「観覧車・・・乗りませんか?」

横浜で買い物がある兼続に付き合った幸村は帰り際に「どこか行きたいとこあるか?」と聞かれた質問にそう返した。

「観覧車か、久しく乗ってないな〜。よし、乗ろう」

乗り場へと向かってみるとクリスマスイブなせいか恋人たちばかりで、男二人なのは自分たち以外誰もいない。

「や、やっぱりいいです」

急に恥ずかしくなってそういうものの、既に兼続がチケットを買ってしまったあとだった。
恋人たちで溢れ返っている観覧車は相当並ばなくてはならない。

「チケット代、私が払いますから」
「私も乗りたい。乗ろう、幸村」

並んでいる最中も恥ずかしくて、兼続を抱き上げて走り去りたい気分だった。周りにも笑われているのではないかと不安になる。
一方の兼続はそんなことなど気にする素振りもなく、次から次へと話を出してきた。

やっと順番が回って来た頃には日はすっかり落ちていて、空には星が輝き始めていた。

「閉めますよ〜」

係りの人が扉を閉めると、そこはまるで別の空間のように思えた。
二人を乗せた観覧車はゆっくりと上へと昇っていく。
天へ天へと向かうに連れて、地の星と天の星が輝き交わり合う。造られた星も空から見ると美しい。
幸村にしてみたら、その間にいる兼続はもっと美しく見えた。

「幸村は外見ないのか?綺麗だぞ」

ぼんやりと自分を見ていた幸村に声をかけると、がたんと靴を鳴らした。ぐらぐらとゴンドラが揺れる。
無意識のうちに兼続しか見ていなかったのだと気付く。

「兼続さんのが綺麗で見惚れて・・・・」

そこまで言って気付く。自分が何を言ったのかを。
口を手で押さえると、すみませんと呟いた。

兼続はふぃっと顔を逸らした。

「怒りましたか?」
「違う・・・。どういう顔したらいいか・・・」

見れば耳が真っ赤に染まっていた。

「観覧車・・・・一緒に乗れて嬉しいです・・・」
「なんで?」
「・・・・・好きなので」

兼続とこうして一緒に出かけられたのも嬉しく、正直なとこ舞い上がっていたところもあった。
口からぽろぽろと言葉が溢れた。

「降りたら・・・見知らぬ他人になってもいいです・・・それでも言わせてください・・・・ずっと好きでした・・・すみません・・・言うつもりなかったんですが・・・・好きです・・・こんなこと言われてもって感じですよね・・・」
「幸村!」
「はい・・・」
「今、一番上だ」

ふと気付けば、観覧車の一番上で、周りを見ても綺麗な景色しかない。
他のゴンドラも見えない。
地上で二人だけだ。

ぐらりと大きくゴンドラが揺れた。

「か、兼続さん・・・・」

幸村は唇を押さえた。

「見知らぬ他人になってもいいとか言うな!私も・・・・」

言葉は最後まで聞こえなかった。
ぐらりとまた大きくゴンドラが揺れた。








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後記

純情な幸村と兼続が好きです。






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