03
「それで小嶋さん、僕に話したいことって?」
彼女に連れられて来たのは人通りが少ない裏庭。こんなとこまできて何の話なんだろうか。悠斗一人で弁当食べてるのかなぁ……。
「あ、……そ、その…」
「ん? あ、もしかして話そうと思ってたこと忘れちゃった? それだったらーー」
黙り込んでしまい話し始めないため何を話そうとしていたのか忘れてしまったのだと思った。俺もよくあるからな〜。
「あ、あのね!!」
「う、うん!」
今まで黙り込んでいた彼女が突然大きな声を出したため条件反射で自分まで大きな声が出てしまった。
「私、入学式で山本くんのことを初めて見たときからずっと好きでした!!」
顔を真っ赤にしながらそう言うとそれきり彼女は俯いてしまう。どうやらこちらの出方を窺っているようだ。
って、へ?
「……え!?」
時間がたつにつれ漸く彼女の言葉の意味を理解する。
「小嶋さんもしかして今こ、告白した……? それで返事待ってる……よね?」
小嶋さんは小さく肯いた。
「あ、その……ごめんなさい。気持ちは、その……すごく嬉しいんだけど、俺好きな人がいるんだ。多分俺は一生その人のことを好きだと思う。……だから、ごめん。」
告白なんてされるの人生で生まれて初めてで、変な緊張で言葉が途切れ途切れになってしまった。
「俺、告白とかされるのって初めてで……何て返事が正しいのか分からないからもしかしたらすごい失礼な言い方になってるかもしれないけど……今伝えたのが俺の素直な気持ちだから」
「うん、分かってたよ。はっきり言ってくれてありがとう!」
彼女は告げると俯いていた顔を上げた。今まで見てきた小嶋さんの中で一番綺麗な顔をして笑っていた。
「山本くんは加藤くんのことが好きなんだよね?」
「え!?な、何言ってるんだよ、そ……そんなことーー」
「じゃあ違うの?」
「……………」
「うふふ、別に隠さなくても大丈夫だよ。私は結構前から気付いてたから」
な、なんで俺が悠斗のこと好きだと分かったんだ……!? 思わず動揺が隠せない。
「……な、なんで気付いたの。その、俺があいつのこと好きだって…」
「私山本くんに一目惚れしてからね、密かに山本くんを視線で追うのが毎日の楽しみだったの。そしたら山本くんが加藤くんのこといつも幸せそうに見つめているのに気が付いちゃったの」
そ、そんなに俺って分かりやすかったのかな……。……っ!? だとしたら悠斗にも俺の気持ちバレてっ……
「あ、多分私以外はほとんど気付いてないと思うから」
俺が考えていたことを表情から察したのか安心させるようにそう呟く。はぁ〜……よ、よかった。
「山本くん、何で加藤くんに告白しないの…?」
「だって男が男になんて、気持ち悪いだろ……」
「そうかな? 私は恋愛に性別なんか関係ないと思うけどね。」
「それでも、あいつは嫌がるだろ……」
自分で言いながら辛くなる。馬鹿みたいだな俺。
「え? だって加藤くんも……あ、なんでもない!」
「へ? う、うん。」
「………こういうのはちゃんと自分で気付かなくちゃね。」
彼女は小さい声で何かブツブツ呟いている。上手く聞き取れなかったため聞き返す。
「今何て言ったの? よく聞こえなかーー」
ーーキンコーンカンコーン
「あ、もう昼休み終わっちゃうね。告白の返事くれてありがとう。山本くんも頑張ってね!」
何を頑張ればいいのか分からないがとりあえず返事をしておく。完全に彼女のペースに流されている気がしてならない。小嶋さんってこんな人だったっけ……?
「う、うん……?」
今日の昼休みは今までの学校生活の中で最も過激な二十分だったかもしれない。
あ、昼飯食べてない。
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