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柚side

『ふぃーっ重い・・・!姫、どうやって持ってきたのでしょう。』

基本、トリップしたら物を持ってこれないと聞きましたが・・・。


『まぁ、それは俺も同じですね。』

俺の手にあるのは、小さなバッグ。
呪文を唱えている時、吸い込まれる感じがして、咄嗟に掴んだのがこれだった。
中身は財布、スケッチブック筆記用具、ミンティアなどの清涼菓子。俺これがないと死んじゃいますからね。
それと、セッタンタセッテが入ってたはずだが、無くなっている。


まぁ、いいか。
気にしたら負けですよね。


『さて、ママンの手伝いに行きましょう。』


不器用ですが、やる時はやれる!・・・・と信じたいですね。


ふんふーん♪と鼻歌を歌いながら、階段を下りた。



――――――――――





『うわぁっ!!』


『わ、柚何してるの!』



『うひーっ零しちゃいました・・・っ』


俺と姫の視線には、床に散らばった野菜さん達。
持ち前の反射神経などで全部零すことは無かったが、半分位零してしまった。



「あらあら・・・」

『すみませんママンー!』

とりあえずスライディング土下座をした。
中々できないぞ、スライディング。



「ふふ、大丈夫よまだ半分残っているから、それを食べましょう?誰にでも失敗はあるんだから気にしなくてもいいのよ!」


『ま、ママン・・・!』


なんて素敵な人だろうか!



「柚子、」

ふと、母さんと重なって見えた。
命よりも大切だった、お母さん。

彼女を残して、俺はこの世界にいて、ママンと呼べる人がいる。
悲しみで染まった彼女の顔を思い浮かべて、頭を振った。
ちくり、胸が痛んだ。

『ごめんなさい、』


誰に対してかは分からないけど、小さく、呟いた。
俺は気付かなかったんだ、二人が辛そうに俺を見つめていた事に。




     2010.12.6 三春柚子



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