ちかなり | ナノ
「…っ、」
おちた。
そいつの足元には破片。
先刻まで陶器だったもの。
今は無数の刃になって床を散り散りに占める。
踏んじまったら危ねぇな。
ああ、でもそんなのは杞憂だ。
だってよ、目前のそいつは微動だにできない程に硬直してる。
見ていて滑稽なくらいに、だ。
まさしく棒立ち。
直立不動。
普段は流れるように鋭利な瞳までもが、零れんばかりに見開かれた状態で。
滅多に拝めないその表情に思わず笑みを一つ。
(おちたおちた。)
「……貴様…今っ、……」
口ごもるそいつの紅に染まった頬に再び唇を落とせば。(あーァ、墜ちた)