬉しそうにニッと笑った。


「おれは3Dのポートガス・D・エース!よろしくな!」
「よっ、よろしくお願いします!」


彼の伸ばしてくれた手を握ると感じる体温。少し熱いのは彼の体温なのか、何なのか…。






恋の予感 / ポピー


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