01

森田 光(17)×佐竹 透(18)








「せっんぱーーーい!!!」

「うわぁっ!」








 教室を出ると先輩の後ろ姿を見つけ勢い良く飛びつく。すると先輩の可憐に見えるが程良く筋肉の付いている体は少しよろけた。



「森田くん、ビックリするからやめてよっ……」



 あぁ先輩今日も可愛いなぁ〜。もう俺先輩が居れば他には何もいらないな。いつか先輩から僕も光がいれば何もいらないよ……なんて言われたいっ!!って……



「先輩、何回言えば分かるんですか!森田じゃなくて名前で呼んでって言ったでしょ!」

「だ、だって学校だしなんか恥ずかしいじゃんか…」

「そんなこと言わないでくださいよぉ!ねぇ先輩、俺たちの関係って何でしたっけ?」



 そう、先輩は学校で俺の名前を呼ぶのを恥ずかしがって二人きりの時以外恋人になる前のように名字で呼ぶのだ。
 でも俺は学校だろうがなんだろうが先輩の鈴の音色のような綺麗な声で名前を呼んでほしいと思っている。
 


「こ、恋人だけど…」

「正解!普通恋人といえば名前で呼び合うものだと思うんですよ。それとも先輩は俺の名前なんて呼びたくないの?」

「そんなことないよ!!……でもやっぱ恥ずかしいし……」

「もう!そんなこという子にはこうだ!」



 いつまでも恥ずかしがってる罰としてくすぐりの刑をくだす。まぁ俺が先輩に触りたいだけなんだけど、それは秘密ってことで。



「こちょこちょこちょー!」

「ひゃっ!んん、ぁっあぁ…ひっ」

「ちょっと!!何エッチな声出してるんですか先輩!!そんな声可愛い声聞いていいのは俺だけなんですからねっ!?」

「エッチ!?と、とにかく名前では呼ばないからっ!じゃあね!」



 先輩は口早にそう言い終えると逃げるように走り去っていってしまった。



「あっせんぱぁーい!…………はぁ」



 今日も逃げられた……なんでそんなに恥ずかしがるかなぁ〜。俺はただ先輩とラブラブイチャイチャしたいだけなのに。まぁそういう照れ屋さんなところも可愛いし好きなんだけどね!



「今日も佐竹先輩脱兎のごとく逃げて行ったな?ふはっ」
 


 俺に声を掛けてきたのはクラスメートの高橋。高校に入ってから知り合ったが友人の中では一番仲がいい……んだと思う。はぁ。



「なんだよ……見てたのか」

「そりゃ廊下のド真ん中であんな漫才みたいな会話してたら目にもつくってもんだろ」

「漫才じゃねえよ〜こっちは真面目なんだってば……」

「そろそろ授業始まるから教室戻るぞ森田ー」

「おー……」 



 先輩と離れて三分。もう寂しくなってきた。このままでは一時たりとも先輩と離れられない体になってしまうのではないだろうか……!!それはそれで幸せだなぁ…うへへ。





















 

 

「はぁ………」




 何とか今日も逃げられた。こ、恋人なんだから逃げるっていうのはおかしいかもしれないけど仕方ないのだ……。


 最近こんな奇妙な行動を取り始めたのにはちゃんと僕なりの理由がある。何故かというと……




「おーい!佐竹!授業始まるぞー」




 廊下をとぼとぼ考え事しながら歩いていたら想像以上に時間が経ってしまっていたらしく、友人が教室から顔だけを出し僕にそう呼びかける。



「あ、ごめんありがとう」

「お前がぼーっとしてるって珍しいな?何かあったか?」

「…いや、何でもないよ。次の授業のことを考えてただけ!」



 僕の考えていたことを話したとてしも理解してもらえないだろうと判断し全く違う返事をする。




「全くお前は勉強熱心だなー。そういやお前大学どこ行くんだっけ?もう決まってるだろ」

「…あぁ、うん。ここから一番側の大学にーー」






ーーキーンコーンカーンコーン






「あ、話はまたあとでな」

「うん、そうだね」



 僕も友人もあからさまに声のボリュームを下げ、そう会話すると急いで席に着きノートと教科書を取り出し授業に集中をする。まぁ授業といってももう二週間で卒業だからそんな大した内容ではないが。







 卒業式まで光くんの名前で呼んで下さい攻撃から逃れられるだろうか。






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