ちかなり | ナノ



ほらよと放り投げたシャツを右手で握り潰すように受け止めやがった。
貸してやるっつんだからも少し丁寧に扱いやがれ。
毛利の髪を拭いたタオルを洗面所にある洗濯機へ投げ込み、その足で台所へ向かう。
なんかあったまるモンでも飲ませておかねェとあのほそっこいお代官サマは風邪ひいてぶっ倒れちまいそうだ。
つか天気予報くらい見ろってんだ、今日は降水確率90だぞ90。
手っ取り早くインスタントのコーヒーをいれリビングに戻るとお代官はすました顔で俺のシャツを着て堂々とソファに座ってやがる。
ちったぁ申し訳なさそうな表情してたってバチはあたらねェってのによぅ。
ソファの前のローテーブルにマグカップを置いてやるとほんの一瞬チラっと視線だけ寄越してきた。
何から何まで気にくわねぇ野郎だよなお前も。
多少うんざりしながらも冷めないうちに飲めと促すと奴さん余った袖の中でもぞもぞさせていた両手を伸ばしカップを持ち上げた。
冷えて赤くなっていた指先でカップを摩るように包み込み薄い唇をフチに近づける。
だが少し口に含んだはいいもののまだ熱かったのか顔を顰てカップをテーブルへ戻す。
一連の動作を向かいに座って見詰めていたら酷く不機嫌な声色でそれを叱責された。
ハ、俺ン家で俺がなァに見てようが勝手よ。
毛利は呆れたように息を吐いてから両手を袖の中に引っ込めそのままもそもそと掌をすりあわせるような動きをする。
…な、もしかしてアンタその柔らかい裏地気に入ったのかい?



 


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