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樋口 和己(22)×宇佐美 真(22)








「この間買い物付き合ってくれてありがとうね!また行かない?」

「…あぁ!うんいいよ!」




 まただ。




「……宇佐美」
「あ、樋口いたんだ。何か用?」
「…いや、別に用はないが……。邪魔してすまなかったな」



 俺の恋人であるはずの宇佐美と一緒に居た女の二人を残しその場を去る。
 




 最近はいつもこうだ。半年前宇佐美に告白され付き合いだし、順調にいってると思っていた。今では邪魔者扱いだ。


 それが一ヶ月前くらいからおかしなことになっている。宇佐美にデートの誘いを持ち掛けても女と出かけるからいけない、話しかけようとすれば必ず側に女がいる。それに素っ気ない態度……。




 これは浮気だろうか……。あいつから告白してきたとはいえ実際付き合ってみたら男は無理だった……とか。俺はあいつに告白される前から想いを寄せていたため付き合えるとなったときは本当に嬉しかった。



 でも無理をさせてるようなら……俺から別れを告げてやらなければいけないんだよな。
 なんだかんだで最初に付き合おうと言い出したのは自分だから別れようと言いにくい、なんて宇佐美は考えているんだろう。
 

 だから俺から別れを切り出してもらうよう最近よく女と一緒に居るのだろう。



 思い立ったが即話をするために宇佐美へ約束を取り付けるメールを作成する。



“今週の土曜空けておいてほしい。話したいことがある。”



 そう本文に書き込んで送信ボタンを押す。……送信完了。

 

 半年間恋人という関係でいれただけで充分だったんだ。


 ーーピコーン


 返事が返ってきた。




“分かった、樋口の家に行くから。”
 


 
 土曜日までに心の準備をしなければ。





 


















 


 


 樋口が廊下の向こう側から歩いてるのを見つけ、徐に側にいた女子と仲良く見えるよう会話を始める。


「宮野さんこの間買い物付き合ってくれてありがとうね!また行かない?」


 ありもしない思い出話をふっかける。彼女は突然振られた身に覚えのない内容に動揺している様子だ。ウィンクをして少し合わせてもらう。


 話しかけてくる樋口に冷たく対応する。俺だって本当はこんな態度取りたくないけど仕方ないだろ。

 樋口が完全に居なくなったことを確認してから話を合わせてくれた女の子に声を掛ける。



「急にごめんね、吃驚したでしょ? ちょっとした理由があってさ…」
「確かに吃驚はしたけど大丈夫だよ! じゃあ私はこれで!」
「ありがとうね!」



 そう言って彼女は立ち去った。


 こんな事をするのにもちゃんと理由がある。

 樋口は付き合い始めてから今まで一度も好きだと言ってくれていない。俺のこと好き?って聞いてもあぁ、とかもちろん、とかそんな返事しかしてくれない。


 告白したのだって俺からだから付き合ってもらってるようなもんだって分かってはいるけどさ、好きの一言くらいくれたっていいじゃないか。

 

 だから俺はそんな樋口に嫉妬させれば好きだって言ってもらえると思い、ここ一ヶ月何かしら樋口に冷たくあたり女の影があるように見せている。




ーーピコーン



 メールだ……って樋口!? 普段はメールなんて滅多に送ってこないためなんかワクワクしてしまう。


“土曜日空けておいてほしい。話したいことがある。”


 これってつまり俺の作戦成功ってことじゃないか……?……よっしゃ!一ヶ月間頑張ってきたかいがあったぜ…!


 そう思い鼻歌を歌いながらルンルン気分でメールを返す。あくまでも文面では冷静を装う。


“わかった、樋口の家に行くから。”



 よし、これで土曜日からはラブラブな毎日が…………!!

 



 早く土曜日にならないかなぁ。







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