02




ーーキンコーンカンコーン…





 昼休みを知らせるチャイムの音で現実と夢の世界をさまよっていた俺の目は覚めた。


 朝は結局時間に間に合わず遅刻し、担任の村本に二人して怒られた。村本は規則に厳しくネクタイの結び方から爪の長さまで、そのチェックは抜け目ない。遅刻なんて言語道断だ。
 
 要はそんなことを考えながらお昼を食べるため弁当を持ち悠斗に話しかけようとした。


「あのっ、山本くん……ちょっといいか
な」


 その時俺に声を掛けてきたのは……確か小嶋さん……だったかな。今まで一度も話したことが無かったため名前を思い出すのに少々時間が掛かった。ていうか俺みたいな平凡に何の用だろう。


「どうしたの?」
「その、ここじゃちょっと……」


 彼女はモジモジしながら小さい声でそう言った。


「そっか、じゃあ外いこっか。」

 そういって外に出ようとした時に悠斗に背後から話しかけられる。


「要ー、弁当食おうぜー!」
「あ、悠斗、ちょっと用事出来たから今日は弁当一緒に食べれない! ごめんな!」

 
 小嶋さんを待たせているため少し口早に謝りの言葉を伝える。


「あ、あぁ! 了解。つってもどうしたんだよ?」
「小嶋さんが話したいことがあるって。ね? 小嶋さん」
「う、うん……」


 小嶋さんの白くて透明感のある頬に赤みがさす。


「…ふーん。要が呼び出されるなんて珍しいな。まあいってこいよ!」
「うん! じゃあ行ってくる」


 会話が終わったと判断し俺は小嶋さんと共に教室の外へと歩みを進める。
 そのときの俺は悠斗が複雑な心境で自分を見つめていたことなど気付かずに、小嶋さん本当俺に何の用なのかな〜なんて呑気に考えていた。





 



















 昼休みが始まり、前の授業のノートを片付ける。昼飯はいつも屋上で大好きな要と二人で食べている。俺は要と二人きりでのんびり過ごせるこの時間が心地よくて好きだ。
 弁当を手に取りいつも通り今日も要を誘いにいく。



 あれ、いない。いつもこの時間ならまだ机に座ってうとうとしてるのに。教室を見渡すと教室を出ようとしている要の姿を見つける。


 昼飯を一緒に食べようと誘うと、要と前を歩いていた女まで立ち止まる。ん? 何でこいつまで……そしたら要に用事が出来たから今日は一緒に食べれないと断られてしまった。


 今まで高校に入って以来こんなことは無かったため動揺を隠せない。理由が気になり訪ねると小嶋に呼び出されたらしい。あぁ、だからこの女も止まったのか。
 納得はいっていないが笑顔で要を送り出す。








 はぁ、絶対あれ告白だよなぁ〜。てか要あの感じは今から告られるって気付いてないよな……。


 まぁ俺はあいつのそういう鈍い所も好きなんだけどな。
 他にも、寝坊して急いで待ち合わせに来るときの直せてない寝癖とかも好きだ。そういえば今日も寝癖ついたまんまだったな……ふふ、可愛いなぁ。

 俺が悩んでいる時には相談に乗ってくれるし、落ち込んでる時は落ち着くまで何も言わずただ側に居てくれる。そんなところも大好きだ。


 要の好きなところを数えだしたら切りがない。好きだなぁ。ぼんやり考えながら要の笑った顔を脳内に思い浮かべる……くぅ〜思い出すだけで顔のニヤケが止まらない。そうして一人幸せに浸っていると友人Aが話しかけてきた。


「……い、おーい悠斗くーん!!」


 くそっ、俺の要妄想タイムを邪魔しやがって。何様のつもりなんだこいつは。


「なんだよ友人A」
「友人Aってなんだよ!! 山口だよ!!!!」 


 馬鹿でかい声で突っ込みを入れてくる友人A。うん、良い突っ込みだ。お前は芸人に向いてると思う。


「はいはい……で、友人A、用件はなんだ」
「だから山口だよ!!……もういいや、えっとなんだったけ……あ、そうそう! 一緒に昼飯食おうぜ」


 常に馬鹿でかい声で喋るこいつのせいで頭が痛くなってくる。


「なんでお前と食わなきゃいけないんだよ。」
「愛しの要ちゃんを女に連れてかれちまって昼飯食う相手いない可哀想なお前を見かねて誘ってやってるんじゃねーか」


 そういってふふんと鼻で笑ってくる友人A。おい、何様のつもりじゃこら。


「おい、要の名前を勝手に呼ぶなよ。俺の要が汚されるー」
「はぁ、全く本当にお前は山本が大好きだな〜。そんなに好きなら告白しちまえばいいのに、何でしないんだよ」
「無理に決まってるだろ、そんなの」



 言われなくても俺だって何度も告白しようと思った。要のことを好きだって自覚したのは中一の頃。中学に上がってから要に急に友達が増え俺との時間が前より少なくなった時期があった。その時俺から要との時間を奪っていったクラスメート達にとてつもない苛立ちを覚えた。その感情は紛れもない要への独占欲だったのだ。


「告白なんてしてみろ……きっと気持ち悪がられてその瞬間今の関係は崩壊だ……はぁ〜」
「そんなん言ってみねーと分かんないんだろ」

 そう返事をしながら俺の机に前にあった机をくっつけて弁当を広げ始める友人A。おい、まだ一緒に食べるとはいってないぞ。


「だってお前考えて見ろよ……17年間一緒に過ごしてきた幼なじみに急に告白されてお前だったら付き合えるか? しかも男だぞ?……そんなの物語のなかだけだっつーの。要は普通に女の子好きだろうし男の俺に告白なんかされたら気持ち悪いだろ」



 だんだんと絶望的な気持ちになっていく。でもやっぱり告白なんて……。想いを告げて要と話せなくなったりするくらいなら今のまま要に一番近い存在のままでいたい。


「そんなもんなのかねー」
「そんなもんなんだよバーカ。俺も弁当食お……」


 今日に限ってのり弁当かよ母さん……。悲しい時に食べるのり弁当はいつもより味がしない気がした。





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