6-3



柚子side



「おめーのせいだぞダメツナ!!」



ハッ、



気が付けば野球などとっくに終わっていて、綱吉君に怒鳴っている声が聞こえた。


「だからチームに入れたくなかったんだ!」

「トンボがけ一人でやれよ!」



『それはちょっと酷すぎるんじゃないかな、』


『そうだよ』



突然の俺らの登場で、
彼等はすこし戸惑った表情をして、続けた。





「でもダメツナのせいで負けたんだ、しょうがねーだろ!?」




『それは違うんじゃない?君達にも原因はあると思うけど』

『そうだよ!ツナだけが悪いんじゃないよ!』



姫、可愛いぞ。あ、ごめん黙る。
彼等は目をきょろきょろさせて、言葉を探している様だった。
ふん、まだまだガキだな!



「と、とにかくダメツナに任せたぞ!

「し、しっかりやれよ!」


『あ、ちょ!』



バタバタ、慌てた様に走り去る彼等の背中を睨み付けた。

どこまで腐ってんだ奴等!こんな可愛い綱吉君に仕事押し付けるなんて・・・キィイイイ!
これだからガキは・・・!


だけど、どんなに心の中で暴れ回っても彼等は既に行ってしまっているし、手伝えるのは、






『・・・はぁ、綱吉君、手伝いますよ』


『僕も!』


俺達しかいないよね、って話。
いや山本も来るのだけど。





「えっあ、でも俺のせいで負けたんだし・・・!」


『違いますよ、』


にこり、笑ってやれば彼は眉を八の字にして笑った。




「助っ人とーじょーっ」

「山本!?」



『柚子、原作ってこんな感じだっけ?』

『うん。あってます』

『そっか!』


ボソボソ、
山本の登場でワタワタとトンボがけを始める綱吉達の隙をみて
しゃがみこみながら影で話し合っている僕達はちょっと怪しいじゃないかと思う。


「最近、お前スゲーだろ?剣道の試合でも球技大会でもさ。オレお前に赤マルチェックしてっから!」


「えっ」


お、キタキタ。

俺は姫を少し遠くに引き摺っていく。
わけかわめな姫の頭の上には「?」が浮かんでいる。

畜生幼女め!←

『山本が相談する所、もうすぐですから!』


そういえば頭の上の「?」が「!」へと変わる。
おま、どうやって出してるの・・・(今更


「それにひきかえオレなんてバカの一つ覚えみたいに野球しかやってねーや」


「なっ何言ってんだよ山本はその野球がすごいじゃないか」




「それがどーもうまくなくってさ」

「え?」


綱吉君が聞き返す。
それを僕達はトンボがけをしているフリをして、こっそりと聞いている。


「ここんところいくら練習しても打率落ちっぱなしの守備乱れっぱなし。このままじゃ野球始めて以来初のスタメン落ちだ



ツナ・・・オレどうすりゃいい?」


彼が、眉を寄せて苦しそうな表情をした。
僕達はそれを見ているだけ。
何も言えない。・・・そう言えないのだ。


「え゛え゛!」





「・・・なんつってな!最近のツナ頼もしいからついな・・・・・・」


コロっと、山本が表情を変えて、笑う。
眉を下げて困った表情の綱吉君は、口を開いた



「やっぱ・・・努力・・・しかないんじゃ・・・ないか・・・な・・・」



嘘が下手すぎだ、
思わず笑いそうになった口を慌てて手で塞ぐ。

いやいやここで笑ったら終わりだ、俺!
いつもの無表情で突っ切れ・・・!


姫が、不思議そうな顔をした。
うん、可愛いよ姫・・・!すまん黙るよいい加減。アッー



「だよな」

「へ!?」



「いやオレもそーじゃねーかなって思ってたんだ。さすがツナ、気があうねぇ」


「そ、そう・・・?」



「お〜し今日は居残ってガンガン練習すっぞーっ!」


「ハハハ、」


嬉しそうな表情で綱吉君は笑った。



違う、違うよ。
努力だけじゃダメなんだよ。

努力だけじゃ、何も・・・





変わらない、よ。



ふと、あの頃の自分が見えた様で、ハッとする。
違うんだ。





『・・・僕は、何を求めていたんだっけ、』

それすらも、忘れてしまった

ぼそりと呟く。



『柚子?』

きょとん、とした姫が僕を見つめる。




『何でもないっ』





仰ぎ見た空が、やけに蒼かったんだ。



2010/12.23 三春柚子






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