02






 あれからあっという間に二週間が経ち、今日はとうとう卒業式。校長が壇上に立って長々と卒業生への話を少々と昨日奥さんに怒られた話をしている。……校長先生、その話卒業式にする必要ありますかね。
 
 僕の周りから小さくため息とあくびが聞こえてくるからきっと皆も大体僕と同じことを考えているのだろう。





 そのあとの在校生から卒業生への合唱のときにはちらほら泣いている声が聞こえてくる。



 その在校生の中にはもちろん光くんもいて、ずっとこちらを見つめながら歌っている。合唱では前向かなきゃでしょなんて考えてみる。でも光くんがずっとこっちを見つめてると断言出きるのは僕もずっと光くんを見ているから。
 


 正直言うと僕も少し涙ぐんでしまった。



 でも泣きそうになったことは恥ずかしいから光くんには教えてあげないけどね。





 今思うと高校三年間はそれなりに楽しかったし友達も普通に出来て良かったと思っている。


 でもやっぱこの高校で光くんに出会えたというのが一番よかった。僕は二年生に上がる日、彼にとっては高校最初の日。そう、入学式。
 あの日新入生案内で光くんの担当になったのがたまたま僕だったんだ。それで、お互いその、一目惚れ……っていうのかな?なんか自分で言うのも照れるけどね。 


 そんなことを思い出している内に卒業式は完全に終わりを告げた。ここからは各自自由行動だ。家族と共に帰るものもいれば、友達とワイワイしながら打ち上げにいくもの。


 僕は学校の側で一人まつ、家族には悪いけど帰ってもらう。ごめんね母さん父さん。
 光くんと一緒に二人で帰ると約束しているのだ。



「あれ、佐竹そんなとこで何やってるんだよ!お前も一緒に帰ろうぜ!」


 話しかけてきたのは特に仲のいい友人。申し訳ない気持ちもあるが先約があるため断る。



「ごめん、用事があるからさ」

「ふーん、そっか!三年間楽しかったぜ、ありがとな!」

「こちらこそありがとう!まぁこれきりじゃないし、これからもよろしくね」

「おう!ってそろそろ行くわ。じゃあな!」

「うん、じゃあね」



 彼は常にあんなテンション。卒業式だから、というわけではないのだ。そんな彼と話しているといつも楽しくなれたな、なんて思う。



 光くんまだかなぁ〜、早く会いたい。あ。


 

「あっ!せんぱーい!」



 























 先輩の姿を見つけ急いで走り寄る。



「ひ……森田くん!」

「はぁ……はぁ、すみません結構待たせちゃいましたか?」

「いや、大丈夫だよ。そんなに急がなくてもいいのに」

「ホントですか?よかったぁ。じゃあ行きましょうか!」




 きっと随分前から待っていたのだろう。でもそれを言わない先輩の優しさをここでは受け取って気付いていないフリをしよう。そして漸く二人揃って帰り道を歩く。あ、そうだ今日こそは問い詰めてやる!




「先輩」

「ん?なに森田くん?」 

「ほらまた!なんで名字なんですかぁ!それに今はもう学校じゃないし二人きりなんだからっ!」

「ひ、光くん……」

「それでいいんですよ。それにしても今までなんで学校では名前で呼んでくれなかったんですか?」



 あぁ〜俺の名前を呼ぶ先輩はやっぱ可愛いなぁ。でも可愛いからって誤魔化されませんからね。



「べ、別にいいじゃん!もう学校じゃない、んだし?」

「いやいやいや、そんなの関係ないですし!」

「うぅ………はぁ、仕方ないなぁ」



 観念したのかため息をつき、ぽつりぽつり話し出す先輩。これでようやく理由が聞けるんですね!?俺すっごい気になって夜しか眠れなかったんですから!! あ、普通か。



「その、ね。これ以上光くんを好きになっちゃうのが怖かった、からなんだ」


「えっと……?」



 どういうことだ?よく分からないよせんぱい。 



「だから、ね?その、僕今日で卒業しちゃったでしょ…」

「あ、おめでとうございます!!」

「そうじゃなくてっ!だから、学校でまで光くんって呼んでたら大学に上がってから寂しくて死んじゃうんじゃって思って……。今まで、みたいに毎日会えないから……」



 
 寂しくて死んじゃうかもしれない?今までみたいに会えないから?それでずっと名字で………

 可愛すぎですか先輩!!!寂しくて死ぬとかウサギじゃないですかっ。



「先輩可愛すぎですってっ!!」

「へ!?か、かわっ」

「確かに今までみたいに毎日、は厳しいかもしれないですけど俺、出来るだけ会いに行きますから!」

「ほ、ほんと……?」

「もちろんですよ!!」



 俺だって離れてしまうというのは寂しいと考えていた。でも俺が会いたいなんて我が儘言ったら迷惑かもしれない、なんて思い先輩には黙っていたのだ。
 だからこそ先輩が俺と同じことを考えていてくれたことが本当に嬉しい。



「これで問題は解決しましたよね?ということでこれからはいつでも名前で呼んでくれますよね!?」

「えっと……その……」

「まだ何かあるんですか!?」



 俺の名前を呼ぶのにそんなに先輩の中では沢山の困難があるんですか!?



「ひ、光くんも僕のこと名前で呼んでくれたら……ちゃんと呼ぶ、から」



 へ?あれ?



「俺、名前で呼んでませんでしたっけ………?」

「いっつも先輩、先輩……だよ?」

「あっ………」

「光くん僕には名前で呼べっていうけど、その、光くんは僕の名前あんまり呼んでくれてない、よね……?」



 まじか俺。自分としてはあんま気にしてなかったから気付かなかった……。でも確かにこう、改まって名前を呼ぶってなると少し恥ずかしいな……。 



「と……透さん」

「ひ、光くん……」






「ねぇーママー!あのお兄ちゃん達なんで顔真っ赤なのー?」

「こら、見ちゃいけませんっ」






 うわーっ、恥ずかしい!!あ、せん…透さんも赤くなってる可愛い……



「光くん!か、帰るよっ!」


 二人して顔を赤くして慌ててその場を去ろうとするが、地面に鞄を置いたままだということに気が付く。


「は、はい!!って透さん鞄置いたまんまですよっ」

「うわぁ!ごめん!」





 あぁ、やっぱり透さんは可愛いです。




end.


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