謙信は小さな字で「さんたさんへ てぶくろください」と書かれたメモを見た。
兼続が書いたものだ。
サンタに欲しいものを書くと、くれるという話を何処からか聞いてきたらしく、欲しいものを紙に書き、枕元に置いておいたのだった。
一度もクリスマスというものをした事がなかったが、兼続が望むのなら今年からしてやろうかという気持ちになった。
ケーキを食べて、プレゼントをやるくらいならばやってやれるだろうと。
「けんしんさま!みてください!!」
クリスマスの朝、手袋をした兼続が喜び勇んで部屋に入ってきた。おはようございますというのすら忘れている。
「どうした?」
「さんたさんからてぶくろをもらいました!」
はちきれんばかりの笑顔を向ける兼続の頭をなでなでと撫でて、「嬉しいか?」と言えばこっくりと頷いた。
「はい、けんしんさまのぶん」
手袋の半分を謙信に差し出した。
「我に?」
「けんしんさまはてがつめたいので、はんぶんあげます。はんたいのては」
きゅっと謙信の手を握った。
「わたしがあたためます」
兼続の手にぴったりの手袋は謙信の手には半分も入らない。
それでもこの小さな子の優しさにぽかぽかとあたたかくなった。
「与六」
「はい」
「感謝する」
「はい」
与六は満面の笑顔で謙信に笑いかけた。
終