「来たぞ」
「帰れ」
政宗がクリスマスは家に来いというので、兼続が訪ねるとそんなことを言われた。
「来いと言ったのは貴様ではないか!」
「兼続ではない、そこの者達じゃ!!」
兼続の横には幸村の他に孫市もいる。
どうやらそれが気に食わないらしい。
「いやー、クリスマス会やるって聞いてさ〜」
「まさむねさん、よいではないですかぁ」
幸村の顔は真っ赤で既に出来上がっていた。しかも、トナカイの角の飾りまで頭につけていて、相当飲んでいるのが判る。
「幸村に酒飲ましたのは誰だ!」
「私だ。因みに先ほどまで幸村たちとクリスマス会をしていたからな」
「わしも呼べ!!!」
そんなことを言えば、兼続と孫市が(えー?)という顔をする。
政宗は泣きたくなった。
「はいりますね〜」
「幸村ぁ!靴脱げ!!」
靴のままあがろうとしていた幸村の靴を脱がせている間に兼続と孫市が勝手に家へとあがった。
部屋に入ると、机の上には二人前な料理と高そうなワインが並べられていた。
(もしかして、私と二人っきりでクリスマスってやつだったんですかねぇ?奥さま)
(そうじゃないですか〜?あら、やだ。お邪魔だったかしら?うふふ)
ひそひそと主婦のような内緒話を始める兼続と孫市に「幸村をなんとかしろ!!」と政宗の叫び声が聞こえた。
玄関へと戻ってみれば、幸村は酒が回りすぎたのか、政宗の上に倒れて寝始めていた。
二人でひょいと抱き上げて、ソファに横にさせた。
「これでは帰れぬな。仕方ない、こちらでクリスマス会のやり直しだ」
ふぅと溜息交じりに兼続が言う。
「最初からそのつもりだったくせに白々しいわ!!」
「そんなことより、私は日本酒派だ!ワインは・・・まぁ、飲んでやろう」
手をさっと伸ばすと、その手に孫市がコルク抜きを渡す。
コルクを開け終えた頃にまた孫市がワイングラスを渡した。
やけに慣れた手つきでワインを注ぐと、兼続はそれを口に含んでいく。
「おぉ、何という悪魔的退廃。何という甘美な陶酔・・・だが、やはり私は日本酒が飲みたい」
「もう飲むな!!」
ばっとそれを引っぺがすように政宗はワインボトルを引っ手繰った。
「サンタにお願いすればいいじゃねぇか!」
「そうだな、孫市!素晴らしい考えだ!!」
孫市は机の上にあった料理を次々と口に運びながら、そんなことを言う。
(こいつら、酔ってんのか?)
流石に可笑しいだろうと政宗は思った。
「サンタさん、サンタさん。美味い日本酒をください」
ぱーんぱーんと手を叩くと、兼続は願った。
「馬鹿め!!サンタなどいるわけがなかろう!!それに願い方が違うわ!!」
「馬鹿は貴様だ!サンタさんはいるんだぞ。だがな、サンタさんはフィンランドにいる。日本には来れないからな、代わりに慶次が来るぞ」
言葉が言い終えた頃にガシャーンという音が聞こえた。
「何事じゃ!!」
音がした部屋へと行けば、慶次がサンタの格好をして窓から現れた。きちんとサンタの袋も持っている。
「窓がー「おお、遅かったな」
「わりぃ、わりぃ。ほら、こいつが欲しかったんだろう?」
袋からごそごそと何かを取り出すと、日本酒の一升瓶を兼続に渡した。
「これこそ、私が欲しがっていたもの!!ありがとう!!」
一升瓶に頬を摺り寄せ、ちゅっとキスをした。
(わしのワインにはそんな反応なかったのに・・・・)
キッと慶次を見返すと、なんだ?政宗も何か欲しいのか?と言った。
「それより窓「これをやろうじゃねぇか」
とりだしたのはシークレットブーツ。
(これを履けば兼続よりデカくなれるぜ)
ウインクしながら、そっと政宗の手に乗せた。
「いらぬわ!!!!!!」
慶次に投げつけたつもりだが、それは虚しく壁にあたった。
何処に行った!?と見れば、既に兼続や孫市と飲んでいた。
「お、良いワインだな」
「あぁー!!」
政宗が叫ぶより先に慶次はそれを飲み干してしまった。
「わしのワイン・・・・」
相当の値段だったらしい。
その場にがくりと膝をついた。
「孫市も日本酒飲むか?」
「飲む!!」
「料理美味いな〜!」
「政宗さんは良い奥さんになれますね」
いつの間にやら復活している幸村を交え、それぞれ好き勝手なことを言い始めたが、政宗の耳には届かない。
かなりショックだったらしい。
我に返った頃には誰も居なく、割れた窓から寒い風が吹いてきていた。
料理も全然残っていない。
「あーいーつーらー!!」
政宗の叫び声が真夜中に響き渡る。それに反応するように犬の遠吠えが聞こえた。
終