140字(twnovel) No.5

 
■Log ; 2013年9月前半(No.97〜130)

9月前半〜
130.一日の始まり/129.小さくなっていく灯/128.某怪獣狩り/127.プリンターの神様/126.あなたの幸せを

125.101回目の/124.トゥクトゥク/123.買い物メモの忘失/122.夏が嫌いな男/121.所詮、夢の中でも/

120.虫刺され方が/119.愛しの睡魔/118.9.11/117.水どうコラボ限定品/116.永遠なんて

115.最果ての夜明け/114.贈る花/113.スイートルーム/112.知恵熱/111.贈られた花

110.世界で1つだけの歌/109.1から10/108.また明日/107.ファン/106.薄い壁/

105.壁の染み/104.不眠症/103.気持ちの整理術/102.方舟/101.未来ノート

100.君と僕だけの物語/99.聖痕にならない傷痕/98.進み出す/97.ただの僕

【ただの僕】
その夢にはカタチが無かった。ふにゃふにゃしているとか、色が無いとか、それ以前の問題だ。
あの物語の主人公、僕は彼と同じだと思っていた。でも、違った。僕は誰かの書いた物語の主人公じゃない。お姫様を探すことも、大切な人を失ってなくこともない。
僕は、ただの僕だ。


【進み出す】
時計の針が進む。
僕たちの時間が進む。
関係も進む。
進み出した先にある道は移り行く。
環境が変わる。
関係が変わる。
気付くと違う道の上。
でも時計の針は止まらない。
僕たちは進む。逸れないよう手を繋いで、進み出す。


【聖痕にならない傷痕】
道の先は暗闇だった。後にも先にもひけない、どん詰まりの状態だ。
君はもう諦めていた。どこにも行けないなら、ここでいい。なんて言いながら。
脇に刺さった滅亡の始まり。聖なる証になることのない穴が、君と僕を吸い込んでゆく。
(#世界もう滅ぼしたい協会 へ提供)


【君と僕だけの物語】
雲雀の声が聞こえた。
物語が始まった。
まだほとんど真っ白なページには、君の好きなところしか書いていない。
これはお姫様を探しに行くような、夢と冒険に溢れた物語じゃない。
ただただ日常を切り出した、君と僕だけの物語。
(#世界もっと愛したい協会 へ提供)


【未来ノート】
その未来ノートには、今日の私の出来事が書いてあった。
朝食に食べる物。学校に着く時間。昼休みに友達と話すこと。部活でうまくいったこと。帰り道、同じ部活のあの人に告白して、そして…
ビリリと破く。結果もわかっていた。
何度そのページ破いても、同じ結果になることも。


【方舟】
明け方の通り雨は、まどろんだ意識を洗い流すほど激しい。
しかし同じ方舟に乗った動物たちは、慣れた様子で寝たままだ。
どんなに荒れ狂った天候も、いつか過ぎて晴れ上がる。これは試練ではなく循環のひとつだと彼らは知っているのか、もしくは何も知らず在るものを受け入れている。


【気持ちの整理術】
気持ちの整理術、という本がある。
思ったことを声にする。文字を書く。絵を描く。歌を唄う。踊る。自己表現の仕方は何通りもあって、どれでも良いからやってみろ、と書いてあった。
いっぱいあってどれにするか悩むと、悩めるほどあなたに選択肢があるのは幸せだ、と書いてあった。


【不眠症】
真夜中に目が覚めた。いつもの事だと、気にせずそのまま起きる。
朝ごはんを食べて、家事をして、あれやこれやしている内に眠くなってしまった。
でもいま寝るとまた真夜中に目が覚めてしまうので、楽しい動画を見て寝る時間まで起きていたら、今度は興奮し過ぎて眠れなくなった。


【壁の染み】
壁の染みが広がっていく。じわじわと黒ずみ、壁紙を触るとじっとり湿っていた。
これは張り替えが必要そうだ、と思って業者を呼ぶと、壁紙を見た彼がヒッと叫んだ。
どうしました?と聞くと、どうしたんですか?と逆に聞かれた。
「この染み、人の形をしてますよね?」
「妻ではないですよ」


【薄い壁】
ご飯が炊けた合図。まな板で野菜を刻む音。
アパートは寝室とダイニングキッチンが、薄い壁で隣り合わせになっていた。ぼくは毛布に包まったまま、今日も聞こえるその音に耳をすませる。
あと少し、もう少し。
やがて「ご飯よー…」と、隣の奥さんの声が遠ざかっていった。


【ファン】
毎日、日記を書いている。内容は大したものじゃない。
今日、自分がしたこと。食べた物。君に伝えたかったこと。
直接手に触れられない、声もかけられない君へ、日に日に思いが募る。
ただの感想が、今では「好き」という言葉でいっぱいだ。
これをいつか手紙にして、事務所へ送るから。


【また明日】
世界が終わる前に、今まで歩いてきた道を一緒に歩く。カウントダウンをとるように、一歩一歩の足取りが重い。
「それじゃあ」また、という言葉を強調する。
年が明けても、また君と会えるように。
「また会おうね」
君もまた、同じ言葉を使う。
また、明日がちゃんと来ますように。


【1から10】
1を聞いて10は理解したが、5と6辺りが抜けていた。
しかも11と12を自分で追加した為に、ガタガタと伝達が乱れ始める。
「どうにかしないと!」
1から10を紙に書く。足りないところは補って、多いところは消して。
綺麗に並んだ1から10を、書いた紙がどこかへ飛んでった。


【世界で1つだけの歌】
鼻歌を歌いながら、あなたを待つ。
誰かがみんなのために歌ったラブソングではないよ。あなたに伝えたい言葉をつむぎあわせた即興曲。歌詞はなくてテンポはバラバラ。どこで盛り上がるかもわからない、今のふたりにおあつらえ向きな、世界で1つだけの歌。
(#世界もっと愛したい協会 へ提供)


【贈られた花】
一日一輪、花を届けられていた。
水仙、向日葵、秋桜、椿。
毎日花に囲まれて、幸せだと思っていた。
でもある日を境に、花は途絶えた。
しおしおと枯れていく花の水を毎日取り替える。
でも花が咲かない朝が来ることは、目に見えていた。
今更花に水を与えても、何もかもが手遅れだった。


【知恵熱】
届かない温もりを持て余している。温もりは時間が経つごとに熱を高め、暴発した熱は私の体に襲い掛かった。
「勉強のし過ぎで熱出た?」
「あともう少し勉強したら30位以内に届いたの…」
「あー。30位以内に入ったらスマホの機種変してもいいって、前にお母さん言ったもんね」


【スイートルーム】
閉じ込めた彼女を、引きずり出した。代わりに、自分が閉じこもった。
空調完備され、ルームサービスも充実したスイートルーム。
彼女には何でも与えたかったのに、そんなの余計なお世話と言われ続けた。
ああ、確かに。ここは最高だけど、誰もいない。
(@tensyou99 さんの #書き出し より)


【贈る花】
毎朝、君に一輪の花を届けよう。
桜、菖蒲、撫子、梅。
花を持つ手は枯れるまで、届けていくつもりだったのに。
花の命が短いよう、人の命もそう長くない。
素直に伝えられない言葉は全部、君に贈った花に捧げた。
だけどそんな遠回しなことより、花を持つ君のその手を握れば良かった。


【最果ての夜明け】
世界の最果てで夜明けを見た。
地上にあるものはほとんど浄化され、海は干上がり、月は消えたが、こんな世界にも日がまた昇る。
何十倍にも肥大して、吹き荒れる灼熱の炎が肉眼で見える太陽が。
夜明けと共に、今日もまた世界の浄化が始まる。
(#世界もう滅ぼしたい協会 へ提供)


【永遠なんて】
目の前に現れた吸血鬼は、血を吸う前に教えてくれた。
「血を吸われた者のほとんどは永遠に眠り、稀に永遠にワタシたちの仲間になる」
永遠なんて時間の概念が、どれほど気の遠いものかわからない。
でも目の前にいる素敵な人に出会えたことは、きっと私が眠る前に見る夢に違いない。


【水どうコラボ限定品】
今日も私は旅に出る。西へ東へ、あるものを探し求めて。
それは今の時期しか手に入らない、非常に貴重なものだ。
もし自分で作りだそうと思えば、実は簡単に出来る。移動を含めたコストも抑えられるだろう。
しかし私は求めているのだ。その限定商品を…
「あった!小倉トースト!」


【9.11】
12年前。
その映像はまるでアクション映画のワンシーンのようだった。
どこかに映画監督がいて、いつか「カット!」と声がかかると信じていた。
四角いテレビに映る、リアリティのないライブ映像。
何日、何十日経っても、元に戻らないふたつのビルが、心にくっきりと焼き付いている。


【愛しの睡魔】
朝になっても、睡魔が離れてくれない。
あと少し、もう少しと、布団の中で後ろから抱き着いてくる。
いやいや、もう仕事に行かないと。朝ごはんを作らないと。
あなたのことは大好きだけど、夜にまた会いましょうね?


【虫刺され方が】
外に遊びに行くと、必ず虫に刺される。
おとといは4ヵ所。昨日は2ヵ所。
なぜか全部、左太股で、刺される場所も近いからとても痛々しい。
そして今日、また1ヵ所刺されてしまった。
「イタいね」
「ほんと、痛いし痒いし、困るよ」
「いや、なんで北斗七星なの?わざと?」
「違うよ!」


【所詮、夢の中でも】
夢の中で大好きなあの人に会った。
絶対に言ってもらえない愛の告白を受けて、天にも昇る気分でキスをした。
でも残念なことに、あの人は夢の中では赤ちゃんだった。
恋人というよりは、保母さんになった気分。


【夏が嫌いな男】
だから夏は嫌いなんだ、本当に。少し動くと、ポタポタ汗が止まらない。さらに腕なんて組まれたら、ぼくはとろけて死んじゃうよ。君もわかっているだろう?ぼくってそんなに、ホットじゃない。

スノーマンさんと付き合って半年。グチグチ言っても、デートは毎日してくれる。
(@hmoegi さんの #書き出し より)


【買い物メモの忘失】
買い物をする時は、いつもメモを持って行く。でも今日はうっかり忘れてきてしまった。
うーん。何だっけ。
まず今夜の晩御飯は、ハンバーグ?ということは、挽き肉と玉ねぎと。
でも帰ってきてメモを見ると、今夜は餃子だった。皮を買い忘れてたので、今夜は皮なし餃子になった。


【トゥクトゥク】
インドネシアに行った記念に、派手に電飾された自転車に乗った。あまりに派手だから、目立って恥ずかしいんじゃないかと思ったけど、同じような物が何台も走っているから逆に目立たなかった。だから買い物を終えた後。妻が先に乗っているはずの電飾自転車を探すのに、ひと苦労した。


【101回目の】
100回失敗したら、101回挑戦したらいい。
そんな簡単そうに言わないで。100回挑戦した私は、99回の挫折を味わっているの。次で記念すべき100回目の挫折になるわきっと。何度同じことをしてもダメだって、そんなのもうウンザリとするくらいわかってる。
でもまたするの。
(14日の#twnvdayへ提供)


【あなたの幸せを】
何回あなたに告白したか、きっとあなたは覚えていない。フラれる度に泣いてもなお、私はあなたのことが好きだった。
でもあなたが生涯を共にすると選んだのは、あの人だった。だからやっと諦めがついたわ。あなたの選んだ幸せは、奪いたくない。お幸せに、とは言えないけどね。
(14日の#twnvdayへ提供)


【プリンターの神様】
何度も同じところでエラーするので、もしかしてこのプリンターが壊れてるんじゃないかと思った。
コンコン。もしもし?
「はいってます」
紙詰まりをしているのかな、と中を開けると、ぺらっぺらのプリンターの神様が、給紙口で詰まってた。あんたがかい。
(14日の#twnvdayへ提供)


【某怪獣狩り】
何度も同じところで三落ちするので、もしかしてこのモンスターがチートなんじゃないかと思った。
「上位武器で余裕」「G級装備で余裕」「回避距離+2で余裕」
いやいや。下位ハンターには何のアドバイスにもならないから、それ。
でも集会場に来てくれた、みんなとこれから再挑戦!
(14日の#twnvdayへ提供)


【小さくなっていく灯】
ずっと一緒にいると思っていた。その概念に触れるまで、あなたはいつまでも生きていると。
でも忍び寄る影を消すことは誰にも出来ない。光がいつまでも輝き続けることはない。
小さくなっていく灯を見守ることが、大人になった自分の役目であることを、あなたは静かに教えてくれる。


【一日の始まり】
ブロロ…とバイクの排気音で目が覚める。
毎朝ほとんど同じ時間に聞こえるそれは、電池が減ると遅れてしまう時計よりも誤差が少なく、無機質な電子音より温かい。
郵便受けに挟まれた新聞を開いて、熱いモーニングコーヒーに口を付けると、今日も昨日と同じような一日が始まる。


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