「すぐだからね」
「うん…」



自分の指先にピンセットが近づいてきて、そこに刺さっている木の棘を挟んだ。


ズキリと一瞬痛みが走る。


「いっ…!」


スルッ


「ほら、取れたわよ」



ニッコリ笑ってみせたミラノさんが、ピンセットの先の細く小さい木の棘をゴミ箱に捨てた。そして今度はあたしの指先に消毒液を着けていく。


そのとき、バタンッ!と音がすると同時、あたしの名前が叫ばれた。振り返ると、そこには凄い形相のマルコがハァハァと息を整えながら立っていて、どうしたのかと、わたしもミラノさんも目を丸くした。



「マルコ?」
「だっ、大丈夫かよい!?」
「えっ…?」



口から焦って出たようなマルコの言葉にミラノさんは、あら。と微笑んだ。



「マルコ隊長、指先に棘が刺さっただけですよ。それに、もう抜き取りましたから、大丈夫です」



ミラノさんの言葉に、はぁ。と息をついたマルコが、見せてみろい。って手を出してきたので、その大きなゴツゴツした手に自分の手を乗せた。


近くの椅子を引き寄せ、そこに座ったマルコはあたしの指先を見て眉を顰めた。



「ほ、本当に大丈夫なのかよい!?」
「大丈夫ですよ、どうしたんです?」
「赤くなってるよい」
「そりゃあ、今抜いたばかりですから」
「ここから何か細菌が入ったりとか…」
「ないです!」



全く、過保護なんだから。なんて、吐き出すように言ったミラノさんは、立ち上がり壁に固定されている棚に手を伸ばした。
棚から何かを取り出し、わたし達の前にやって来ると、今度はマルコの顔の近くにその何かを突き出した。



「どうぞ、そんなに心配ならマルコ隊長が貼ってあげて下さい」
「よ、よい…」



マルコは恐る恐るというようにそれを受け取ると、ピリ。と袋を開けた。



わたしの指にそっと触れると、痛むかよい?なんて聞いてくる。



「少しだけ…、でもほんとに大丈夫」
「そうか、でも一応貼っとくよい」
「あ、ありがとう」



やっぱり、こういうのには慣れてないのかな?ゆっくりゆっくり貼り付けられた絆創膏は少しズレていた。



でも、わたしはその指先の絆創膏を見てなんだか嬉しくなった。


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