140字(twnovel) No.4


Log ; 2013年8月(No.67〜96)

8月〜
96.懐疑4-4/95.懐疑3-4/94.懐疑2-4/93.懐疑1-4/92.開発中/91.黒く滅ぼす少女

90.子守唄/89.いつまで/88.赤札/87.愛の形/86.集会

85.ねこねこ動画/84.ハナ/83.何でも食べる猫/82.タマが子供を産んだ/81.よみがえり

80.盆提灯/79.800回目の記念日/78.理想郷/77.カエル?/76.階段で待つ女

75.お化け屋敷/74.猫の鳴き声/73.備え付け家具/72.穢れたマーメイド/71.西瓜の花

70.蛇の子は蛇/69.白蛇/68.戦争孤児2/67.戦争孤児



【戦争孤児】
内乱が絶えないこの国では、戦争孤児を軍人として育てている。
サバイバル術などの厳しいカリキュラムをこなした子には、食事と寝床とこの国で生きる術が与えられた。
軍人に仕上がった子供たちは、最優先で戦争孤児を探して保護する。もしいなければ、作るまで。


【戦争孤児2】
カリキュラムが完了してすぐに初任務に就く。上官の指示通りに動けるかを判断する、実践的な最終試験だった。受験者は12名、合格者は7名。そして新たに生まれた戦争孤児が6名。
「上々だ」と上官は満足げに微笑む。これが上々なのか?
形見になった同期の眼鏡が、左手に食い込む。


【白蛇】
庭に白蛇がいる、と祖母は言った。
「楓の幹にいたよ」
庭をいじる祖母が蛇に噛まれないか心配したが、大丈夫と言われた。祖母は巳年生まれだ。
それからしばらくして、白蛇が車に轢かれて死んだと言って祖母が悲しんでいた。
そして、楓の木が切った後、祖母は3度死にかけた。
(#twnovel納涼祭 へ提供)


【蛇の子は、蛇】
祖母は巳年、その母親も巳年だった。
巳年は霊感が強いらしく、祖母は母親が死んだ後、長い間夢枕に立たれて大変だったと話していた。
ところで、祖母の末娘がまた巳年。
祖母もいつか、叔母の枕元に立つ予定なのかもしれない。
(#twnovel納涼祭 へ提供)


【西瓜の花】
「西瓜の種を出さなさいと花が咲くよ」と言われたが、聞く耳をもたなかった。
数日後、ヘソから双葉が出た。
また数日経つと、双葉の間から茎が伸びて白い花が咲いた。
茎を摘んで花をちぎろうとすると、ムズムズとする。痛気持ちいい。でも力を入れて抜いた。鮮血が飛び散った。
(#twnovel納涼祭 へ提供)


【穢れたマーメイド】
元彼女が妊娠した。
いま付き合っている俺の先輩と結婚して、認知してもらうそうだ。
「でも養育費はあなたから請求するわよ。この子の本当の父親はアンタなんだから」
すみません先輩。こんな女、尊敬する先輩には似合わない。
穢れたマーメイドは、俺がこの手で海に還します。
(#twnovel納涼祭 へ提供)


【備え付け家具】
某賃貸マンションの備え付け家具として、一人の男が椅子に座っていた。
「お構いなく」
そんなわけには…と、一緒に寝食を共にする内に愛着がわいた。
部屋の明け渡す日、別れの酒を交わしたが、途端に意識を失って…
目を覚ました時、男は部屋から消えて、俺が家具になっていた。
(#twnovel納涼祭 へ提供)


【猫の鳴き声】
一週間前に、飼い猫の一匹が死んだ。
それからお父さんが、寝室でその猫の鳴き声がすると言い始めた。
寝室には猫の写真と骨壷を置いていたので隣の部屋に移すと、鳴き声はしなくなったという。ただ他の猫たちは、誰もいない隣の部屋の前で鳴くようになった。
(#twnovel納涼祭 へ提供)


【お化け屋敷】
夏まつり会場にある、お化け屋敷に入った。
頭に矢の刺さった落ち武者の蝋人形も、頭上から突然落ちて来る生首も、最後の方で追い掛けて来るミイラ男も、全然怖くなかったし!と話していたら、何故かみんなの顔が青い。
「今年の夏まつり会場に、お化け屋敷なんてなかったぞ」
(#twnovel納涼祭 へ提供)


【階段で待つ女】
一夜の限りの女にストーカーをされた。
何度引っ越してもついて来て、階段で待ち伏せされる。
だからエレベーターがあるマンションに引っ越したが、非常用階段にそいつはいた。
逃げようと10階から1階まで降りた時、女は俺の目の前に落ちた。
「私と赤ちゃん、置いて行かないで」
(#twnovel納涼祭 へ提供)


【カエル?】
飼っているカエルは、どこかおかしい。
ゲコゲコと鳴くと頬がぷっくり膨らんで、宙に浮かぶのだ。
「それ、本当にカエルなの?」
友人がそう言った翌日。
空中散歩からカエルが帰ってくると、仲間を一匹連れて来た。じっと僕を見つめて鳴かないカエル。同じ日、友人が行方不明になっていた。


【理想郷】
眠れない夜が来る。
外では罵声と銃声が響き、もしくは野獣の狂ったような息遣いが聞こえる。
なんてことはない。
目を閉じから広がる空想を、楽しんでいるだけだ。
昨日にも明日にも意識は向かない。あるのはただの理想郷、それだけだ。


【800回目の記念日】
この時のために用意した花束を手渡した。
今日は何かの記念日だったの?ごめんなさい覚えてないわ、と謝る君を抱きしめる。
覚えてないのは当然だ。これから僕が君に「好き」と言う。それが800回目の、記念なんだから。
(#世界もっと愛したい協会 へ提供)


【盆提灯】
仏間の天井から吊られる盆提灯を、ずっと見ているのが好きだった。
昼夜を問わず静かに回転し、いつもは静謐なる部屋が一時の賑やかさを見せる。遊園地のメリーゴーランドのように。
もうすぐ帰ってくる、おじいちゃんは、何に乗って来るのだろう。


【よみがえり】
ゆっくりと廻る大きな輪の元へ、茄子でできた馬が迎えに来た。
「かえりましょう」
提灯の明かりを頼りに、1年ぶりの我が家へ。
3歳になったひ孫が、仏壇の蝋燭の火に手を伸ばしたので慌てて消したり、線香を絶やさない家内に感謝したり。
あっという間に、またお迎えが来てしまった。


【タマが子供を産んだ】
タマが子供を産んだ。
ミーミーとせわしなく鳴く子達を、飼い主である僕も一緒に世話をする。
でも、我が家はタマだけで十分だ。
みんな里子に出すために、里親募集板への書き込みを妻が行い…
にしても、まさか猫型ロボットのタマが子供を産むなんて。取扱説明書に書いてなかったよ。
(14日の#twnvdayへ提供)


【何でも食べる猫】
うちの猫は何でも食べる。
ねこまんまはもちろん、魚も肉も野菜も。果物ではメロンが大好物だ。チーズなどの乳製品も好きで、食べる前から舌なめずりをする。
ある日、猫缶で指を切り、流れた血が床に落ちた。それを猫が舐め、こちらを見てウーと鳴く。良かった、好みの味じゃなくて。
(14日の#twnvdayへ提供)


【ハナ】
あったかい。
冷たくなった足元に、ハナがいた。
普段は家族にも近寄らず触らせてくれない子が、私と目を合わせないようお尻を向けて、布団の上で丸くなっている。
私が咳をしても、そこがずっと寝床だったと言わんばかりに動かない。
あったかくて、今度はぐっすり眠れそう。
(14日の#twnvdayへ提供)


【ねこねこ動画】
屋根より高い木に登り、大きい鳴き声で「おろしてニャー!」と叫ぶ。
すると小さい子供はおどろいて、面白そうに動画撮り始めた。
「動画撮るより助けてよ!」
「しゃべるねこー!」
「君もしゃべられるだろ。あのね、誰か呼んできてくれないかニャ?」
「だれかー!」
「って、呼んで来た奴らも撮るのかよ!」
(14日の#twnvdayへ提供)


【集会】
月夜の空地で、男女数名が集まり情報交換をしている。
「シロさんのとこの奥さんどう?」
「そろそろ二人目が産まれそうだ。また大変になるなあ」
「うちは年寄りだけだから楽よ」
話が終わると、皆は脱いでいた猫の皮を被り出す。
「夏はこの中が暑くてたまらんな」
「たまに出ないとね」
(14日の#twnvdayへ提供)


【愛の形】
愛の形は1つじゃないよ、とあなたは言う。
感情に喜怒哀楽あるように、喜びに溢れた愛もあれば、怒りに満ちた愛だってきっとある。
だからどんな愛でも歌えばいい。
歌えなければ、文字にしたらいいさ。
愛されなかった過去さえ、愛しく思うくらいに。
(#世界もっと愛したい協会 へ提供)


【赤札】
守りたい。それは戦う理由になるのだろうか。
誰かを守るために、誰かを傷つけることがあっていいのだろうか。
赤札を貰って旅立つ夫に言えなかった言葉。
万歳三唱で、この人の命も、この人と戦う人の命も救えるのか。
守るとは、何だ。何なのだ。
幼子の手を握り、何度も問い掛ける。


【いつまで】
いつまで君と、こうしていられるのかな。
そんな書き出しで始めた日記に続ける言葉を探している。
何度も同じ時間を繰り返し、何度も一番楽しい思い出を繰り返せば、幸せなのかもしれない。
でもそんな夢は叶いようがない。時は進み、関係は変化する。いつまで君と、こうして。


【子守唄】
子守唄が聞こえる。
今日はもう寝なさい、と言い聞かせる母の声ではない。そもそも母はいない。父も帰って来ない。
子守唄が聞こえるのは仏間から。お経を唱える祖母の声だ。
安らかにお眠り下さい、と他界した祖父への想いを聞きながら、今夜も私は安らかに眠る。


【黒く滅ぼす少女】
#世界もう滅ぼしたい協会 に現れた、ひとりの少女。
瞳に映るものは全て少女の思いのままに変化する。
一点の曇りもない無垢な瞳に見つめられ、太陽は黒く染まり、海も黒く染まった。
単一色に塗り潰された平等な世界が始まると、誰もが彼女の将来に夢を見る。
(締めの一文は@hyuugahikage さんより。
#世界もう滅ぼしたい協会 へ提供)


【開発中】
くるくるとペンを回す。
水平に一定の早さで回転させていると、3D映像が浮かび上がってきた。背中に透明な羽が生えたミニスカートの妖精は、両手を胸の前に組み、懇願する。「やめて!スカートがめくれちゃう!」
開発中の、ペン回し練習用のペン。この路線でいいのかな?


【懐疑1-4】
3年毎に転属される私。ずっと同じ部署にいる人たちが、少し羨ましい。
どこへ行っても仕事が出来るから、と社長から褒め言葉とも聞こえない賛辞を貰う。でもそれはエキスパートになれないということ。
何でも甘んじて受ける私は、人や仕事の緩衝剤としては、熟練度を増していく。


【懐疑2-4】
新しく配属された先の課長が、何でも抱え込む人だった。
「課長、お願いします」
「うん、後で見るよ…」
「後っていつですか?」
喧嘩を売ってる訳じゃなくて効率の問題。絶対に課長にしか出来ない仕事だけ、やって欲しい。
そう思って言っただけなのに、課長はなぜか気を抜いて笑った。


【懐疑3-4】
夜遅くまでお疲れさま、と差し出されたのは定番の缶コーヒーではなくて、100%オレンジのジュースパック。
「こんな時間に飲んで虫歯になったら、課長のせいですよ?」
地下にしかない自販機までわざわざ買って来てくれたことに、気付かないフリはいつまで出来るかな


【懐疑4-4】
この声は届かない。真っ白なホワイトボードに書きなぐった私の言葉は、簡単に消せるから。
課長がここへ来る前に、最初から何事も無かったかのように消して、微笑むだけ。私の気持ちなんて、課長は知らなくていいの。
懐疑は、会議室でするもんじゃないわ。

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