クリスマスだというのに、何処にも行かず、レンタルショップでDVDを借りて観ている。しかも、恋人と二人でだ。
恋人とは言え、そいつは男で、しかも身体から始まった関係だというのだからどうしようもない。
別に女が俺の魅力に気付いてくれないからーと自暴的な事じゃなく、酒を飲みすぎた挙句にそんな関係になってしまったわけで・・・・あれ?これって最低なパターンじゃねぇ?
相手はそんなクリスマスに文句を言うでもなく、隣でソファに身を沈めて、お決まりパターンのくだらない恋愛話に涙してる。
そんな姿を見ると、可愛いと思ってしまう。
男相手に可愛いは失礼か?
でも、可愛い。
エンドロールが流れても、まだ涙を流してるそいつに言う。
「次、AV観てもいい?」
これが女相手だったら、涙拭いて俺ともっと素晴らしい恋愛しようとか飾りまくった言葉並べてセックスに持っていくのだろうが、そんな必要もない。
正直、それが最近良いとすら思い始めている。何より自分を偽ることもないし。
偽る?偽っていたのか・・・。
心の変化とは怖いもんだぜ。
以前は顔と乳に異様なまでに拘っていたくせに、今では形良ければいいかななんて考えに変わった。
因みにこっちはAVのジャンルの話。
こくんと頷くよりも先にAVをデッキに入れた。
まぁ、観るなとは言われないと思ってたし。
乳も無ければ、柔らかな肌もない、それでいて身長だけは同じようにデカい。尻は良い形だが、柔らかくはない。
そんな相手を抱いてる内に、好きになれば関係ないのかなと思うようになった。あれだけ「女」「女」言っていた自分が懐かしい。これで全くセックスが良くなければ、「やっぱり女!」と戻れたかも知れないが異常ななまでに気持ち良くて、しかも相性最高。
どうしようもない。本当、どうしようもない。
こんなになってしまったのも隣でクッション抱いて、始まったAVをぼんやり観てる兼続のせいだ。
クリスマスなのに、何処にも行かず、しかも観ているものはAV。っていいのかよ!と思わずツッコミたくなるが、今更クリスマスらしいことをしようという考えは起こらない。
どうせ何処行ってもケーキは売ってないだろうし、レストランは予約でいっぱい、イルミネーションの下を歩けば人だらけ。
それなら家でDVD観ていた方がマシってもんだ。…AVは問題だが…。
何となくAVな気分だったんだよ・・・。
ちらっと横を見た。
挿入されて、あんあんと喘ぎ始めたAVの女優より、兼続のが美人だと思う辺り手遅れだと思う。
白くさらっとした肌に、ぽってりとした柔らかな唇と、何のシャンプーを使ってんだか解んないがやけに良い香りがする艶やかな髪。
さっきから、髪から匂う香りにくらくらしてどうしようもない。
つーか、ヤリたい!
AV観てもヤりたいと思わず、兼続が横にいるだけでヤりたいと思うようになってる自分に気付いて、軽くショックを受けた。
AV借りなきゃ良かったー・・・。
「面白い?」
とりあえず聞いてみれば、微妙な反応が返ってきた。
「孫市は背面位のが好きだな」
あれ?分析されてるんですか?そういえば、そういうのが多かったかも。
「ワイルドな男は野獣のように求めたいんだよ」
自分で言ってて意味が判らねぇ。
「ふ〜ん」
兼続の反応も益々、微妙だ。
兼続も後ろから入れた方が締まるんですよ。腹に当たる尻の感触が良いんですよ。硬いけど、そこが良い。
・・・ダメだ、限界。
「セックスしていい?」
ロマンチックのカケラもない言葉言って、答えが返ってくるより先にキスをする。
耳にはあんあんと喘ぎ声が聞こえてきて、全くもってロマンも何もない。
身体を愛撫して、俺のを咥えさせて、十分って感じになった頃ソファの背に手を置かせて、後ろから犯す。
「くー・・・・」
兼続の中はやっぱり気持ち良くて、入れただけでイきそうになる。なんだ、この身体。可笑しいだろ。
ヤリながらAV観る余裕もなく、兼続のことだけ考えて、兼続の喘ぎだけ聞く。
数回、腰振っただけでイッちゃって・・・・・・・俺が。でも、元気なまんまなもんだから、そのまま続けた。
「ふぁ、あ・・・・あ」
可愛らしい声と、動くたびに零れてくる液体が興奮させられてしょうがない。
揺れるたびにシャンプーの匂いがする。肌から石鹸の匂いがする。
「まご・・・いち・・・・」
名前呼ぶなよな。またイッちゃうからさ。主に俺が。
ソファをぐちょぐちょに汚して、それ片付けたあとに、一緒にシャワー浴びた。またそこで我慢できなくなって、ヤッて、脱衣所でまたヤッて、ベッドでもまたヤッて。
聖なるクリスマスじゃなくて、性なるクリスマスですねー…なんちゃって。
最早、何回したのか覚えてないくらいにセックスした。
流石に疲れて、荒い呼吸繰り返しながらベッドに横になってる兼続の腹に、俺は枕の下から取り出した箱を投げつけた。
「指輪?」
それは、あからさまに指輪が入ってますよーって箱。
兼続もすぐ気付く。
開けるとそれなりに頑張りました!!って指輪が入っていて、兼続はそれを見て笑顔になった。
そういう顔に弱いんだよね・・・・。すげぇ、良い顔して笑ってんの自分で気付いてる?
「つけてみなよ」
ちらちらと何度も俺の顔を見ている兼続にそう促すと、意気揚々と指輪をつけた。
ぴったりでとりあえず安心した。
「一応、ほら」
自分も同じのつけてみたりして。
兼続からはすでにプレゼント貰ってたから、何かお返しと思ったときに浮かんだのがこれだった。
でも、これ買うときかなり悩んだ。
あからさまに男のサイズの指輪を2つ買うってのはどうなんだってのもあったけど、それ以上に指輪を渡してどうすんだっていうさ。
「束縛したいなんて思っていないし、ましてやお前は俺のもの〜なんていうつもりもない。何となく・・・な」
なんて格好つけてみるものの、本心では安心感が欲しいかったのかも知れない。
兼続は俺のものなんだっていう印をつけてやりたかったのかもな。
キスマーク以外のもんで。
なんだかんだ、好きなんだな。うん、好きだ。
「確かに、身体の関係から始まったけどな。好きなんだよ、これでも」
プレゼントはしたものの、クリスマスにクリスマスらしいこともしてやらなくて、セックスばっかりしてくせに、それでも好きだと柄でもないこと言ってみた。
「柄でもない」
笑いながら、そう兼続は同じことを言う。人に言われると、ショックなとこあるな。
「でも、嬉しいぞ。ありがとう」
つけた指輪にキスして、笑顔向けてきた。
可愛い。可愛過ぎるだろ、こいつ。
照れて、頭掻いてから、兼続に服を投げた。
「出掛けるぞ」
「今からか?」
自分も服着て、兼続に服着せてやった。
「ケーキ買いに行こうぜ、ケーキ」
時間を見れば、すでにクリスマスは終わった25時。24時過ぎてるし。
来年はもう少し、まともなクリスマスにしてやるからさ、今回はコンビニのケーキで我慢してくれな。
今更、きちんとクリスマスしてやればよかったなんて思っても遅くて、でも兼続は幸せな顔で指輪を見ている。買って良かった。指輪にして良かった。
横にお前いなかったら、大騒ぎしてんな俺。絶対、きゃっほーとか騒いでるかもだぜ?いや、それはないか。
手を繋いで、暗い夜道をコンビニに向かって歩く。
空を仰げば、タイミングよく雪が降って来る・・・・なんてことはなかったが、煌めく星は綺麗だった。
「星綺麗だな」
「あぁ」
左側を歩くのが好きな兼続は右手で俺の左手を握っている。
俺の指についてる指輪を何度も小指で確かめるように擦った。くすぐったい。
指もだが、心がくすぐったい。
そんなに嬉しいのか?
兼続の顔を覗き込んだら、あまりにも嬉しそうに笑っているので、思わずキスしてしまった。
「なんだ?」
「可愛くて、さ」
なんてことを言ってみたら、兼続が真っ赤になった。
「お?意外」
俺の言葉に恥らって頬を染めるなんて、初めて見た。
ヒューと口笛を吹けば、兼続は俯いてしまった。
やりすぎたか?
「兼続?」
顔を覗けば、キスされた。頬を触ってきた指に嵌っている指輪が当たる。
むず痒い。
「寒いな、コンビニまで走るぞ!孫市!!」
「え?あ?」
顔を上げれば、すでに兼続はかなり先で早くしろ〜と叫んでいる。
元気だねー、あんだけ散々したのに。
遠くから見ても兼続の指に何かがついてるのが判り、思わず顔が緩んだ。
自分の意外な一面を知った気がした。
終