ちかなり | ナノ



無駄に愛想の良いのがいる。
店員だから、というには余りに馴れ馴れしい。それ故に欝陶しい。ほぼ毎日顔を突き合わせるものだから尚更よ。挨拶の一つ会釈の一つ?何故我が。我とあやつはただの客と店員でしかない。自分の尺度で物事を計るな?ふん、貴様から説教を食らう日が来ようとはな。

年なぞ知らぬ。あえて言うなら貴様と同じ年頃か。恐らく我よりは下であろう…だが図体ばかり大きい。片目も患っているのか眼帯で覆っているし、接客に向いた容姿ではない。どこぞの暴力団の男だとでも言われればそれで納得するような風体だ。…、だが、面倒見が、いいらしい。他の店員と話しているのを聞くと、随分としたわれているようだ。助言をしてやったりシフトを代わってやったり…ふん、お人よしにもほどがある。……馬鹿な、たまたま聞こえてきただけぞ。そもそも勤務中の私語は職務怠慢であろう。

昨年の11月だ。あのコンビニの上に引っ越した。以前の部屋は隣が煩くて敵わなかった…あそこなら静かで駅も近い。通勤も随分と効率的よ。ただ一つ言うなればやはりあの男か。コンビニの店員。あの煩わしい男さえいなければ………嫌いか、だと?欝陶しくはある。…以前、注文しようと思った品を予め聞かれた。覚えられて嬉しい?貴様、先程の言葉そのまま返してやろう。自分の尺度で物事を計るな。何が嬉しいものか。あの男と我はあくまで店員と客ぞ、それ以上にもそれ以下にもなりえぬ。個人の領分に入り込まれるのは好かぬ。余計な世話とは正にあのことよ。いらだたしい。こちらの気遣いも知らぬくせに。

…知らぬ。言っておらぬ。……しつこいな貴様。……手だ。冬はどうしても手が冷える。だが…あの男は見るからに暑苦しい。…冷えた指先で触れられることを喜ぶ酔狂な輩だとも思えぬのでな。だから極力触れぬように……ッ、貴様…!直ぐさま忘れよ!




 


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