言いたいこと全部言ったぞ!おれは!!


名前……、ここにいるんだろ…。


会場中を見渡して思う。

この後どんな顔されるんだろ。
ごめん。って謝られるかな。

それもなんか切ねェ…。

一人、物思いに耽っていると、会場がざわざわと騒がしくなった。


そりゃあな。名前とマルコが付き合ってんのなんて、学校中が知ってんだもんよ。そんな名前に告白なんてな…。


「エース…」


後ろからした声に驚いてバッ!と振り返る。


「名前!?」


そこには赤いドレスで着飾ってるけど、顔は濡れてぐちゃぐちゃの名前がいた。


「なんでお前後ろから!?」


TOP5に入ってたのか!?

驚いてサッチを見ると、ニヤ。と笑われた。
お前知ってたのか!

前に向かって散々叫んでたのに、本人後ろにいたんじゃねェか…!


「あぁー」


がっくりとうなだれるおれに構わず、名前はゆっくりと近付いてくる。

顔が崩れててある意味ホラー。

…だけど、おれの好きな女だ。


まだ涙が止まらないのか手で目を擦っている。


「…エースッ…わたしね…」
「お…おぅ…」
「わたしもね…エースが…す」
「ちょっと待てお前!!マルコは?」


今の一文字目“す”だったろ…!

もしこのまま「好きだ」なんて言ってくれたら飛び上がるほど嬉しいが…それじゃこいつが悪者になっちまう。マルコと名前が付き合ってんのはみんな知ってんだぞ…。

もしかして、「好きじゃない、嫌い」って言おうとしたのかもしれない、もしそうだとしたら恥ずかしすぎるぞ、おれ!!


「フられた…」
「は?」
「フられた!!!」


涙目で睨みつけるようにおれを見つめる名前におれは呆けた顔をすることしかできなかった。


「まじで…?」
「まじ…」


なんで…。なんで名前がフられてんだよ…!じゃあ泣かせたのマルコか…!!!


「おれがぶっ飛ばしてやる…!」
「エースのせいだよ!!」
「え…?」


おれのせい?


「わたし、エースといる時のほうが幸せそうなんだって…!!」
「…それって」
「わたしもエースがすき」


かぶせるように、おれにしか聞き取れねェような小せェ声でそう言った。おれも頭ん中、真っ白だ。

無意識に名前を引き寄せてギュウッと抱きしめる。


「おれでいいのかよ…」
「エースこそ…、わたしでいいの?」
「名前しか無理」


身体を離して名前の両頬を挟む。

親指で涙を拭ってやり、額同士を合わせる。


「おれが絶対ェ幸せにする!!」
「うん…!!」


名前が微笑んだのを見てそのまま唇を合わせた。


fin.













パチパチパチ…


拍手でふっと我に返る。


ここが舞台の上だってこと、完全に忘れてた…!!

唇を離して名前を見ると、顔を真っ赤にさせていて、はずかしすぎる…!とおれの胸に顔を押し付けた。おれはそんな名前の頭を隠すように抱きしめて周りを見回す。


「はーい!おめでとうございます!美女第4位は!火拳の彼女、苗字名前でした〜!!」


そう言ったサッチを睨みつけた。

そのまま名前を抱えるようにして舞台裏に戻った。名前を椅子に座らせ、タオルで顔を拭いてやる。が彼女は一向に泣き止む気配がない。


「…うっ…ひっ…ぐすっ…」
「いい加減に泣き止めって…」


頭を撫でてやる。こんなことするの久しぶりで、おれ自身が懐かしさを感じて口角が上がった。


「なんで…わたしのこと避けてたの…?」
「あー、実はなお前が家に来た次の日謝ろうと思ったんだけど、ジジィが「もうすぐテストじゃぞ!前回も前々回もお前は成績が悪すぎる!わしの孫が留年など許さん!よって別室!」とか言い出しちまって…。
学校には来てたけど、別室でずっと勉強させられてたってわけだよ。まぁその前は避けてたけど…」


頭を軽く掻きながらそう言うと、名前はおれの胸をバシバシ叩いて、エースのバカ野郎!なんて暴言を吐きやがった。


「や、ほんと悪かったって」
「ハーゲンダッペのストロベリー…」
「わかったよ、買ってやるから」
「ふふっ…」
「単純だな」


微笑む名前の頬に手を添えると、名前も手を重ねてくれる。そんな幸せを噛みしめながら、おれはまた名前の唇に自分のを重ねた。


「もう、ぜってぇ離さねぇからな」
「うん…!」


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