「…試合負けた。すまんのぅ」
「テニスが楽しめたのならそれでいいから、泣かないで
泣いてなんかおらん、
そう言おうとしたんじゃが
視界がゆっくり歪んでいく
「泣いとらん…泣いとらん…泣いと…」
俺は男じゃき
好いとう女の前では泣きとうなか
やのに、
こいつは…
「楽しかったんだよね。お疲れ様」
俺より背ちっさいくせして
俺を包み込むように抱きついてきた
「俺は…負けてもうたんよ…
じゃけお前に…」
合わせる顔がなか
俺の勝利を贈りたかった
「今はたくさん泣いて…」
俺の為にこいつは涙を流してとる
「お前さんは笑いんしゃい
俺のも直に止まる」
こいつの涙を拭ってやると
「よく頑張りました!」
にこっと太陽にも劣らん笑顔を向けられて
止まりかけた涙がまた俺の頬を伝い始めた
(止まるまでぎゅーてしてあげるね)
(…!! 恥ずかしいからやめんしゃい)