やっぱり…わたしも…!!

エースのところへ行こうと、足を踏み出したと同時、後ろから腕を引っ張られた。
振り返り、その人物を見てわたしは目を見開いた…。


「マルコ……先輩…」


すごく切なそうな目で見ているマルコ先輩にわたしは足を止めて、彼と向き合った。

男子の待機席は反対側だ舞台裏からこっちに回って来てくれたんだ。


「名前…、泣いてんのかよい」
「……」


先輩と顔を合わせられず、先輩のネクタイを見つめながら無言で頷いた。


でも、よく考えると

マルコ先輩とのことをきちんんとせずにエースのところに行くなんて自分勝手すぎる。

だから、ちゃんと言わなきゃ…エースが好きだって…。

それでも、自分が最低なのは分かってる。でもマルコ先輩はわたしよりも年齢も考え方も大人だ。これが甘えだとわかっていても、きっとわかってくれると思ってしまう。


「名前」


名前を呼ばれ、下がっていた視線をあげると、マルコ先輩の真剣な視線とぶつかった。告白された時と同じ視線。


「話したいことがあるんだよい」
「わたしから言っちゃダメですか…?」


もし今、また、好きだって言われたら…

断れる自信がない…。

別れたいって言える自信がない…。


「ダメだよい」
「わたし…!」
「名前!!」


急に出された大きな声に身体がビクリと強張る。
そこで両肩にマルコ先輩の手が乗せられた。


「名前……」


マルコ先輩が顔を覗き込むように、わたしを諭すように名前を呼んだ。
わたしはマルコ先輩の顔を見れなくて、ギュッと目を閉じた。


「……おれと…別れてほしいよい…」
「……えっ?」


驚いて顔を上げると切なそうに笑うマルコ先輩の顔があった。目を丸くしているわたしにマルコ先輩は続ける。


「おれは…お前には幸せになってほしいと思ってる……」


そこでフッ、と笑った。


「お前はエースといるほうが幸せそうだよい…」
「……うん」
「だから…おれと別れてほしい」


マルコ先輩の顔をジッと見つめつつ、驚きながらもコクコクと頷いた。


「フッ…」


すると、クルッと身体を回され、背中をトンッと押された。


「ほら、行けよい」


振り返るといつもの笑顔のマルコ先輩。

わたしから別れたいって言わせなかったのは、きっとマルコ先輩の優しさだ。わたしが振ってたら、わたしが悪者になるから。

そう思うと、また涙が溢れた。


「ッ…!ありがとう…」



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